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2.ODA改革の推進

 ODAは国民の税金から成り立っており、その実施にあたっては、国民の支持と理解を得ることが不可欠です。特に近年は、過去10年間における日本経済の停滞を反映して、世論調査などで「多額のODAを何故するのか」、「ODAは現地の人たちに実際役に立っているのか」といったODAに対する疑問が多く投げかけられるようになりました。外務省をはじめとする政府としてはそのような国民の問題意識に応えるため、近年ODA改革を精力的に実施してきました。
 2002年2月、川口外務大臣は就任直後に「開かれた外務省のための10の改革」を発表しました。その柱の1つが、ODAの効率化・透明化に取り組むことであり、具体的には、[1]在外公館におけるNGOからの意見の聴取、[2]第三者の参加を得た委員会による援助分野やプロジェクトの優先順位の決定、[3]外務省経済協力局幹部(評価担当)への外部の人材の起用、[4]適切な監査手法の導入、を挙げました。このいわゆる「骨太の方針」を踏まえて、以後ODA改革は一層推し進められていくことになりました。
 同年3月には、ODAのあり方について提言を得るべく、外務大臣の私的懇談会として2001年に立ち上げられた第二次ODA改革懇談会より、最終報告書が川口外務大臣に提出されました。この第二次ODA改革懇談会は、「国民の心、知力と活力を総結集したODA」、「戦略を持った重点的・効果的なODA」、「ODA実施体制の抜本的な整備」という3つの柱からなるODA改革の具体的方策を提示しています。この提言により、その後のODA改革は、「国民参加」、「透明性の確保」、「効率性の向上」という3つのキーワードを中心に展開していくことになりました。

コラムI-1 ODAに関する意識調査(平成15年度「外交に関する世論調査」より)

 この第二次ODA改革懇談会の最終報告書を受け、2002年6月、ODA総合戦略会議*1が発足しました。また、同年7月には「監査」「評価」「NGOとの連携」「人材の発掘・育成・活用」「情報公開と広報」の5分野で「ODA改革:15の具体策」を発表し、できるものからすぐにやるという方針で、更に改革が推し進められました。そして、ODA総合戦略会議での議論を踏まえ、2002年12月10日、川口外務大臣は「ODA改革:三項目の実施について」を発表し、ODA大綱の見直しに着手しました。
 以上のような状況を背景に、ODA大綱の改定が決定されました。日本のODA政策は、ODA大綱を頂点とする政策的枠組みのもと、実施されています。ODA大綱は、日本の援助に対する基本的考え方・方針等を包括的にまとめたものとして1992年に閣議決定として策定されましたが、今回の改定は、近年のODA改革の成果をとりまとめ、新しい大綱に反映させることの必要性が強く認識されたからにほかなりません。

図表I-8 日本のODAの政策的枠組み

日本のODAの政策的枠組み



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