本編 > 第II部 > 第2章 > 第1節 > (6)紛争・災害と開発
(6)紛争・災害と開発
(イ) 紛争と開発
わが国は紛争との係わりにおいて、すでに第I部第2章第3節で述べたように「アクション・フロム・ジャパン」に基づくODAによる包括的な支援を行っており、特に「平和の定着」と「国づくり」への協力を強化しています。ここでは第I部で紹介した事項に加え、途上国に対する紛争との係わりにおけるわが国の支援概要を紹介します。
東ティモール支援
東ティモールは、長年にわたる外国による支配・統治を経て、2002年5月に独立を達成しました。同国は、99年のインドネシアによる拡大自治提案の受入れ可否を問う直接投票後に発生した騒乱により、大部分のインフラが破壊され、25万人以上の難民が発生するなど、様々かつ大きな課題を抱えていましたが、独立は、国連を中心とし、わが国をはじめとする国際社会の支援・関与が効果を発揮した一大成果と言えます。
わが国は、この地域における平和の定着と国づくりへの取組に対し積極的に貢献しています。99年に東京で第1回東ティモール支援国会合を開催するとともに、支援国として最大の3年間で約1億3千万ドルの支援を表明しました。このように、わが国は、国際社会と協力して、同国の自立に向けた国づくりへの支援を初期の段階から着実に実施してきました。
和平プロセスへの促進では、上記の第1回支援国会合の主催に加え、暫定行政を担った国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)への資金拠出、及び憲法制定議会選挙(2001年8月)における国連開発計画(UNDP)の支援活動に対する資金拠出を行いました。さらに、2002年2月には、国民和解に向けて活動している真実和解委員会に対して53万ドルの支援を行いました。
安定と治安の確保では、わが国は、2002年2月、退役軍人の再雇用のための職業訓練を目的とした地域開発センターの建設に対して41万ドルの支援を行いました。また、2002年2月より、東ティモールの国連平和維持活動(PKO)に対して、自衛隊施設部隊等を派遣しています。
人道・復興支援では、インフラ復旧、農業、人材育成の3分野に重点を置きつつ、緊急復興計画の策定や緊急無償援助等を活用して柔軟で迅速な支援を行い、東ティモールの人々の平和な生活の回復に貢献してきました。また、東ティモールのインフラ整備のために設立された世界銀行信託基金(TFET)に資金拠出を行いました。
アジアの新生国である東ティモールの安定的な発展は、アジア地域全体の安定にとっても、非常に大切です。2002年5月、独立直前にディリで開催された第6回東ティモール支援国会合において、わが国は、今後3年間で6千万ドルを上限とする支援を行う旨表明しており、国際社会と協力しながら、東ティモールの自立に向けた国づくりの努力を引き続き積極的に支援していきます。
紛争後の途上国における治安問題を悪化させ、効果的・効率的な復興・開発を阻害する要因として、対人地雷やDDR注)、小型武器といった問題があります。これらの問題に対処することは途上国の効果的な復興・開発に直結します。わが国は、紛争後の復興・開発支援において、紛争終結国を再び紛争へ後戻りさせないためにも、対人地雷対策やDDRへの支援を積極的に行っています。カンボジアでは、98年の新政権発足以降、紛争後の復興・開発を進めていますが、未だに地雷問題、過剰な兵士数、小型武器の氾濫といった開発の阻害要因が存在しています。わが国はこれらの問題に対処するため、2001年度に、地雷対策支援や兵員削減計画への支援、小型武器回収支援のために無償資金協力や人間の安全保障基金並びに国際機関を通じた協力を国づくりへの支援と併せて実施しています。
(ロ) 防災と災害復興
この分野への支援は、[1]災害が発生した際の緊急援助とその復興支援、及び、[2]災害を防止するための防災対策への支援、の2つの分野に分けられます。いずれの分野も自然災害を数多く経験しているわが国が技術・ノウハウを有する分野です。
2001年度には、ペルーやアフガニスタンの地震災害、カンボジアやナイジェリア等で起きた集中豪雨による洪水災害、コンゴ民主共和国の火山噴火などといった自然災害が起こりました。わが国は、このような海外の自然災害に際し、国際緊急援助隊の派遣や緊急援助物資の供与及び緊急無償資金協力を行っています。2001年度は、緊急援助物資の供与を計9件(総額約1億3,500万円相当)、また無償資金協力を約2億5千万円行っています。
また、災害からの復旧援助においては、復旧計画の策定とともに現地の判断で簡単なリハビリを行うことができる緊急支援調査が重要な役割を担います。2001年1月に発生したインド西部のグジャラート州の大規模地震に際して、わが国は、災害発生後、即時に緊急援助を行うとともに、同年4月より、緊急支援調査のための調査団を派遣して医療・教育施設の復旧・復興に関する再建計画を提言し、それと同時にリハビリ事業を行い2つの医療施設を拡充し、その周辺にある5つの小学校の校舎を再建しました。さらに、現地での災害復興にかかるセミナーの開催など啓蒙活動を実施しました。これらの援助は、地震発生後の迅速な対応と適切かつ具体的な事業の実施が現地でも高い評価を受けています。
コラムII-4.インド地震における緊急援助
さらに、2002年1月には、インドのニューデリーにおいて、グジャラート地震の教訓をアジア各国で共有し、今後のアジア地域における国際防災活動の指針等について議論するため、国連国際防災戦略(ISDR)注)、インド政府との共催により、20か国以上のアジアを中心とする諸国、WHO、HABITAT、OCHAなど多数の国際機関の参加を得て、「国連国際防災戦略アジア会合」を開催しました。
なお、わが国の防災対策に係わる2001年度の実績は、無償資金協力として「第二次地震・火山観測網整備計画(フィリピン)」などのプロジェクト、有償資金協力として「イロイロ河洪水制御計画(フィリピン)」などの援助を行っています。また、防災分野における開発調査は「イスタンブール地震防災計画基本調査(トルコ)」など計10件実施しています。さらに、治水や総合土砂災害対策に係る技術協力も実施しており、フィリピンやネパールに対するプロジェクト方式技術協力や、ベネズエラに対する専門家派遣等を実施しています。これらの支援に加えて、道路、港湾、鉄道の建設等に際しては、わが国が自然災害の経験から培った防災に関するノウハウ・技術を活かした事業を実施しています。