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(2)経済・社会インフラへの支援
途上国において貧困対策や社会開発を進め、ミレニアム開発目標(MDGs)達成を図るためには、持続的な経済成長の確保が不可欠です。経済・社会インフラは、途上国の持続可能な成長のために不可欠なものであり、その整備への支援はわが国の経済協力の重要な分野となっています。
インフラ分野の事業は、道路、鉄道、空港、港湾などの大規模かつ長期にわたる経済効果が見込まれるものが多く、経済成長の下支えとなることから、わが国の場合、有償資金協力(円借款)の割合が高くなっており、円借款の約90%が経済社会インフラへの支援となっています。また、ハード面のみならず、ソフト面の援助も行っており都市計画や国土計画の策定、建設したインフラ施設の運営・管理のための技術者訓練(人材育成)や必要な機材の供与といったより幅広い援助も実施しています。
例えば、タイとラオスの国境のメコン河に架かる橋梁建設を支援する「第2メコン国際橋架橋計画(2001年、円借款)」は、アジア開発銀行(ADB)と関係国が進めているメコン地域(GMS:Greater Mekong Subregion)経済協力プログラムの旗艦プロジェクトである「東西回廊」の一部を成すものであり、両国のみならず、地域全体の開発に資するものです。本事業及び関連インフラの整備により、ベトナム中部、ラオス南部、タイ北東部及びミャンマー南部の物流をはじめとする経済活動が活性化され、各国の経済発展と貧困削減に寄与することが期待されています。
また、ホーチミン市の幹線道路とサイゴン川の渡河トンネルを建設する「サイゴン東西ハイウェイ建設事業(2001年、円借款)」は、川により遮断されている市の東西交通の改善及び近接する国道のバイパス機能として交通渋滞の緩和を図ることにより、開発の遅れているサイゴン川東岸地域の都市開発の促進に貢献するとともに、市街地の慢性的な交通渋滞に伴う大気汚染や騒音といった環境問題や都市問題の改善につながることが期待されています。
このようなインフラ支援には、技術的・財政的観点から事業計画を検討・策定する開発調査の実施が重要となります。開発調査は、途上国に代わって、途上国の経済・社会開発に資する開発政策の策定や、インフラプロジェクトの計画段階における実現可能性調査等を行う技術協力の一つです。エルサルバドルのラ・ウニオン県では、中南米地域のハブ港とするべく、わが国の開発調査(97~98年)により同国の主要港湾の再整備計画である「ラ・ウニオン県港湾再活性化マスタープラン」を策定し、本調査結果をもとに、エルサルバドル政府が計画した「ラ・ウニオン県港湾再活性化計画(2001年)」に対し、約112億円の円借款を供与しました。2001年7月からは、右円借款事業の前提となる詳細設計調査を実施しています。
わが国は、2001年に、DAC統計で運輸分野に約31億3,500万ドル(二国間援助の約26.3%)、通信分野に約5,900万ドル(同0.5%)の支援を行いました。

コラムII-2.アジアとヨーロッパをつなぐボスポラス海峡の架け橋



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