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人権・人道


人種差別撤廃条約
Q&A

この条約についてより理解を深めていただくために、
一問一答で条約の規定の内容について説明します。

Q1 この条約の対象となる人種差別とは何ですか。

A1 この条約の対象とする人種差別については、この条約の第1条1において、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」と定義されています。
 この規定において差別事由とされている「人種」、「皮膚の色」、「世系」及び「民族的若しくは種族的出身」については、この条約の適用上、必ずしも相互に排他的なものではありません。この条約の適用上、「人種」とは、社会通念上、皮膚の色、髪の形状等身体の生物学的諸特徴を共有するとされている人々の集団を指し、「皮膚の色」とは、このような生物学的諸特徴のうち、最も代表的なものを掲げたものと考えられます。また、「民族的若しくは種族的出身」とは、この条約の適用上、いずれも社会通念上、言語、宗教、慣習等文化的諸特徴を共有するとされている人々の集団の出身であることを指すものと考えられます。更に、「世系」とは、この条約の適用上、人種、民族からみた系統を表す言葉であり、例えば、日系、黒人系といったように、過去の世代における人種又は皮膚の色及び過去の世代における民族的又は種族的出身に着目 した概念であり、生物学的・文化的諸特徴に係る範疇を超えないものであると解されます。

Q2 アイヌの人々や在日韓国・朝鮮人は、この条約の対象に含まれるのですか。

A2 アイヌの人々については、現在、様々な議論がなされているところですが、独自の宗教及び言語を有し、また、文化の独自性を有していること等より、社会通念上、文化的諸特徴を共有するとされている人々の出身者であると考えられますので、この条約にいう「民族的若しくは種族的出身」の範疇に含まれるといって差し支えないと認識しています。また、この条約は、社会通念上、生物学的若しくは文化的な諸特徴を共有していることに基づく差別を遍く禁止するものであるので、Q4の答で述べるような「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いに当たらない限り、在日韓国・朝鮮人を始めとする我が国に在留する外国人についても、これらの事由に基づく差別が行われる場合には、この条約の対象となります。

Q3 第1条の人種差別の定義にいう「公的生活」とは、どういう意味ですか。

A3 「公的生活(public life)」の意味とは、国や地方公共団体の活動に限らず、企業の活動等も含む人間の社会の一員としての活動全般を指すものと解されます。つまり、人間の活動分野のうち、特定少数の者を対象とする純粋に私的な個人の自由に属する活動を除いた、不特定多数の者を対象とするあらゆる活動を含むものと解されます。

Q4 「国籍」による区別は、この条約の対象となるのですか。

A4 この条約上、「人種差別」とは、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」差別と定義されていることより、「国籍」による区別は対象としていないと解されます。この点については、第1条2において、締約国が市民としての法的地位に基づいて行う区別等については、本条約の適用外であるとの趣旨の規定が置かれたことにより、締約国が行う「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いはこの条約の対象とはならないことが明確にされています。
 ただし、「国籍」の有無による異なる取扱いが認められるかは、例えば、参政権が公権力の行使又は国家の意思の形成に参画する行為という合理的な根拠を持っているように、このような取扱いに合理的な根拠のある場合に限られ、例えば、賃貸住宅における入居差別のように、むしろ人種、民族的、種族的出身等に基づく差別とみなすべきものは、この条約の対象となると考えられます。

Q5 この条約の第2条1(d)は、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止する旨規定しています。これは、私人間における人種差別の禁止を意味するものなのですか。

A5 第2条1(d)の規定は、締約国があらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを目的として、私人間の人種差別を禁止し、終了させるべきことを定めたものです。
 私人間の人種差別の禁止、撤廃については、第5条において具体的な権利が明示的に規定されていますが、この条項は、一般的な形で締約国の基本的義務を定めたものです。また、この条項は、「すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む)により」と規定されていますが、これは、立法が状況によって必要とされ、かつ、立法することが適当な場合に立法措置をとることも含め、締約国が適当と判断する方法により、私人間の差別を撤廃する義務を定めたものであると解されます。

Q6 日本はこの条約の締結に当たって第4条(a)及び(b)に留保を付してますが、その理由はなぜですか。

A6 第4条(a)及び(b)は、「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」、「人種差別の扇動」等につき、処罰立法措置をとることを義務づけるものです。
 これらは、様々な場面における様々な態様の行為を含む非常に広い概念ですので、そのすべてを刑罰法規をもって規制することについては、憲法の保障する集会、結社、表現の自由等を不当に制約することにならないか、文明評論、政治評論等の正当な言論を不当に萎縮させることにならないか、また、これらの概念を刑罰法規の構成要件として用いることについては、刑罰の対象となる行為とそうでないものとの境界がはっきりせず、罪刑法定主義に反することにならないかなどについて極めて慎重に検討する必要があります。我が国では、現行法上、名誉毀損や侮辱等具体的な法益侵害又はその侵害の危険性のある行為は、処罰の対象になっていますが、この条約第4条の定める処罰立法義務を不足なく履行することは以上の諸点等に照らし、憲法上の問題を生じるおそれがあります。このため、我が国としては憲法と抵触しない限度において、第4条の義務を履行する旨留保を付することにしたものです。
 なお、この規定に関しては、1996年6月現在、日本のほか、米国及びスイスが留保を付しており、英国、フランス等が解釈宣言を行っています。

Q7 第5条の冒頭の第1文は、どのような趣旨ですか。特に、第2条及び第5条(a)~(f)とは、どのような関係にあるのでしょうか。

A7 第5条は、既にQ5の答で述べたとおり、第2条が一般的な形で締約国の基本的義務を定めているのを受けて、締約国が様々な人権を保障するに当たって、あらゆる形態の人種差別を禁止し撤廃すべきことを定めるにとどまらず、法律の前の平等を保障すべきことを定め、第2条の義務の履行をより具体的な形で確保しようとしたものです。また、この条では、人種差別が特に生じやすいと考えられる権利について、(a)から(f)に例示的に列挙しています。

Q8 第8条において、人種差別の撤廃に関する委員会の設置が規定されていますが、どのようなことをする委員会なのですか。

A8 人種差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」)は、(1)締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び勧告を行うこと(2)他の締約国がこの条約の諸規定を実現していないと認める場合の締約国の注意喚起を受理し検討することなどのために設置されたものです。委員会の委員数は18人、任期は4年で、個人の資格で任務を遂行することとなっています。
 なお、各締約国は、この条約の第9条により、委員会による検討のため、当該締約国についてこの条約の効力が生ずる時から1年以内に、また、その後は2年ごとに、更には、委員会が要請する時に、この条約の諸規定の実現のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関する報告を国連事務総長に提出する義務を負っています。

Q9 この条約によって、具体的に何が変わるのですか。

A9 この条約上の義務は、我が国の憲法をはじめとする現行国内法制で既に担保されています。しかし、人権擁護に関しては、法制度面のみならず、意識面、実態面において不断の努力によって更に向上させることが必要かつ重要です。この条約の締結を契機に、行政府内のみならず、国民の間に人種差別も含めあらゆる差別を撤廃すべきとの意識が高まり、一層の人権擁護が図られていくことが重要であると考えています。



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