FGM(女子性器切除)廃絶に関するシンポジウム
(概要と評価)
平成15年8月29日
- 外務省は、8月26日(火)から28日(木)まで、スーダン(ハルツーム)において、「FGM(女子性器切除)に関するシンポジウム」をスーダン政府、国際連合児童基金(UNICEF)との共催で開催した。
- このシンポジウムには、主催者側代表としてスーダン政府よりモーセス・マシャール副大統領およびアフマド・ビラール保健大臣、わが国政府より佐藤啓太郎・アフリカにおける紛争および難民問題担当大使、牧谷昌幸在スーダン大使および嘉治美佐子人権人道課長が出席するとともに、近隣諸国10ヵ国からの閣僚、国会議員、NGO(非政府組織)等の参加を含め、約150人が参加した。
- 今回のシンポジウムでは、法制の整備や医療従事者の意識改革推進などを含む提言を採択し、閉会式において、アフマド・ビラール保健大臣より、スーダン政府として本件に真剣に取り組んでいく旨宣言し、牧谷昌幸大使より、わが国はそのフォローアップについて支援していく旨を表明、参加者より歓迎された。関連国連機関も協力の意図を表明した。
- わが国政府は、スーダン政府に対し、本件フォローアップを含む人権・人道問題への一層の取り組み、および和平合意の達成を奨励するとともに、その取り組みを今後とも支援していく考えである。
(参考)女性性器切除は、通常11才以下の少女に施され、難産や感染症など、女性の健康と人生に多大な損傷をもたらすにも拘わらず、アフリカを中心に存続している古くからの悪習で、国連は現在でも1億人以上が被害者と推定、国連総会はその廃絶を決議している。今回のシンポジウムの開催は、過去2回にわたる日本・スーダン人権対話の枠組みにおいて合意されたものであるが、政府自らがこの、伝統や社会のありかたの微妙な部分に触れる問題に国際社会が注目する中取り組むのは異例である。なお、スーダン政府は、同国への経済制裁の理由の一つとされている、同国人権状況の改善へ向けての努力の一環として開催に踏み切った。わが国はこのシンポジウム開催へ向け人的および財政的な支援を行ったが、これは、わが国政府が途上国政府の人権状況の改善に協力する初めてのプロジェクトとなった。また、FGMに取り組むわが国NGOも参加し、わが国の官民にわたる努力をもまた高い評価を受ける結果となった。
(別添)
FGM廃絶に関するシンポジウム
提言(主要点)
1.法制整備
- 全ての形態のFGMを廃絶することを基礎とすべし。
- 有用性の確保のために社会の許容性を勘案すべし。
- 法制は教育や意識の面でのフォローアップを要する。
- 保健省による2001年の国家戦略計画を実施すべし。
2.社会動員
- 10年から50年かけてFGMのない社会を実現する。
- 閣僚会議や議会による承認を得る。
- 家庭教育、社会参加、メディア、宗教を通じた意識改革を図る。
- 心理学的な調査・研究を進める。
- 女性の能力開発やネットワークの充実を進める。
3.医療専門家の行動計画
- 学際的なアプローチにより医療関係者によるあらゆる形態の切除を2010年までに50%以下とし、2030年までに廃絶する。
- FGMの弊害についてのモジュールを策定、普及を図る。
- 医学生や医療関係者に意識を徹底させ、国民に廃絶の必要性を説く。
- 医師会による切除実施者への懲罰を徹底させる。
- 児童福祉協議会や女性連盟を通じた意識向上・普及活動を推進する。
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