20.出生及び国籍に関し、非嫡出児の権利につき述べられたい。
(回答)
1.嫡出でない子の出生登録については、母が出生の届出義務を負うのが原則であり(戸籍法第52条第2項)、この届出に基づいて、母の戸籍に記載される(同法第18条2項)。
2.国籍については、我が国の国籍法は、出生による国籍取得につき、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」には、出生により日本国籍を取得すると規定し、法律上の親子関係が認められる限り、嫡出子、嫡出でない子に関わらず、日本国籍を取得するものとしている。
同法の父については、その明確性及び法的安定性を図るため、法律上の父をいうと解されている。子の出生時に法律上の父がある場合としては、両親が婚姻中である場合や胎児認知がなされた場合である。
婚姻していない日本人男性と外国人女性との間に出生した子については、父の本国法たる我が国では、原則として、胎児認知(民法第779条、第783条)がなければ出生の時に法律上の父がいないことになり、法律上の父子関係が生じないので、子は日本国籍を取得しない。子の出生後に認知があったときは、子の出生時に遡って父子関係が生ずるものとされているが(民法784条)、国籍法との関係では、出生後の認知により、子が出生の時に遡って日本国籍を取得することはないとされている。
この場合に、国籍法の適用の関係でも認知の遡及効を認めることは父又は子の意思に基づかないで、出生後の認知により当然に国籍の変動を生じさせることとなり、「個人の尊厳」を立法の基本原則とする憲法第24条2項の精神に合致しないことになる。旧国籍法(明治32年法律第66号(No.66of1900))は、日本国民たる父の認知を独立の国籍取得の原因としていたが(第5条3項)、上記の理由から現行国籍法制定の際、旧国籍法の同規定が継承されなかったものである。
以上のように、同じく血統上の日本国民であっても、出生時における法律上の親子関係の有無等により国籍取得の要件が異なることは、血統という単なる生物学的要素を絶対視せず、憲法第24条の精神に立脚し、親子関係により我が国との間で真実の結合が生じる場合に国籍を付与するとの基本的考えに基づくものである。
また、胎児認知を受けずにその出生により日本国籍を取得できなかった嫡出でない子は、日本人父からの認知及び父母の婚姻によって、準正子たる身分を取得し、法務大臣への届出によって日本の国籍を取得することができる(現行国籍法第3条)。さらに、日本人父から認知を受けている子については、父母が婚姻していない場合であっても、日本人父との身分関係を考慮し、極めて緩和した条件で帰化により日本国籍を取得することができる(同法第8条)。