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国際刑事裁判所に関するEU及びICC関係者の訪日
(概要と評価)


平成16年12月17日

(英文はこちら)


ポイント

 今回の訪日は、国際刑事裁判所(ICC)の活動の現状及び日本におけるICC規程の締結に関する検討につき、意見交換を行うために実施された。政府関係者の意見交換を始め、研究者、国会議員等との会合も開かれたほか、一般向けのセミナーも行われた。この訪日は、ICCに対する日本国内の関心を高めるとともに、ICC規程に関する国内の検討にも資するものであった

1.訪日の概要

(1) EU加盟国からは、現在議長国であるオランダからワレンスティン外務省ICCタスクフォース局長(大使)をはじめとする関係者が来日したほか、ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、スロヴェニア、ルクセンブルグ(次期議長国)各国からも外務省・法務省関係者が参加した。また、EU理事会事務局、欧州委員会からも関係者が訪日した(合計13名)。さらに、今回はICC規程発効後はじめて、ICCからも幹部職員(フェルナンデス・デ・グルメンディ検察局官房長)が訪日した(訪日した関係者のリスト:別添1)。
 今回の訪日は、2002年12月に行われた類似の訪日プログラムに引き続くものとして開催され、2004年の下半期にEU議長国を務めるオランダの提案を踏まえ、外務省が協力する形で実現したものである。

(2) EU及びICC関係者一行は、今回の訪日において、日本政府関係者(外務省、法務省及び防衛庁)と終日にわたる意見交換(12月2日)を行ったほか、国内の国際法研究者との会合(12月1日)にも参加した。また、EU主催による、国会議員関係者との意見交換会(昼食会:12月1日)も開催された(全体の日程:別添2)。

(イ) 政府関係者との意見交換(12月2日)
政府関係者との意見交換で扱われた主な論点は、(i)ICCの活動に関する各国関係者の評価、(ii)ICCが現在捜査を進めている事態を含む、ICCを巡る最近の国際情勢、(iii)ICC規程に関する日本国内の検討状況であった。(i)及び(ii)については、ICCが現在進めている捜査の実効性の確保に関する締約国、国際機関との協力の実状や、日本もオブザーバーとして参加している締約国会合における議論の評価などが扱われた。また、(iii)については、EU側からは日本におけるICC規程締結に向けた見通しに質問が集中したほか、日本側からは、2002年のEU関係者の訪日時に入手したEU主要国のICC関連国内法などを参考にしつつ、政府部内で現在進行中のICC規程に関する逐条の検討を踏まえた問題提起を行い、議論が進められた。

(ロ) 研究者との意見交換(12月1日)
研究者との意見交換には、国内の国際法学者が20名ほど参加した。ICC検察局官房長から、ICCにおける捜査の主眼や体制等について包括的な説明があり、EU各国関係者からも、ICCの活動に関する評価や法的な論点につきプレゼンテーションがなされた。国内の研究者の主たる関心は、今後想定されるICCの捜査対象、締約国が自ら付託した事態に対する捜査の進め方などであった。

(3) また、12月3日には、三田会議所(東京)において、日日EU共催で「ICCの現状と将来」と題する一般向けのセミナーも開催した(セミナーのプログラム及び詳細:別添3)。

写真:ICCに関する一般向けセミナー(12月3日:外務省及びEU共催)において冒頭挨拶をする小野寺五典外務大臣政務官
ICCに関する一般向けセミナー(12月3日:外務省及びEU共催)において冒頭挨拶をする小野寺五典外務大臣政務官


2.評価

(1) 今回の訪日は、2002年12月に開催された類似のEU関係者の訪日に引き続いて行われたものと位置づけられる。前回訪日がICC規程発効直後(発効は同年7月1日)であり、国内においてICCそのものに対する全般的な関心はあったものの、当時はICCの活動がほとんど開始されていなかったこともあり、国内の関心はあくまでも一般的な内容にとどまっていた。これに対し、今回のEU及びICC関係者の訪日は、ICCが活動を開始して2年が経過し、実際にコンゴ民主共和国及びウガンダ北部における事態の捜査を開始していること等とも相俟って、ICCの具体的な活動及び将来の展望につき関心が高まっている時期に実施された。こうした点からも、今次訪日はきわめて時宜に適ったものであったと考えられる。また、ICC検察局からも幹部職員が訪日したことは、ICCにおける捜査の現状及びその体制につき、直接意見交換をできる機会を提供することになり、とくに有意義であった。

(2) 政府関係者との意見交換においては、ICCの活動の現状に加え、各国関係者によるICCに対する評価など広範な論点につき議論が及んだ。また、わが国におけるICC規程の締結に向けた検討についてもEU及びICC関係者から多くの質問が寄せられ、日本のICC規程の早期締結に対し、各国の関心が引き続き高いことが伺われた。この点に関連して、現在政府部内で進められているICC規程の締結に関連した様々な法的論点につき、ICC規程の解釈や各国におけるICC規程締結に際しての国内法整備について、前回(2002年)よりも一層詳細かつ細部にわたる議論が進められた。こうした議論は、政府におけるICC規程締結に関する更なる検討に資するものであったと評価できる。

(3) 研究者との意見交換においては、ICC関係者からは実務の観点からICCの活動の現状につき説明がなされた。また、EU各国関係者からも、実務においてICC規程の実施に際し、どのような点が問題となったかにつき紹介があり、いずれも学界関係者にとっては、実務家の実践的な関心を直接聴取できる機会となったと考えられる。また、研究者からはICCに対して、締約国が自国内における事態を付託した場合、ICCがどのようにして限られた人員や財源を用いて、実効的な捜査を進めていくのか、侵略の罪に関する今後の議論はどのように進められるのかといった詳細な論点が提起され、EU及びICCの関係者に対し、日本国内におけるICCに対する学術面での関心の高さも印象づけることとなったと思われる。

(4) ICCの現状及び将来につき議論した、一般向けのセミナーについては、一般参加者の募集期間は約2週間であったにもかかわらず、定員をはるかに上回る応募者があった。こうした多数の応募者もあり、セミナー会場(定員120名)は満員となり、ICCに対する国内の関心の高まりを伺わせる結果となった。
 また、パネリストである日本の国会議員、研究者及びEU・ICC関係者との議論も活発に行われ、聴衆からの質問やコメントも加わった結果、ICCの現状及び各国の見解に対する理解を深める格好の機会になったと考える。とくに現在ICCにおいて何が起こっているか、各国がどのような考えに基づき協力しているか、さらには、ICCが実効的な国際司法機関として機能していく上で、どのような困難に直面し得るかといった、ICCに関する多面的な検討・議論を行うことができた。
 なお、セミナーでは直接には触れられなかったが、訪日の際の各種の意見交換の際には、日本がICCに参加することの実質的な意義について、どのような形で広く一般に理解を求め、支持を得ていくかについては、説明方法及びその内容を含めさらに検討する必要があるとの見方が少なからず示された。とりわけ現下の厳しい財政状況の中で、新たな国際機関に加入することの積極的な意義をより説得的に説明する必要性があると考えられる。

(5) 訪日したEU及びICC関係者も、今回の訪日プログラムについては充実したものであったと好意的な評価を寄せている。外務省としても、EU及びICC関係者に対して、日本におけるICC規程に関する検討状況及び国内の関心の所在等につき、より正確な認識を得る上で、有益な機会を提供できたと考えている。また、各種会合・意見交換に参加した関係者、セミナーに出席した一般関係者の評価も全般的に肯定的なものであった。

(6) 今回の一連の会合の成果を踏まえ、今後さらに関係国内省庁の協力を得つつ、我が国のICC規程の締結に対する検討を一層促進する必要があると考えられる。





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