G20大阪サミット(結果概要)
令和元年6月29日
外務省
6月28日及び29日、大阪にて安倍総理の議長の下で、G20大阪サミットが開催されたところ、会合の概要は以下のとおり。
-
総論
日本が初めて議長国を務めたG20サミットでは、G20メンバー国に加えて、8つの招待国、9つの国際機関の代表が参加し、国内で開催した史上最大規模の首脳会議となった。
主要国のリーダーたちが一堂に会する中、今般のサミットでは、互いの共通点を見出し、主要な世界経済の課題に団結して取り組んでいく姿を打ち出すことができた。
また、グローバル化による変化への不安や不満の声があがる中で、議長国としてリーダーシップを発揮し、自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界の経済成長の牽引と格差への対処、環境・地球規模課題への貢献等、多くの分野でG20としての力強い意志を「大阪首脳宣言」を通じて世界に発信できた。 -
議論の概要
- 安倍総理は議長として、「世界経済、貿易・投資」、「イノベーション(デジタル経済・AI)」、「格差への対処、包摂的かつ持続可能な世界」、「気候変動・環境・エネルギー」をテーマとした各セッションで、意見の対立ではなく共通点を見出すべく、議論を積極的に主導した。
-
第1セッション「世界経済、貿易・投資」では、冒頭、安倍総理から、世界経済における貿易と地政学をめぐる緊張の増大を指摘し、G20として、これらの下方リスクに対処し、必要な行動をとるべきである旨訴えた。その上で、グローバル化、高齢化、デジタル化に対処していくべきこと、また、自由、公正、無差別な貿易体制を維持・強化していくべきであり、特に、(ア)上級委員会を含む紛争解決制度、電子商取引を含む新しい時代のルール作りをはじめとするWTO改革、及び(イ)国際貿易・投資の基盤としての公平な競争条件の確保の重要性を指摘した。
各首脳からは、現下の貿易を巡る状況が、経済成長に及ぼす影響やWTO協定と整合的な形で解決されるべきことなどの指摘に加え、WTO改革のモメンタムをG20として政治的に後押ししていくべきことなどについて、多くの指摘がなされた。 -
第2セッション「イノベーション」では、安倍総理から、イノベーションは経済発展と社会的課題の解決を両立する鍵であり、中でも発展著しいデジタル化に際して、データの自由な流通が不可欠である旨指摘した上で、「信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust:DFFT)」の考え方を提示した。また、本セッションに先立って開催された「デジタル経済に関する首脳特別イベント」における「大阪トラック」の立ち上げに言及しつつ、今後、同トラックを通じ、WTOでの電子商取引をはじめとするデジタル時代のルール作りを進めていきたい旨述べた。また、AI等の先端技術の活用にも「信頼」が不可欠である旨強調し、G20・AI原則の重要性についても言及した。
各首脳から、経済成長や社会的課題の解決におけるイノベーションの役割や、デジタル経済の国際的なルール作りの重要性について発言があった。また、「信頼性のある自由なデータ流通」の考え方が参加者間で共有された。
なお、同セッションにおいては、テロリストによるインターネットやソーシャル・メディアの悪用の深刻化に関する議論が行われ、これを受け、「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネットの悪用防止に関するG20大阪首脳声明」が発出され、法の支配及び表現の自由を含む人権の尊重の重要性をしっかり踏まえつつ、デジタル産業と協調した取組を行うことの重要性について認識が共有された。 -
第3セッション「格差への対処、包摂的かつ持続可能な世界」に先駆け、女性のエンパワーメントに関する首脳特別イベントを安倍総理主催で開催し、マキシマ蘭王妃、イヴァンカ米国大統領補佐官の参加の下、(ア)女性の労働参画、(イ)女児教育支援、(ウ)女性起業家支援にフォーカスし、国際社会全体における女性の活躍推進に向けたモメンタムの強化に貢献した。
第3セッションにおいては、冒頭、安倍総理から、成長の果実を社会の隅々まで行き渡らせていく上で、特に対処すべき課題として、イノベーション、人口動態の変化やジェンダー不平等がもたらす格差にしっかり対処していくべきことを指摘し、今後の課題や日本の取組について言及した。また、包摂的かつ持続可能な世界の実現のため、途上国の債務問題、質の高いインフラ投資、国際保健や防災・教育、科学技術イノベーション(STI)等の活用によるSDGsの達成に向けた取組等の重要性を指摘した。加えて、社会的インパクト投資や休眠預金を含む多様で革新的な資金調達のあり方を検討し、日本が国際的議論の先頭に立っていきたい旨を述べた。
その後の議論では、各首脳から、女性のエンパワーメント、教育格差、途上国支援、貧困、持続可能な開発について、自国の取組に加え、SDGsの達成をはじめとする開発分野における国際協力の重要性等が指摘された。 -
第4セッション「気候変動・環境・エネルギー」では、冒頭、トーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長が、来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、大阪サミットが目指す、女性、若者、高齢者や障害者を含むあらゆる主体が活躍する社会を実現する上で、スポーツが果たす役割等についてスピーチを行った。
その後、安倍総理から、気候変動・エネルギー及び海洋プラスチックごみ対策といった喫緊の地球環境問題への対処におけるイノベーションの活用の重要性を指摘するとともに、先般策定されたパリ協定の本格運用に向けた長期戦略を紹介しつつ、脱炭素社会という究極の目標実現に向け、世界のモデルとなるべく努力して取り組んでいく旨述べた。さらに、G20首脳が合意した、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロとすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向け、日本としても、途上国の廃棄物管理に関する能力構築及びインフラ整備等を支援していく旨を表明した。加えて、安倍総理より、スペースデブリの増加問題について、国際社会が協力して取り組む必要がある旨指摘し、日本が世界に先駆けて大型デブリ除去プロジェクトを開始し同分野における取組を主導していく考えを述べた。
その後の議論では、各首脳から、気候変動問題や海洋問題について様々な指摘があり、特にパリ協定の実施の重要性について多くの指摘がなされた。また、この関連で再生可能エネルギーを活用の必要性、必要な措置をとっていくことが今後新しい産業や雇用創出にも資するとの指摘があり、環境問題・気候変動問題・海洋問題の重要性について認識が共有された。 -
閉会セッションでは、サミットの成果文書として「大阪首脳宣言」を採択し、安倍総理から、自由、公正、無差別な貿易体制の維持・発展の重要性、データの自由な流通を含むデジタル経済におけるルール作り、海洋プラスチックごみ対策の「ビジョン」の共有、女性のエンパワーメントをはじめとする諸課題について、G20として一致して力強いメッセージを発信できた旨評価した。
その後、次期G20議長国を務めるサウジアラビアから来年のリヤド・サミットに向けた抱負が述べられ、最後に安倍総理から、世界経済をリードするG20として、今般採択された大阪首脳宣言に基づき、自由で開かれた、包摂的かつ持続可能な未来社会の実現に向けた協力を継続していきたい旨総括し、G20大阪サミットは閉会した。
-
成果文書
「大阪首脳宣言」及び「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネットの悪用防止に関するG20大阪首脳声明」の二つの首脳文書に加え、各種の付属文書が策定された。
- G20大阪首脳宣言
- テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネットの悪用防止に関するG20大阪首脳声明
- 附属文書
- 質の高いインフラ投資に関するG20原則
- 経済の電子化に伴う課税上の課題に対するコンセンサスに基づいた解決策の策定に向けた作業計画
- 高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ
- GPFI作業計画提案
- 途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解
- インフラ開発における腐敗対策に関するG20グッドプラクティス集
- 効果的な公益通報者保護のためのG20ハイレベル原則
- G20・AI原則
- 女性労働参画進捗報告書
- G20持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ
- 持続可能な開発のための2030 アジェンダに関するG20行動計画に基づく大阪アップデート
- 持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)ロードマップ策定の基本的考え方
- G20開発コミットメントに関する大阪包括的説明責任報告書
- G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組
- G20適応と強靱なインフラに関するアクション・アジェンダ
- 持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関するG20軽井沢イノベーションアクションプラン
【参考】G20大阪サミット
-
日程
-
6月28日(金曜日)
デジタル経済に関する首脳特別イベント 第1セッション(ワーキング・ランチ)【世界経済、貿易・投資】 第2セッション【イノベーション(デジタル経済、AI)】 -
6月29日(土曜日)
女性のエンパワーメントに関する首脳特別イベント
第3セッション【格差への対処、包摂的かつ持続可能な世界】
第4セッション(ワーキング・ランチ)【気候変動・環境・エネルギー】
閉会セッション
-
6月28日(金曜日)
-
参加国・国際機関:
-
(ア) G20メンバー
日本、アルゼンチン、豪、ブラジル、加、中、EU、仏、独、印、インドネシア、伊、メキシコ、韓、露、サウジアラビア、南ア、トルコ、英、米 -
(イ) 招待国
スペイン、チリ(APEC 議長国)、エジプト(AU 議長国)、オランダ、セネガル(NEPAD 議長国)、星、タイ(ASEAN 議長国)、ベトナム -
(ウ) 国際機関
国際連合、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)、金融安定理事会(FSB)、経済協力開発機構(OECD)、世界保健機関(WHO)、アジア開発銀行(ADB)
-
(ア) G20メンバー
(了)