G20 Osaka Summit

G20大阪サミット「大阪首脳宣言」(骨子)

前文

  • 主要な世界経済の課題に団結して取り組む。
  • 特にデジタル化をはじめイノベーションの力を活用しつつ、世界経済の成長促進に向けて協働。
  • 不平等に対処することによって成長の好循環を創出。全ての人々が潜在力を最大限に活用できる社会を実現。人口動態の変化を含め今日・将来の課題に対処できる社会を構築。
  • 包摂的かつ持続可能な世界に向け、開発を促進し、地球規模課題に対処する取組を主導。

1 世界経済

  • 世界経済の成長は、足元で安定化の兆しがあり、本年後半及び2020年に向けて緩やかに上向く見通し。他方、下方リスクが依然として存在。とりわけ、貿易と地政を巡る緊張が増大
  • 強固で、持続可能で、均衡ある包摂的な成長を目指し、下方リスクの顕在化を防ぐため、全ての政策手段を用いる。
  • グローバル・インバランス(経常収支不均衡)は、依然として高水準かつ持続的。サービス貿易・所得収支を含む経常収支の全ての構成要素に着目する必要性に留意。
  • 高齢化を含む人口動態の変化は、G20各国に対して課題と機会をもたらす。財政・金融政策や構造政策にわたる政策行動が必要。

2 強固な世界経済の成長の醸成

(1)貿易と投資

  • G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合閣僚声明を歓迎自由、公正、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、開かれた市場を維持する
  • WTOの機能を改善するため、必要なWTO改革への支持を再確認。第12回WTO閣僚会議に至るまでの間を含め他のWTO加盟国と建設的に取り組む。
  • WTO加盟国によって交渉されたルールに整合的な紛争解決制度の機能に関して、行動が必要
  • WTOと整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識。
  • 公平な競争条件を確保するよう取り組む。

(2)過剰生産能力

  • 鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC)の進展に留意。GFSECメンバーの関係閣僚に対し、フォーラムの取組を更に進めるための方策につき、2019年秋までにコンセンサスに至るよう求める。

(3)イノベーション(デジタル経済、DFFT)

  • イノベーションは経済成長の重要な原動力。SDGs及び包摂性向上にも寄与。
  • 「ソサイエティ5.0」として推進されている人間中心の未来社会の考え方を共有。
  • デジタル化が経済・社会のあらゆる側面に変革をもたらしている中、データが果たす決定的役割を認識。データの潜在力を最大限活用するため、国際的な政策討議を促進。
  • データや情報等の越境流通は、生産性の向上、イノベーションの増大をもたらす一方で、プライバシー、データ保護、知的財産権及びセキュリティに関する課題を提起。これらに対処することにより、データの自由な流通を促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化。このようなデータ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)は、デジタル経済の機会を活かすもの。
  • 電子商取引に関する共同声明イニシアティブの下で進行中の議論に留意。
  • AIへの人間中心のアプローチにコミットし、G20・AI原則を歓迎
  • デジタル経済におけるセキュリティを促進。知的財産の保護の重要性を確認。モノのインターネット(IoT)の急速な普及に伴い、セキュリティに関する議論の価値が益々増大。
  • スマートシティ開発に向けた都市間のネットワーク化と経験共有を奨励。

(4)質の高いインフラ投資

  • インフラは成長と繁栄の原動力。「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を承認。インフラ・ガバナンスの強化が重要。

3 グローバル・ファイナンス

  • IMFを中心としたグローバル金融セーフティーネットの更なる強化、第15次クォータ見直しへのコミットメントを再確認。
  • 債務の透明性を向上し、債務の持続可能性を確保するための、債務国及び公的・民間の債権者双方による協働の重要性を再確認。
  • 経済の電子化に伴う課税上の課題への対応に関し、2つの柱からなる野心的な作業計画を承認。2020年までのコンセンサスに基づく解決策のための取組を更に強化。
  • 暗号資産に関し、注意深く進展を監視するとともに、既存の、及び、生じつつあるリスクに警戒。金融安定理事会(FSB)と他の基準設定主体に、追加的な多国間での、必要に応じた対応にかかる助言を求める。
  • 市場の分断についての取組みを歓迎。その意図せざる悪影響に対して、規制・監督上の協力等により対処。
  • マネーロンダリング、テロ資金供与及び拡散金融と闘う。金融活動作業部会(FATF)の不可欠な役割を強調する国連安保理決議2462号を歓迎。

4 腐敗対策

  • 腐敗を防ぐグローバルな努力において先導的な役割を担う。
  • インフラの清廉性・透明性に係るグッドプラクティス集を歓迎。また、効果的な公益通報者保護に関するハイレベル原則を支持。
  • OECD外国公務員贈賄防止条約への加入に向けた取組に留意。

5 不平等への対処による成長の好循環の創出

(1)労働雇用

  • 若者や女性、障害者の経済活動への参加を増やしつつ、高齢期も労働市場に参加できるような健康で活力ある高齢化社会を促進。
  • 技術革新によって生じつつある新しい労働形態に対して適切な政策対応を策定。

(2)女性のエンパワーメント

  • ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは、持続可能で包摂的な経済成長に不可欠。2025年までに労働力参加における男女間の格差を25%削減するとのブリスベン・ゴールに向けた進捗に留意し、取組の加速化の必要性を確認するとともに、年次報告書に基づき進捗を確認していく。
  • 質の高い初等・中等教育、STEM(化学、技術、工学及び数学)教育へのアクセス改善を含め、女児・女性への教育を引き続き支持。女性の管理職へのアクセスを促進。女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)の継続的な実施を歓迎。
  • 民間セクターアライアンス(EMPOWER)の立ち上げを歓迎。

(3)観光

  • 観光産業は世界経済の成長の重要な牽引役。

(4)農業

  • 農業生産性を高め、食料の損失・廃棄の削減を含め、流通を効率的に行う必要。強じんな農業・食品バリューチェーンの発展が重要。

6 包摂的かつ持続可能な世界の実現

(1)開発

  • 9月の国連ハイレベル政治フォーラム等を目指して、SDGsの実施に主導的な役割を果たす。持続可能な開発のための2030アジェンダに関するG20行動計画に基づく「大阪アップデート」において、「誰一人取り残さない」ことを確保することに向けた行動を強調。「大阪包括的説明責任報告書」を歓迎。
  • 開発途上国のSDGsに向けた努力を支援。「アフリカとのコンパクト」を含むG20アフリカ・パートナーシップ等への支援を再確認。
  • 人的資本投資へのコミットメントを再確認。
  • SDGsの達成における科学技術イノベーション(STI)の重要性を認識し、「SDGs達成のためのSTIロードマップ策定の基本的考え方」を承認。
  • 南北協力、三角協力や自然災害に対する財務上の強靱性を促進させる手段として災害リスクファイナンス調達等の防災に関する更なる取組の重要性を確認。
  • 第19次国際開発協会(IDA)増資及び第15次アフリカ開発基金(AfDF)増資を成功裏に達成するための作業を継続。

(2)国際保健

  • 保健は、持続可能かつ包摂的な経済成長の前提条件。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて前進していく。持続可能な保健財政の重要性を認識し、財務保健大臣会合において確認された「途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・ファイナンスの重要性に関するG20共通理解」に従い、保健・財務当局間の更なる協力を要請。
  • 高齢化社会への対応。健康長寿の推進のため、イノベーションを活用した保健サービスの質の向上。
  • 公衆衛生の改善にコミット。現在のエボラ出血熱の流行に苦しむ国々を支援。ポリオを撲滅し、エイズ、結核及びマラリアの流行を終わらせるとのコミットメントを再確認。
  • 薬剤耐性(AMR)に取り組むためのワン・ヘルス・アプローチに基づく努力を加速。

(3)地球環境問題及び課題

  • イノベーションを通じた「環境と成長の好循環」の実現が重要。
  • 「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)等の作業に留意しつつ、気候変動、海洋プラスチックごみ、生物多様性の損失等の環境問題を含むグローバルな課題に対処。持続可能な成長を促進しつつ、エネルギー転換を促進する必要性を認識。

(4)気候変動

  • 持続可能な開発のための包括的資金調達、並びに、低排出及び強じんな開発のための幅広い分野におけるイノベーションを促進するために努力。
  • パリ協定の実施ガイドラインの採択及び軽井沢でのG20エネルギー・環境大臣会合における成果を留意。モメンタムを最大限活用することを決意し、国連気候行動サミットの成功及びチリのサンティアゴにおける具体的成果を期待。
  • ブエノスアイレスにおいてパリ協定の不可逆性を確認し、それを実施することを決定した同協定の署名国は、完全な実行へのコミットメントを再確認
  • 米国は、パリ協定から脱退するとの決定を再確認し、経済成長、エネルギー安全保障とアクセス及び環境保護を促進するとの強いコミットメントを再確認。引き続き、排出量削減、よりクリーンな環境の提供のため、先進技術の開発と配備にコミット。

(5)エネルギー

  • 「3E+S」(エネルギー安全保障、経済効率性、環境+安全性)を実現するエネルギー転換が重要。
  • 水素、並びに、各国の状況に応じて、「カーボン・リサイクル」等に関する作業に留意しつつ、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)を含む、エネルギー転換に向けた革新的、クリーンで効率的な技術の更なる発展によってもたらされる機会を認識。
  • 日本の「クリーンエネルギー技術のための研究開発(RD20)」イニシアティブを認識。
  • エネルギーの安全な流れに関する懸念を浮き彫りにした最近の出来事を考慮し、エネルギーシステム変換のための指針の一つとしての世界のエネルギー安全保障の重要性を認識

(6)環境

  • 循環経済、持続可能な物質管理、3R(リデュース、リユース、リサイクル)による資源効率性向上が、SDGs達成、環境問題に対処する。
  • 2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有し、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」を支持。
  • 海洋資源の持続的な利用を確保し、生物多様性を含め、海洋環境を保全するために、違法・無報告・無規制(IUU)漁業に対処する重要性を認識。

(7)避難と移住

  • G20で国際的な移民と避難の様々な側面に関する対話を継続。
  • 難民の大規模な移動を懸念。根本原因に対処し、人道的ニーズの増大に対応するための行動を分担する重要性を強調。

7 結語

  • 議長国の日本に感謝。
  • 来年サウジアラビアで、2021年にイタリアで、2022年にインドでG20を開催。

(了)