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経済

日本のFTA戦略(要旨)

平成14年10月

1.なぜ自由貿易協定(FTA)か

(1)経済グローバル化が進展する中、自由貿易体制の維持強化が重要であり、WTOの果たす役割は依然として大きいが、WTOで実現できる水準を越えた、あるいはカバーされていない分野における連携の強化を図る手段としてFTAを結ぶことは、日本の対外経済関係の幅を広げる上で意味が大きい。
(2)EU、米は大規模な地域経済貿易網の構築と、WTO交渉の両方を睨んだ政策を追求しており、今回の新ラウンドは、このような大規模地域統合が構築される前の最後の多角的貿易交渉と言える。日本としても、WTO交渉のみならず、FTAの動きも視野に入れた対外経済関係の強化を行う必要がある。

2.自由貿易協定を推進する具体的メリット

(1)経済上のメリット
 輸出入市場の拡大、より効率的な産業構造への転換、競争条件の改善の他、経済問題の政治問題化を最小化し、制度の拡大やハーモニゼーションをもたらす。
(2)政治外交上のメリット
 WTO交渉における交渉力を増大させるとともに、FTA交渉の結果をWTOへ広げ、WTOの加速化につなげる。また、経済的な相互依存を深めることにより相手との政治的信頼感も生まれ、日本のグローバルな外交的影響力・利益を拡大することにつながる。

3.自由貿易協定推進にあたり留意すべき点

(1)WTO協定との整合性
 地域貿易取り決め(RTA)形成前よりも関税等が高度または制限的なものであってはならない、実質上のすべての貿易について、関税その他の制限的通商規則を廃止する、原則として10年以内にRTAを完成させる、という三点を確保する必要がある。「実質上のすべての貿易」については、貿易額で国際的に見て遜色のない基準を実現する自由化を達成すべきである(なお、通報ベースでは、NAFTAは平均99%、EU・メキシコは97%)。
(2)国内産業への影響
 日本の市場開放から生じる痛みを伴わずにFTAの利益は確保できないが、日本の産業構造高度化にとって必要なプロセスと考えるべきである。人の移動をはじめいくつかの規制分野、あるいは農業分野における市場開放と構造改革のあり方は避けて通れない問題。政治的センシテヴティに留意しつつ、FTAを日本の経済改革に繋げていく姿勢抜きには、日本全体の国際競争力を強化する手段としての目的は達成できない。

4.目指すべき自由貿易協定の姿(何について交渉するのか)

(1)包括性、柔軟性、選択性
 当面はシンガポールとの経済連携協定をベースにすることが選択肢としてあり得るが、柔軟に考えるべきであり、シンガポール・プラスあるいはマイナスもあり得る。また、特定の分野(投資、サービス)の先行ないし限定もあり得る。
(2)日ASEAN包括的経済連携構想の実現に向け考慮すべき事項
 他の地域の経済統合に比肩し得るものとするよう、可能な限り高度な自由化を広範囲な分野で行うことを目指すべきである。
(3)途上国支援としてのFTA活用の可能性
 アフリカを含む開発途上国の経済発展を促すためには、FTA締結も、政策的手段の一つとして考えられよう。

5.自由貿易協定の戦略的優先順位

(1)判断基準
 (イ)経済的基準、(ロ)地理的基準、(ハ)政治外交的基準、(ニ)現実的可能性による基準、(ホ)時間的基準等が考えられる。
(2)日本のFTA戦略ー具体的検討課題
 日本は東アジア、北米、欧州の3地域を主要パートナーとしており、この3地域が日本貿易の8割を占めているが、先進国同士の関係にある北米、欧州に比べ、東アジアとのFTAが更なる自由化を通じ最も大きな追加的利益を生み出す。関税率をとってみても、単純平均した関税率は、米国が3.6%、EUが4.1%、中国が10%、マレイシアは14.5%、韓国は16.1%、フィリピンは25.6%、インドネシアは37.5%となっており、日本産品は最も貿易額の多い東アジア地域において最も高い関税を課されている。ASEANや中国との競争に晒され、多くがその生産拠点を東アジアに移している日本企業にとっても東アジアの自由化を進めることは円滑な企業活動に資する。
 日本がFTAを進めていく際、地域システムの構築による広い意味での政治的・経済的安定の確保を考慮する必要がある。また、緊密な経済関係を有しつつも、比較的高い貿易障壁の存在故に日本経済の拡大の障害の残る国・地域とのFTA締結を優先すべきである。かかる観点からは、東アジアが有力な交渉相手地域となり、上述の「現実的可能性による基準」「政治的外交的基準」に鑑みれば、韓国及びASEANがまず交渉相手となる。
 同時に、NAFTA、及びEUとのFTA締結により、日本企業が相対的に高い関税を支払わされているメキシコについても早急な対応が求められる。
(イ)日中韓プラスASEANが中核になる東アジアにおける経済連携
 まずは韓国及びASEANとのFTAを追求し、中長期的にはそうした土台の上に、中国を含む他の東アジア諸国・地域とのFTAにも取り組むべきである。
 韓国については、政治的重要性、幅広い国民的接触、深い経済的相互依存関係、両国財界人からの包括的なEPA/FTAを目指すべしとの共同提言等にかんがみれば、2003年2月の韓国新政権発足後、可能な限り早期の交渉開始を目指すべきである。また、今後、日中韓を中心とする東アジアの経済関係に関する共通のビジョンを十分に議論すべきである。
 ASEANについては、究極的にはASEAN全体との経済連携強化を視野に入れつつも、先ずは日本との二国間FTAに積極的関心を示している主要なASEAN諸国(タイ、フィリピン、マレイシア、インドネシア等)との間で、日シンガポール経済連携協定の枠組みをベースにして、個別に連携の取組のための作業を早急に進めていくべきである。そして二国間のFTAの仕上がり具合を勘案しながら、右をASEAN全体に拡大するプロセスに入るべきである。
 中国については、究極的には日中韓プラスASEANを中核とする東アジアの経済連携との観点からFTAの可能性を視野におきつつも、当面はWTO協定の履行状況、中国経済の動向、日中関係全体の状況、WTO新ラウンドやアジア各国間のFTA交渉の動き等を総合的に勘案しつつ、方針を定めるべきである。
 香港についても、日中間の経済相互依存関係を展望するプロセスの中で、FTAの可能性も排除することなく検討すべきである。
 台湾は、WTO協定上の独立関税地域であり、WTO加盟国とのFTA締結の可能性は理論的・法技術的には検討の対象となり得るが、関税率は既に低いため、FTAを通じた関税引き下げを行ったとしても双方の利益はそれほど大きくない。具体的な分野に即して経済関係の強化を検討することがより適当である。
 豪州・NZとの間では農産物の扱いがセンシティブであるが、多くの点で日本と価値観や利害関係を共有する。特に豪州は資源の大口供給国。両国経済界提言の通り、包括的なFTA締結を中長期的課題として残しつつも、短期的には相互に利益ある分野における経済連携を図るという二段階方式も一案と思われる。
 メキシコは、前述のとおり早急な交渉の開始が求められる。

(ロ)その他の国・地域に関する予備的考察
 チリの関税構造、日本との貿易額、主要輸出品等にかんがみれば、チリとのEPA/FTAは、中長期的な課題ではあるが、喫緊の最重要課題とはならず。
 メルコスールは、中南米における経済統合の牽引役であり、米州自由貿易地域構想(FTAA)締結に向けた動き、EUとのFTA交渉の行方等は注視する必要。
 ロシアについては、FTAのような包括的経済関係強化は、個別案件を通じた関係を強化した後の検討課題であろう。
 南アジアについては、当面は、インドが国際経済にどのように統合していくかを注目していく中で、連携のあり方を考えるべきである。
 アフリカについては、FTAを途上国支援の方途として用いることは理論的には可能であるが、日本企業にとっての利益の有無も考慮に入れる必要がある。
 北米・EUについて、これらとのFTAは、農林水産物の扱い等、相当困難な課題。また、日米FTAには大きな貿易転換効果。当面は、特定分野(相互承認等)における枠組み作りや、規制改革対話等を通じた関係強化を図ることが有益と考えられる。


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