生物兵器禁止条約(BWC)強化のための作業計画に関する合意
(概要と評価)
平成14年11月22日
1.概要
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11月11日からジュネーブで開かれていた生物兵器禁止条約に関する運用検討会議は、14日、条約強化のための作業計画に全会一致で合意した(日本代表:猪口軍縮代表部大使)。締約国は2006年の次回運用検討会議に向け、毎年、締約国年次会合及びその準備のための専門家会合を開催し、条約の強化に関する5分野について順次討議し、実効的な措置を打ち出すことになった。
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特に近年の生物兵器テロの脅威の高まりを受け、2003年は各国内における刑罰法規の強化や病原菌の安全管理などの措置について討議を行うことが合意された。
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(注) |
条約の強化に関する5分野は以下の通り。(1及び2は、2003年の討議事項。3及び4は2004年の討議事項。5は2005年の討議事項)
- 条約の禁止事項を実施するための国内措置(刑罰法規の策定を含む)
- 病原菌・毒素の安全管理・監視体制を確立・維持するための国内措置
- 生物兵器の使用の疑惑及び疑義のある疾病の発生に対処し、調査・被害の緩和を行うための国際的対応能力の強化
- 感染症の監視・探知・診断に対処するための国内・国際的努力の強化
- 科学者のための行動規範
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2.日本の評価
(1) |
生物兵器禁止条約は、生物兵器の禁止に関する唯一の多国間の法的枠組であり、今回の会議において、生物テロへの対処も念頭に同条約の強化に向けての道筋について全会一致で合意をみたことを高く評価する。
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(2) |
今回の会議は、2001年11月に開かれた運用検討会議が具体的な成果を得ることなく中断を余儀なくされた後、一年間の調整期間を経て再開されたものであり、この間、日本は様々な二国間協議や多国間協議において、今回の合意形成に向け精力的な努力を続けてきた。2003年から始まる5分野に関する討議においても、この分野における日本の知見を活用して、積極的に参加していく考えである。
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(3) |
11月22日、川口外相は、今次運用検討会議のトット議長に対して書簡を発出し、日本として今回の会合の結果を高く評価すると共に、今後ともBWC強化に向けて引き続き努力する旨を伝えた。
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(参考)これまでの経緯
- 生物兵器禁止条約は、締約国による条約遵守を確保するための規定に欠けているため、6年以上に亘って検証議定書作成交渉が続けられてきた。しかしながら、2001年夏以降、米国が議定書作成に反対する姿勢を明らかにし、BWC強化は検証議定書によらないその他の措置によって図るべきであると主張したことにより、議定書交渉は中断した。
- 2001年11月に行われた第5回運用検討会議(5年に1回開催される締約国会議)では、議定書交渉を事実上棚上げし、今後のBWC強化策について協議したが、会議の今後のフォローアップのあり方や検証議定書交渉グループの扱い等について議論が紛糾したため、会議は中断された。今回の運用検討会議再開会合は、1年間の「冷却期間」をおいた上で、再度開催されたものである。
- 今次再開会合の焦点は、2001年の運用検討会議の失敗を繰り返すことなく、今後のBWC強化策について合意できるか否かであった。特に米国は、第6回運用検討会議(2006年)までの会期間において、BWCの枠内での作業は何ら必要ないとの強硬な立場を取っており、調整は難航した。しかし、西側諸国を含め大方の締約国が、条約強化策に関する議論の継続を支持していることを背景に、運用検討会議の議長は、条約の強化に関する5分野と専門家会合・締約国会合の年次開催を内容とする今回の議長提案を各国に提示した。これを受けて14日まで鋭意続けられた非公式の調整の結果、今次再開会合において最終的に議長提案が採択されるに至った。
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