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 4.

租税条約、投資協定、社会保障協定


 (1) 

租税条約


近年、日本の企業や投資家による国際的な経済活動の規模が拡大する中、企業や投資家がより制約の少ない状況で国際的な経済活動を展開できる環境を整備する必要性が高まっている。日本は以前から二重課税の回避等を目的とする租税条約を各国と締結してきており、近年は投資交流を促進する観点から、租税条約ネットワークの更なる拡大を図っている。

2008年6月にはブルネイとの間の協定について基本合意に達し、12月にはカザフスタンとの間の条約について署名を行った。また、11月にはパキスタンとの間の新条約、12月にはオーストラリアとの間の新条約とフィリピンとの間の租税条約改正議定書がそれぞれ発効した。2008年末時点で、オランダ、アラブ首長国連邦、クウェート、サウジアラビア、スイスとの間の条約締結に向けた交渉を行っている。



 (2) 

投資協定


日本は投資の更なる促進を目指し、これまで13か国と投資協定を締結している。中でも韓国、ベトナム、カンボジア、ラオスとの間では投資の保護に加え、投資の自由化を中核とした先駆的な投資協定を締結している(それぞれ、2003年1月、2004年12月、2008年7月、2008年8月に発効)。2008年は、8月にウズベキスタン、11月にペルーとの間で投資協定の署名に至ったほか、サウジアラビアとの間で、また、日中韓三国間でも投資協定を交渉中である。近年、日本が積極的に進めている各国との経済連携協定(EPA)においても、投資の保護及び自由化の促進が主目的の一つとされており、投資促進に関する規定が盛り込まれている注2

また、日本として、今後投資協定をこれまで以上に積極的に推進し、戦略的に活用していくため、官民合同で対外投資戦略会議を立ち上げ、2008年12月11日に第1回会合を開催した。同会議は当面の間半年に1回程度の頻度で開催され、今後、投資協定締結の相手国・地域等の決定など、投資促進を官民で包括的に検討していく枠組みとして活用される予定である。多数国間での投資ルールの策定は、WTOドーハ・ラウンドでは交渉が見送られたが、日本はOECDやAPECなどの枠組みにおいて、投資の自由化・円滑化を促進する取組に引き続き積極的に参画している。



 (3) 

社会保障協定


社会保障協定は、社会保険料の二重負担や掛け捨ての問題を解消することなどを目的としており、海外に進出する日本企業や国民の負担を軽減し、ひいては相手国との人的交流や経済交流を一層促進する効果が期待される。2008年3月にはカナダとの協定が発効し、同年6月にオランダ、チェコとの協定が国会で承認された。また、同年11月にはスペイン、2009年2月には、イタリアとの間で協定の署名が行われた。2008年12月にはオーストラリア、オランダとの間で協定の発効に必要な外交上の公文交換を行い、前者は2009年1月に発効し、後者は同年3月に発効する予定である。


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(注2) 日・ブルネイ経済連携協定及び日・インドネシア経済連携協定については2008年7月に、日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)及び日・フィリピン経済連携協定については同12月に発効(AJCEPの投資分野については、引き続き討議し、交渉する予定)。日・スイス経済連携協定については、2009年2 月に署名を行った。韓国、インド、オーストラリアとの間でも投資章を含む経済連携協定を交渉中。

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