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 2.

領事サービスと日本人の生活・活動支援


 (1) 

領事サービスの向上


外務省は、海外に居住する日本人から在外公館のサービスに関して寄せられる生の声を聞き、領事サービスの改善に反映させるため、在外公館のサービス利用者に対してアンケート調査を定期的に実施している。2008年には在外139公館で約10,600人を対象に同調査を実施した。その結果、窓口や電話での応対振りについて80%以上が肯定的回答であった。しかしながら、比較的少数ながら否定的回答があったことや、在外公館ホームページへの肯定的評価が約24%にとどまるなど、依然改善すべき点があることから、引き続き、サービス向上のため不断の努力を行っていく。

サービス向上策の一つとして、安全対策・治安事情などの情報を積極的に発信するため、在外公館に登録した在留邦人の連絡先に対し、一斉に緊急情報を発信できるシステムを開発した(2008年11月から仮運用中)。

また、海外に滞在する日本人にきめ細かく親身なサービスを提供するため、領事業務量の多い一部の在外公館を対象に、民間企業等で海外勤務経験を持つシニア世代の人材を「領事シニアボランティア(領事相談員)」として派遣している。2007年10月に派遣した6名に加え、2008年1月から2月にかけて在外4公館に各1名を派遣した。本制度は利用者から好評を得ており、今後も制度の維持・拡充に努めていく。


領事サービス利用者へのアンケート調査結果(2008年)

領事サービス利用者へのアンケート調査結果(2008年)

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 (2) 

旅券(パスポート)に関する施策(IC旅券の発行と今後の課題)


パスポートの偽変造や第三者による不正使用を防止するため、日本では2006年3月から、生体情報である顔画像を電磁的に記録したICチップ搭載のパスポート(IC旅券)を発行している。2008年は国際的な燃油代の高騰や金融・経済状況への不安等もあり海外旅行者数が減少し、旅券発給数も前年より減少したが、日本国内では1年間に約380万冊が発行された。またIC旅券については、発行開始から2008年12月までに累計約1,145万冊が発行され、有効な旅券の約36.5%が既にIC旅券となっている(2008年12月末現在)。

国内の国際空港・港には、2007年11月にIC旅券読み取り機が設置され、出入国審査の際に、ICチップに記録された顔画像とパスポートを提示した人物の顔とを照合できるようになった。

こうしたIC旅券の発行により、発行済みパスポートの写真差し替え等の偽変造や不正使用の発見は容易となったが、その一方で、他人が本人になりすまして不正に申請・取得する件数が増えている(2006年67件、2007年111件、2008年111件)。これまでも申請時及び交付時には本人確認を厳格に行ってきているが、今後更に徹底していくことが求められている。

なお、海外では、このような事案への対策として、顔画像のほか指紋情報を記録したIC旅券を発行する国が増えており、こうした国際的な犯罪対策の趨勢(すうせい)に従って積極的に対策を進めていく必要がある。


旅券(パスポート)発行数の推移

  一般 公用 合計
 2004年  3,485,325 31,857 3,517,182
 2005年  3,612,473 30,568 3,643,041
 2006年  4,302,191 29,457 4,331,648
 2007年  4,209,097 27,331 4,236,428
 2008年  3,801,384 28,400 3,829,784
(注)公用旅券には、外交旅券も含む。

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 (3) 

在外選挙


1998年に在外選挙制度が創設されて以来、在外選挙は衆議院と参議院それぞれの比例代表選挙に限定されていたが、2006年6月の公職選挙法の一部改正により、2007年6月以降の選挙から、衆議院小選挙区選挙及び参議院選挙区選挙(これらの補欠選挙及び再選挙を含む)も対象となった。この改正を受けての選挙区選挙は2007年7月の参議院通常選挙の際に初めて実施され、2008年には4月に補欠選挙(衆議院山口県第2区)が行われた。次回衆議院総選挙の際には、初めて小選挙区選挙の投票が実施されることとなる。

海外で投票するためには、事前に在外選挙人名簿への登録を申請して在外選挙人証を入手する必要がある。在外公館では、管轄地域在住の日本人を対象に在外選挙制度の広報や公館所在地以外の地域への登録受付出張サービスを行うなど、制度の普及と登録者数の増進に努めている。


1. 在外公館投票

在外選挙人名簿に登録されている有権者は、投票記載場所を設置している在外公館(大使館や総領事館等)で、在外選挙人証と旅券等を提示して投票することができる。投票できる期間・時間は、原則として選挙の公示日又は告示日の翌日から在外公館ごとに決められた日までの、午前9時30分から午後5時までとなっている(ただし、投票できる期間・時間は、在外公館により異なる)。

※有権者は在外公館投票と郵便投票のいずれかを自ら選択して投票することができる。


図・在外公館投票


2. 郵便投票

郵便投票を行うためには「在外選挙人証」と「投票用紙等請求書」を登録先の市区町村選挙管理委員会に送付して、あらかじめ投票用紙を請求し、日本国内の選挙期日における投票終了時刻(日本時間の午後8時)までに投票所に到達するよう、登録先の市区町村選挙管理委員会に送付する。

※投票は公示日又は告示日の翌日から開始されるため、投票用紙への記載及び記載した投票用紙の送付は公示日又は告示日の翌日以降に行う。


図・郵便投票


3. 日本国内における投票

在外選挙人は、選挙の時に一時帰国している場合や帰国後国内の選挙人名簿に登録されるまでの間は、国内における選挙人と同様の投票方法(期日前投票、不在者投票、選挙期日における投票)を利用して投票することができる。



 (4) 

海外での日本人の生活・活動に対する支援


 イ  

日本人学校・補習授業校への支援

海外で生活する日本人にとって、子供の教育は大きな関心事の一つである。外務省では、海外でも、義務教育相当年齢の子女が、日本と同程度の教育を受けられるよう、文部科学省と連携して日本人学校への支援(校舎借料・現地採用教員謝金・安全対策費等の一部援助等)を行っている。また、主に日本人学校が存在しない地域に設置されている補習授業校(国語等の学力維持のために設置されている教育施設)に対しても、支援(校舎借料、現地採用講師謝金の一部援助等)を行っている。近年、海外在住の日本人子女数は増加傾向にあり、今後もこうした支援を継続・強化していく方針である。


 ロ  

医療・保健対策

外務省では、医療事情の悪い国に滞在する日本人の健康相談を実施するため、国内医療機関の協力を得て巡回医師団を派遣しており、2008年には29か国52都市に派遣した。

また、海外で流行している感染症等の情報や各国・地域の一般的な医療事情等の情報を収集し、海外安全ホームページや在外公館ホームページ等で広く提供している。特に、H5N1型鳥インフルエンザウイルスが人から人へと感染するタイプに変異して、新型インフルエンザが発生し世界的に大流行する恐れがあるため、関連情報の収集と在留邦人に対する情報提供を強化している。


海外における日本人子女の就学形態の推移

海外における日本人子女の就学形態の推移

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 ハ  

多様化するニーズへの対応

原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)が2008年6月に改正され(12月施行)、日本国外に居住する被爆者も在外公館を経由して被爆者健康手帳の交付を申請できるようになった。

また、海外在住の日本人高齢者への支援として、現地日本人団体、ボランティア団体等による日本人高齢者の医療・介護問題等への取組(会議、セミナー、イベント等の開催や高齢者からの各種相談受付等)に対し、在外公館が参加して助言するなどの側面的支援を行っている。今後も海外に在住する高齢層の日本人の数は増加が見込まれることから、国内関係機関とも連携の上、支援の継続と強化を検討している。

さらに、在留邦人の滞在国での各種手続(滞在・労働許可、運転免許証の切替え等)の煩雑さを解消し、より円滑に生活できるようにするための取組を継続して行っている。具体的には、EU諸国に対し滞在労働許可や運転免許切替えに関する手続の迅速化・簡素化等を、米国に対しては米国査証の米国内での更新手続の再開や、各州運転免許制度の改善を働き掛けている。2008年には、ハンガリーとの間で運転免許試験の相互免除に関する交換公文(E/N)に署名し、運転免許の切替えの際の試験免除が実現した。さらに、台湾についても、試験の相互免除が実現し、日本の運転免許証から台湾の運転免許証への切替えが実現した。


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