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 6.

知的財産権保護の強化


知的財産権保護の強化は、創造的な経済の発展にとって極めて重要である。そのため、日本は、知的財産権保護の強化のため、様々な取組を行っている。

まず、日本が提唱した新しい国際的な法的枠組みである「模倣品・海賊版拡散防止条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement,ACTA)(仮称)」注24については、その早期実現に向けて関係国との交渉を積極的にリードしている。2008年6月には、条文案に関する議論を開始し、12月までに4回の会合を開催した結果、ACTAのすべての側面について引き続き作業を行うための強固な基礎を築くことができた。その他、G8サミット、APEC注25、OECD、WTO(TRIPS理事会注26)や世界知的所有権機関(WIPO)等での多数国間の議論に積極的に参画している。

また、二国間では、中国注27、韓国、米国注28、EU注29との間で個別の知的財産権保護の強化・協力に関する対話を続けている。また、経済連携協定(EPA)注30においても、可能な限り知的財産権に関する規定を設けることとしている。


(注24) 日本は、2005年のG8グレンイーグルズ・サミットにおいて、小泉総理大臣が模倣品・海賊版の拡散防止に向けた法的枠組み策定の必要性を提唱して以来、先進国及び知的財産権の保護に高い志を有する開発途上国と共に、本構想の実現に向けて積極的に議論を行ってきた。2007年10月、日本は、米国、欧州委員会等と共に、ACTAの実現に向けて、知的財産権の保護に関心の高い国々と緊密に連携を図り、ACTAにおいて実現していくべき内容についての集中的な協議を開始することを発表した。現在、交渉には日本を始め、米国、EU、スイス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、韓国、モロッコ、シンガポールが参加している(模倣品・海賊版対策の取組については、第4章第3節2.「模倣品・海賊版対策」を参照)。
(注25) APECでは、11月の首脳宣言において、APEC模倣品・海賊版イニシアティブ及び地域の特許制度を改善する取組の実施についてのエコノミーの進展を歓迎する旨言及された。
(注26) TRIPS理事会とは、TRIPS協定の実施、特に加盟国による義務の遵守を監視し、同協定に関する事項の協議を行う場である。
(注27) 日中間では、5月の胡錦濤国家主席の来日時における「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明において互恵協力の強化の一つとして知的財産権保護が取り上げられたほか、10月の第7回日中経済パートナーシップ協議において、中国における知的財産権執行強化の方策について協議された。
(注28) 日米間では、日米次官級経済対話及び「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」の対話等において、模倣品対策を始めとする知的財産権保護強化のための両国間の緊密な協力関係を維持していくことを確認し、同イニシアティブについての日米両首脳への第7 回報告書では上記協力関係を維持する旨記載された。
(注29) 日・EU間では、3月の知的財産権に関する日・EU対話で模倣品・海賊版対策協力等について協議した。
(注30) シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、ASEANとの間で知的財産権に関する規定を含む協定が発効済み。ベトナム、スイスとの間で署名済み。

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