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【各論】


 1.

金融危機への対応


近年急速に進展してきた金融市場のグローバル化を背景に、米国のサブプライムローン問題を契機とした金融市場の混乱は世界中に波及し、100年に一度と言われる金融危機が発生している。金融情勢の激変は世界の実体経済に重大な影響を及ぼしており、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)によれば、2009年の主要先進国は軒並みマイナス成長の見通しとなっている。日本においても、世界的な景気後退を受けて、景気の急速な悪化が続いており、厳しい状況にある。

このような未曾有(みぞう)の金融危機を受け、11月15日に米国のワシントンにおいて、金融・世界経済に関する首脳会合が開催された。同会合では主要先進国に加え、新興経済国の首脳や国際機関の長が一堂に会して議論を行った結果、現下の金融危機と世界経済の減速への対応、国際金融システムと金融規制・監督の改革の方向性と具体策について一致し、金融改革の行動計画や保護主義に陥らないための方策を含む「金融・世界経済に関する首脳会合宣言」を発出するなど、同会合は歴史的な意義を有するものとなった。


世界経済の今後の見通し

世界経済の今後の見通し


日本からは、麻生総理大臣が出席し、麻生太郎の提案「危機の克服」注1を会議場に配布の上、[1]基軸通貨の在り方と地域協力、[2]10年前に日本が経験したバブル崩壊とその後の再生、[3]今回の世界的危機克服のための処方箋(せん)といった諸点につき発言した。また、新興国・中小国支援のためにIMFに対する最大1,000億米ドル相当の融資を行う用意がある旨表明するなど重要な貢献を行い、各国・国際機関から高い評価を得た。

同会合で得られた成果は、同月ペルーで開催された第16回アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議において、アジア太平洋諸国等の間でも共有されることとなった。

日本としては、2009年4月にロンドンで開催される第2回首脳会合に向けて首脳間の共通認識を迅速かつ着実に実施するため、引き続き、関係各国と協調して取り組んでいく。また、1997年の経済危機を克服し、経済成長を続けてきたアジア地域の「世界の成長センター」としての役割を強化するとともに、世界経済の安定と繁栄に向けて引き続きリーダーシップを発揮していく。


「金融・世界経済に関する首脳会合」の概要

  1. 11月14日及び15日、米国のワシントンにて開催され、麻生総理大臣及び中川財務・金融担当大臣が出席。同会合での議論を踏まえ、「金融・世界経済に関する首脳会合宣言」が発出された。
  2. 参加国・参加機関
    参加国: G7(日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ共和国、トルコ、欧州連合(欧州委員会、オランダ、スペイン)
    参加機関: 国際連合、IMF、世界銀行、金融安定化フォーラム(FSF)
  3. 首脳会合宣言のポイント
    1. 金融機関に対する規制・監督
      • 基本原則及び短期・中期的措置(行動計画に47項目)
    2. IMF等国際機関関連
      • 資金基盤の強化(日本から、具体的に1,000億米ドル融資の用意を表明)
      • 開発途上国の発言力強化
      • 早期警戒機能拡充
    3. 景気刺激策の必要性
    4. 市場経済(自由な貿易・投資)の重要性
      • 保護主義回避
      • ドーハ・ラウンド交渉で年内モダリティ合意のため努力
    5. 短期的措置を2009年3月31日までに実施

-
(注1) 詳細は首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/asospeech/2008/11/081115kikinokokuhuku.pdf)を参照。

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