第3節日本と国際社会の繁栄に向けた取組 |
2008年の世界経済は、前半には主要穀物を始めとする食料価格高騰や急激な原油価格高騰を経験し、また、後半には米国のサブプライムローン問題に端を発した金融危機が深刻化し、世界的な景気後退が起こるなど、激動の1年となった。日本経済についても、景気の急速な悪化が続いており、厳しい状況にある。
激変する世界経済情勢と、複雑・深刻化する地球規模の諸課題を前に、7月、日本はG8議長国としてG8北海道洞爺湖サミット(詳細は第1章「G8北海道洞爺湖サミット」を参照)を主催し、国際的にも高い評価を得た。また、100年に一度とも言われる未曾有(みぞう)の金融危機に対し、11月、日本は金融・世界経済に関する首脳会合(於:ワシントン)で、1990年代に金融危機を克服した自らの経験を披露し、また、国際通貨基金(IMF)への最大1,000億米ドル相当の融資の用意を表明するなど、具体的かつ重要な貢献を行った。会合では金融制度強化の47項目の行動計画を含む具体的かつ行動志向的な宣言が合意されたが、2009年4月の第2回首脳会合(於:ロンドン)においては、原則と決定の実施状況のレビュー等が行われる予定である。日本は引き続き国際社会の取組を主導すべく、積極的な経済外交を展開していく。
貿易分野では、世界経済の悪化を受けて、開放的な国際貿易をもたらす世界貿易機関(WTO)体制の整備・強化の重要性がより高まっている。WTOドーハ・ラウンド交渉については、上記の金融・世界経済に関する首脳会合及び同じく11月に開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議(於:ペルー)で発出された政治的メッセージも後押しとなり、12月には、農業及び非農産品市場アクセス(NAMA)等についての新たなテキストが提示された。主要論点に関する関係国の立場の隔たりもあり、12月中の閣僚会合の開催は見送られたが、ラウンドの早期妥結に向けて引き続き精力的に交渉を行うことが一層必要となっている。また、世界的な保護主義の高まりに対しては、金融・世界経済に関する首脳会合及びAPEC首脳会議において、そうした動きを牽制(けんせい)する強いメッセージが発出された。今後とも保護主義的措置の動向には注視・警戒が必要である。
また、日本は、WTOを中心とする多角的自由貿易体制を補完する取組として、経済連携協定(EPA)(注1)も積極的に推進しており、貿易の自由化にとどまらず、人の移動や投資の自由化など、様々な分野でのルールづくりを行っている。2008年にはインドネシア、ブルネイ、フィリピン、さらにはASEAN全体(注2)との協定が発効したほか、12月にはベトナムとの、2009年2月にはスイスとの協定が署名に至った。湾岸協力理事会(GCC)、インド及びオーストラリアとは交渉が継続中である。交渉が中断している韓国とは、2008年に交渉の再開に向けた検討及び環境醸成のための実務協議を2回実施した。さらに日本は、東アジア及びアジア太平洋地域における経済連携の枠組みに関する研究や検討に積極的に参加、貢献していくこととしている。また、加盟国の経済成長と安定のための協力などを議論している経済協力開発機構(OECD)においても、金融危機への対応や貿易・投資の自由化促進の問題に取り組んでいる。
自由貿易・投資の促進と並んで、エネルギー資源や食料の確保といった経済安全保障の強化も経済外交政策の柱の一つである。2008年においては、原油価格・食料価格が激しく乱高下したことから、エネルギー・食料安全保障への国内外の関心はますます高まった。このような状況を受け、エネルギー資源については生産国との関係強化(6月及び12月の産消国対話など)や国際エネルギー機関(IEA)など国際機関との連携強化などを通じて、安定供給の確保、市場の安定化等に努めている。また、食料分野については、6月の国連食糧農業機関(FAO)ハイレベル会合、7月のG8北海道洞爺湖サミット等の機会を通じて、世界及び日本自身の食料安全保障強化のために首脳レベルの外交を展開した。
知的財産権保護の強化は今や日本の経済外交政策の柱の一つとなっており、日本は、二国間、多数国間で知的財産権保護の強化のための様々な取組を行っている。その一つとして、世界経済の持続的な成長に対する脅威となっている模倣品・海賊版の拡散への対応についても日本は指導的役割を果たしている。
対米ドルレートの年初からの変化率(2008年) ![]() |
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株式市場の年初からの下落率(2008年) ![]() |