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湾岸諸国 |
2003年以降、湾岸協力理事会(GCC)諸国では原油高騰を背景に高い経済成長を維持してきたものの、2008年9月以後の世界的な金融危機と、それと前後して発生した原油価格の下落は、GCC各国の経済に大きな影響を与えている。各国は、産業の多角化に向けた投資を行ってきているが、石油・天然ガスの輸出収入、外国人労働力に多くを依存するという経済構造は大きく変化しておらず、自国民労働力の能力向上と労働力の自国民化の推進が引き続き共通の課題となっている。一方で、12月にオマーンで開催されたGCC首脳会議では、引き続き2010年1月までの単一通貨導入を目指す方針が再確認されたほか、関税同盟、共通市場の進展に向けての域内協力案件につき議論された。
治安問題に関し、GCC諸国内では大規模テロ事件の発生は見られなかったものの、隣接するイエメンにおいて9月に米国大使館への自爆テロ事件が発生するなど、引き続き湾岸諸国全体で潜在的なテロの脅威は継続していると見られる。また、ソマリア沖・アデン湾では4月に日本船籍原油タンカーが小型不審船に襲撃され、イエメン沿岸警備隊にエスコートされてアデン湾に避難する事件が発生するなど、海賊事件が多発し、域内外諸国による海賊対策の取組が行われている。
外交面では、カタールによるレバノン情勢に関するドーハ合意の実現及びスーダンのダルフール問題への関与等、域内外の問題に対する活発な外交努力が見られた。また、12月末に開始されたイスラエルによるガザ攻撃については、GCC諸国の間でも立場の相違が見られたものの、12月29日~30日にオマーンで開催されたGCCサミットではイスラエルのガザ攻撃を強く非難し、国際社会に対して迅速な行動を求めた。さらにアブドッラー・サウジアラビア国王陛下のイニシアティブにより、7月にはマドリードにて世界対話会議が開催され、11月には国連の場において文化・宗教間の対話に関するハイレベル会合が開かれた。
日本との関係については、奥田碩(ひろし)内閣特別顧問が総理大臣特使として、5月及び7月にGCC6か国を訪問し、各国首脳と良好な二国間関係を確認するとともに、エネルギー分野に限られない重層的関係を構築していくことの重要性をGCC諸国に確認した。各国からは日本が教育、職業訓練、産業の多角化などで果たす役割に高い期待が示された。また、クウェートのナーセル首相が7月公式訪日した。経済面では、貿易・投資分野での関係強化を背景に、日本とGCC間の自由貿易協定(FTA)交渉が2006年9月以降継続しており、二国間協定ではサウジアラビアとの投資協定交渉に5月実質合意し、同国との航空協定に8月署名した。
また、カタールとの間では、2006年に創設された合同経済委員会の第3回会合(閣僚級)が11月に開催され、エネルギー分野等における双方向の投資活動を活発化させ、関係強化を図っていくことが確認された。