本編 > 第2章 地域別に見た外交 > 第6節 中東と北アフリカ > 【各論】 > 3.アフガニスタン
アフガニスタンでは、2001年のタリバーン政権崩壊以降、近代的な国家構築のための復興努力が続けられており、2005年12月には憲法制定、大統領選挙、下院・県議会選挙等の一連の国家統治機構整備プロセスが完了した。2009年には2回目となる大統領選挙及び県議会選挙が予定されている。
治安は不安定の度合いを強めており、特に、パキスタンと国境を接する南部・南東部・東部の治安は懸念すべき状況にある。2008年9月の国連事務総長報告では、同年3月以降、アフガニスタンの治安情勢が著しく悪化しており、治安事件数がタリバーン政権崩壊以降最多の983件(前年同月比44%増)を記録したこと、反政府勢力は引き続き南部及び東部を中心に活動しつつも、カブール近県を含む比較的平穏であった地域で影響力を増していること、パキスタン領内からの越境活動による事件が著しく増加していることなどが報告されている。
アフガニスタン政府は、G8が主導する国際社会の支援を受けて、国軍創設、武装解除、警察再建、麻薬対策、司法改革を内容とする治安分野改革を実施している。また、NATOが指揮を執る国際治安支援部隊(ISAF)が治安維持の支援に当たっている。
アフガニスタンの復興においては、これまでに500万人の避難民が帰還したほか、2007年には13.5%の経済成長率を記録した。教育分野では就学人数が2001年の100万人以下から2007年には570万人に増加し、医療分野では、はしかの予防接種率が2000年の35%から2006年の68%に改善した。また、アフガニスタン政府は2008年4月にアフガニスタン国家開発戦略(ANDS)最終版を策定し、同戦略に基づく施策が進められている。
その一方で、アフガニスタンでは内戦が過去数十年にわたって続いたことから、今後の復興・開発に不可欠な基礎的インフラは未整備の部分が多く、地方への支援拡大も課題である。特に麻薬問題の解決は最重要課題の一つである。アフガニスタンのアヘン生産量は世界の生産量の93%を占めているとされており、2008年は過去最高だった前年に比べて約6%減少の見込みである。依然として2006年よりは高いレベルである。麻薬対策の鍵(かぎ)となる代替生計支援においては地域共同体ごとの開発支援も重要である。
日本は、アフガニスタンをテロと麻薬の温床に逆戻りさせないとの決意の下、治安・テロ対策と人道・復興支援を車の両輪として取り組んでいる。治安・テロ対策では、補給支援活動特別措置法に基づき、海上自衛隊による海上阻止活動への支援をインド洋において実施している。人道・復興支援においては、「平和の定着」構想に基づき、政治プロセス、治安改善、復興のすべてにわたり支援を行ってきており、2001年9月から2008年9月までに日本が実施・決定した支援実績は約14.5億米ドルに達した。2008年12月現在、日本大使館員、JICA職員を始めとして約140人の文民がアフガニスタン本土で活動している。
日本は、2002年1月のアフガニスタン復興支援国際会議(東京会議)を開催し、アフガニスタンの和平・復興の努力に対する国際社会の支援を取りまとめるなど、これまでアフガニスタン支援について国際社会で主導的な役割を果たしてきている。東京会議を含め、4回目の支援国会合となる2008年6月のアフガニスタン支援国際会議(パリ会議)では、日本は当面5.5億米ドルの追加支援を表明した。
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