3. |
コーカサス諸国 |
8月、緊張の高まっていた南オセチアにおいてグルジア軍と南オセチア軍とが戦闘状態に突入したのを受け、ロシアが自国民保護を理由に介入し、軍隊を南オセチアを含むグルジア領内に展開させたことにより、その帰趨(きすう)に国際社会の関心が高まった。その後、国際的な仲介努力もあり停戦合意に至ったが、ロシアが南オセチア及びアブハジアの独立を一方的に承認したことで、国際社会から強い非難を浴びることとなった。このように、今次紛争をめぐり欧米諸国とロシアとの間では軋轢(あつれき)が生じたが、国連、EU等の主催により、紛争のすべての当事者が参加する国際会議がジュネーブで開かれ、紛争の処理について議論が重ねられている。日本は本問題に対して、当初から領土保全の原則に基づく平和的解決を一貫して支持し、紛争直後には国際機関を通じて避難民に対して緊急人道支援を提供した。また、日本は10月にブリュッセルで行われたグルジア支援国会合において、最大約2億米ドルの支援を表明し、運輸インフラ整備のために有償資金協力による貢献を行うとともに、緊急の支援として約1,200万米ドルの無償資金協力を実施した。
グルジア紛争の影響により物流の一時遮断など経済的損害を被ったコーカサス地域であるが、アゼルバイジャンにおいて10月に大統領選挙が実施され、アリエフ大統領が90%近くの得票率を得て再選されるなど、内政はおおむね安定している。アルメニアにおいては、2月に実施された大統領選挙の結果に対して当局と野党間で激しい衝突が生じ、一時は非常事態令が発出されたが、その後は野党側の集会開催等は散見されるものの、沈静化している。また、アルメニアがアゼルバイジャンとの間で抱えるナゴルノ・カラバフの領土問題は、依然として解決のめどが立ってはいないが、外交関係のないトルコとの間ではアルメニアの招待により、9月にギュル・トルコ大統領がサッカー観戦(アルメニア対トルコ)のためにアルメニアを初めて訪問するなど、関係改善の動きも見られた。
![]() グルジア支援国会合(10月22日、ベルギー・ブリュッセル) |