第5節ロシア、中央アジアとコーカサス |
ロシアについては、5月のメドヴェージェフ大統領及びプーチン首相の就任後、全般的に安定した政権運営が続いており、対外政策の方向性に本質的な変化は見られない。対アジア外交に関しては、ロシアは近年、極東・東シベリア開発を進め、アジア太平洋地域との関係強化を目指す方針をとっており、安全保障及び経済の両面において同地域における活動が活発になってきている。ロシア経済は成長を続け、日露経済関係も順調に拡大してきたが、2008年末には金融危機の影響が見られ始めた。
日本にとってロシアは重要な隣国であり、日露両国がアジア太平洋地域で協力と連携を深めていくことは、両国の戦略的な利益に合致するのみならず、この地域の安定と繁栄に貢献し得る。日露間では、首脳・外相間を始めとして、様々なレベルでの政治対話が頻繁に行われているほか、両国間の経済関係が順調に発展するなど、「日露行動計画」(注1)に基づいて幅広い分野で協力が進んでいる。
政府としては、ロシアとはアジア太平洋地域の安定と繁栄に資するべく、同地域で共に伸びていけるような高い次元の日露関係を構築するために、日露間の最大の懸念である北方領土問題について、この問題の最終的解決に向け、ロシア政府との間で強い意思をもって精力的に交渉を行っている。
2008年8月には、コーカサス地域において南オセチアをめぐるグルジアとロシアとの武力衝突があり、世界の耳目を集めた。豊富なエネルギー資源及びアジアと欧州、ロシアと中東を結ぶ十字路としての地政学上の重要性ゆえに、中央アジア・コーカサス地域(注2)の安定と繁栄は、日本のみならず、国際社会にとっても重要な関心事項となっている。6月には、ナザルバエフ・カザフスタン大統領を日本に迎え、互恵的な関係の基盤を拡大した。日本は、二国間での取組のみならず、「中央アジア+日本」対話の枠組みなども活用しながら、「自由と繁栄の弧」の考え方に基づき中央アジア・コーカサス諸国の民主化・市場経済化の努力を支援していく。