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中南米諸国との関係強化と協力 |
日本は、中南米に対し、経済関係の強化、安定的発展に対する支援及び国際社会での連携強化を重視した外交を行っている。2008年は、日本ブラジル交流年(日本人ブラジル移住100周年)を始めとした周年行事等を通し、交流が強化された1年となった。
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経済関係の強化 |
日本は、中南米地域を、グローバル経済における生産・輸出拠点、資源の一大供給地及び有望な市場として重視し、経済関係の強化に重点的に取り組んでいる。
経済連携協定(EPA)締結の効果は大きく、チリとのEPAは2007年9月の発効以降、両国の貿易投資関係の拡大に貢献しており、特に、自動車、一般機器を主要輸出品とする日本からの輸出額は発効前に比べ約7割増大した。また、2005年に発効したメキシコとのEPAの効果も大きく、貿易額は締結前の約2倍、毎年の直接投資額も締結前と比べ約3倍で推移している。
また、資源分野を始めとして経済関係を戦略的に強化する観点からも外交が推進された。11月に麻生総理大臣がAPEC首脳会議の機会にペルーを公式訪問した際には、鉱物資源の安定的確保を含め、投資環境の改善に資する法的枠組みを構築するため日・ペルー投資協定が署名された。また、同月、中曽根外務大臣は、コロンビアを公式訪問し、同国との投資協定の交渉開始につき一致した。
![]() コロンビアを訪問し、ウリベ・コロンビア大統領(左)と会談する中曽根外務大臣(右)(11月21日、コロンビア・ボゴダ) |
経済分野での大型協力案件も進行中である。デジタルテレビの日本方式については、2006年6月にブラジルで導入が決定されて以降、日本とブラジルが共同で、ほかの南米各国における同方式の普及を推進している。また、ブラジルでリオデジャネイロとサンパウロを結ぶ高速鉄道の整備計画について検討が進められており、高速・安全・安定輸送を誇る日本の新幹線方式の導入に向けて働き掛けが行われている。パナマで進行中のパナマ運河拡張計画には、これまで金融顧問及び融資の分野で日本企業及びJBICが参画している。
主要な動き(各国・地域別)
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地域の安定的発展への貢献 |
日本は、中南米各国政権が、民主主義を堅持しながら、貧困や社会格差是正といった社会的課題への取組を通じ、安定的な発展を遂げることを重視しており、そうした努力を支援していく方針である。
このような観点から、特に教育や保健・医療等の社会開発、産業インフラ整備、各種研修や専門家派遣等の人材育成の分野などにおいて、政府開発援助(ODA)を通じた積極的な支援を行っている。また、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン及びチリとは、パートナーシップ・プログラムを通じて、第三国に対する協力を行っている。中南米地域はハリケーンや地震といった自然災害にぜい弱な地域であり、日本は、災害時の被災者救援のため、緊急援助物資や緊急無償資金協力の供与により迅速な支援に努めている。
国際社会の支援の下で治安の確保と民主主義の定着を目指すハイチにおいては、食料価格の高騰により暴動が発生し、情勢が不安定化したため、食料援助を実施するとともに、ハリケーン通過がもたらした大規模な被害に対し緊急援助や緊急無償援助等を実施した。
(3) |
国際社会での協力 |
民主主義と市場経済の定着が進みつつある中南米諸国は、今日基本的な価値の共有を基盤として国際社会の諸課題に具体的に協力して取り組んでいくことができるパートナーである。2008年、メキシコとは、G8北海道洞爺湖サミット及びAPEC首脳会議(於:ペルー)の機会に日・メキシコ首脳会談が実施され、11月の会談では、戦略的パートナーシップの強化について確認するとともに、気候変動問題などの地球規模課題について意見交換した。また、人間の安全保障の概念普及を目指し、両国が非公式会合を共催し、さらに、国際社会における連携強化に向けた協議を行った。
また、ブラジルとは、7月のG8北海道洞爺湖サミットの機会にルーラ大統領が訪日した際及び11月にワシントンで開催された金融・世界経済に関する首脳会合の機会に、日・ブラジル首脳会談が実施され、環境・気候変動問題、国連安保理改革、世界金融・経済危機、世界貿易機関(WTO)問題等の国際社会の課題について協議した。
環境・気候変動の分野では特に連携が進展した。3月の日・ペルー首脳会談において、「環境・気候変動分野における協力の一層の強化に関する共同声明」に署名を行った。また5月には、ホンジュラスのサンペドロスーラで開催された気候変動に係る中米カリブ首脳会合において、中米・カリブ諸国は、日本のクールアース推進構想に賛意を表明した。
10月の国連安保理非常任理事国選挙に関し、中南米諸国の多くの国が日本の立候補を支持した。この結果、日本はメキシコと共に2009年1月から2年間安保理非常任理事国を務めることになった。
![]() 木村外務副大臣(左)は、シンクラー・バルバドス外相(右)と会談し、二国間関係促進について意見交換した。バルバドスは気候変動問題における日本のイニシアティブを歓迎した(6月25日、バルバドス・ブリッジタウン) |
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交流の強化 |
2008年は複数の国との間で周年を祝賀し、活発な要人往来が行われた。
ブラジルとの間では、2008年は日本人のブラジル移住100周年に当たる。このため、過去100年間の移住者の労苦と功績を記念するとともに、未来志向で幅広い両国国民の交流を促進するため、「日本ブラジル交流年」として一連の行事を実施した。4月には、日本において、天皇皇后両陛下並びに皇太子殿下の御臨席の下、三権の長及びブラジル政府代表であるロウセフ文官長も出席して記念式典が実施された。6月には、日本ブラジル交流年の名誉総裁である皇太子殿下がブラジルを訪問され、各地で開催された記念式典に御臨席になった。また、日本ブラジル交流年実行委員会の名誉会長を務める麻生太郎衆議院議員(日本ブラジル国会議員連盟会長)を始めとする多くの国会議員、県知事や市長等がブラジルを訪問した。交流年実行委員会が記念事業として認定した487件の事業及びブラジル側で実施された1,000件以上の記念事業を通じ、両国間の幅広い交流が実現した。
コロンビアとの間では、2008年は日・コロンビア外交関係開設100周年に当たり、コロンビアにおいて4月のボゴタ国際図書館展への特別招待国としての日本の参加、5月の記念式典関係、日本においては7月の「黄金の国ジパングとエル・ドラード展」等の各種記念行事が実施された。また、両国関係の発展を見据えた基礎づくりのため、双方の産・学・官からの参加を得て「日本・コロンビア賢人会」が設置され、経済関係緊密化に向けた提言を発出した。コロンビアからは、7月にアラウッホ外相、10月にサントス副大統領が訪日したほか、11月には、中曽根外務大臣がコロンビアを公式訪問した。
メキシコとの間では、日・メキシコ外交関係開設120周年に際して、エスピノサ外相が来日し外相会談が実施されたほか、双方で記念シンポジウムなどが開催された。また、日本メキシコ交流400周年を迎える2009年から2010年にかけて一層の交流促進を目指すことについて両国首脳の見解が一致した。