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【各論】


 1.

中南米地域情勢


 (1) 

中南米政治情勢概観


民主主義の定着が進むに伴い、中南米地域が伝統的に抱える問題である貧困削減や社会格差に対する政治的関心が高まり、大多数の国は、教育や保健といった社会分野での取組を強化している。一部の国では、こうした動きに関連付けつつ資源分野での国家管理強化を進める動きが見られた。例えば、エクアドルでは、9月の国民投票の結果、天然資源に対する国家管理を強化する新憲法が可決された。

ベネズエラは、自国の保有する豊富な石油を基に、中米カリブ地域への影響力の拡大を進めており、同地域の多くの国がベネズエラとのエネルギー連帯協力であるペトロカリブ協定を締結している。また、ベネズエラが主導する米州ボリバル代替構想(ALBA)にホンジュラスが8月に正式参加したほか、ALBA諸国間における首脳レベルの交流が活発化した。

新興国として注目されているブラジルは、国連安全保障理事会常任理事国入りを目指すなど、国際社会での積極外交を進める一方で、政治面を含む中南米統合強化に主導的な役割を指向している。5月に南米12か国からなる南米諸国連合(UNASUR)の首脳会合を主催し、南米諸国連合設立条約が採択されたほか、12月には、中南米33か国が一堂に会する史上初の会合である第1回ラテンアメリカ・カリブ諸国統合開発首脳会合を主催した。

さらに、11月にペルーで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議を機に、ロシアや中国等域外各国が中南米に対する外交活動を活発化させた。


地域統合の動向


地域統合の動向


 (2) 

経済情勢概観


中南米経済は、2004年以降年平均約5%の成長を維持している。また、鉱物・エネルギー・食料資源に恵まれ、近年の一次産品価格の高騰も背景に、安定した経済発展の基盤となってきた。特に、ブラジル及びメキシコは、豊富な資源と米国との強固な経済関係を背景に、新興国として経済的存在感を高めている。

2008年前半は、資源価格が高く推移し、中南米地域では安定した成長を維持したが、同年後半に入ると、世界的な金融危機と景気の後退により、一次産品価格の下落、輸出の減少、海外からの送金の減少、海外資金の引き上げ等、これまでの経済成長を支えてきた諸要因が次々に悪化してきている。2008年中は、比較的潤沢な外貨準備、健全な国際収支や財政等を背景に当面の危機は回避できたが、2009年以降、実体経済への影響が深刻化することが懸念されている。


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