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 5.

大洋州


 (1) 

オーストラリア


日本とオーストラリアは、基本的価値と戦略的利益を共有するアジア太平洋地域における重要なパートナーである。近年、安全保障協力が急速に緊密化し、従来の貿易・投資関係にとどまらない「包括的な戦略的関係」と呼べる段階に入っている。

2008年は、ハイレベルの二国間会談が頻繁に実施された(6回の外相会談、6回の首脳会談(うち3回は電話会談))。6月のラッド首相の訪日では、オーストラリア新政権との間で、包括的な戦略関係を更に強化することで一致した。さらに、11月には第5回日豪会議が開催され、日豪両国の官民の有識者が様々な分野における日豪関係の強化に向けた施策について意見交換を行った。このような官民一体となった幅広い交流の存在も安定した日豪関係の維持に大きな役割を果たしていると言える。


写真・日豪首脳会談に臨む福田総理大臣とラッド・オーストラリア首相

日豪首脳会談に臨む福田総理大臣(右)とラッド・オーストラリア首相(左)(7月9日、北海道洞爺湖 写真提供:内閣広報室)


 イ  

安全保障協力

(イ) 二国間安全保障協力

日本とオーストラリアの安全保障協力は、2008年も引き続き着実に進展した。

6月のラッド首相訪日の際に、「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を実施するための「行動計画」の着実な実施を歓迎し、日豪二国間の安全保障協力を進めていくことを確認した。また、7月の日豪首脳会談では、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」を日豪共同イニシアティブとして設立することで一致し、10月に第1回会合が開催された。

12月には、東京で第2回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)が開催された。協議後発出された共同ステートメントにおいて両国は、将来の秘密情報保護に関する枠組みに含まれる基本原則を確認するとともに、防衛交流覚書の改定を含む防衛協力の進展を歓迎した。なお、「2+2」の開催は、日本にとっては米国に次ぎ2か国目、オーストラリアにとっては米国、英国に次ぎ3か国目となるものである。


(ロ) 日米豪戦略対話

2002年から開始された日米豪戦略対話の下、戦略的利益と基本的価値を共有する日米豪3か国は、地域の諸課題について率直な意見交換を行うとともに具体的な安全保障協力を推進してきている。

6月、高村外務大臣、スミス・オーストラリア外相及びライス米国国務長官が出席し、京都で第3回日米豪閣僚級戦略対話(TSD)が開催された。会合後、人道支援・災害救援分野における協力の促進を含む共同ステートメントが発出された。


 ロ  

経済関係

日本とオーストラリアの経済関係は、日本から工業品を輸出し、オーストラリアから資源、農産物等を輸入するという相互補完的なものである。2007年から日本はオーストラリアと経済連携協定(EPA)交渉を開始し、2009年2月末までに7回の交渉を行った。また、日豪両国の経済関係の緊密化に合わせて、2009年1月に新たな租税条約及び社会保障協定が発効した。



 (2) 

ニュージーランド


日本とニュージーランドは、互いにアジア太平洋地域の先進民主主義国の一員として基本的価値を共有しており、良好な二国間関係を維持している。

5月にはクラーク首相が訪日し、共同プレス・ステートメントに基づいて両国関係の更なる強化に向け協力していくことで一致した。また、両国は経済関係の緊密化の方途についても、経済関係強化のための作業部会及び高級事務レベル経済協議を通じた意見交換を行っている。

11月の総選挙の結果、これまで9年間続いたクラーク労働党政権に代わり、キー国民党政権が成立した。日本との間では、新政権発足後、11月に外相会談、12月に電話首脳会談が行われ、今後も両国関係の更なる強化に向け取り組んでいくことが確認された。


写真・日・ニュージーランド首脳会談に臨む福田総理大臣とクラーク・ニュージーランド首相

日・ニュージーランド首脳会談に臨む福田総理大臣(右)とクラーク・ニュージーランド首相(5月14日、東京 写真提供:内閣広報室)



 (3) 

太平洋島嶼(しょ)国


太平洋島嶼国は、親日的な国が多く、国際社会での協力や水産資源の供給の面で、日本にとって重要なパートナーである。2008年は、日本と太平洋島嶼国の関係が様々な要人往来を通じて強化された年であった。


 イ  

二国間関係

1月には鴨下一郎環境大臣がツバルを訪問、3月にはトンガ王国のセベレ首相が訪日、4月にはマーシャル諸島共和国のトメイン大統領が訪日した。このような機会に、二国間関係の更なる強化に加え、国連安保理改革や気候変動分野等において協力していくことが確認された。8月には皇太子殿下がトンガ王国トゥポウ5世の戴冠式(たいかんしき)に御参列のためトンガを訪問された。9月には森元総理大臣が特派大使としてミクロネシアを訪問し、日・ミクロネシア外交関係開設20周年記念式典に出席した。11月にはミクロネシアのモリ大統領が訪日し、麻生総理大臣と首脳会談を、また中曽根外務大臣と会談を行い、第5回太平洋・島サミットや経済協力等について話し合われた。


写真・昼食会に臨む中曽根外務大臣とモリ・ミクロネシア大統領

昼食会に臨む中曽根外務大臣(右)とモリ・ミクロネシア大統領(左)(11月10日、東京)


 ロ  

日本・太平洋諸島フォーラム関係

8月、太平洋諸島フォーラム(PIF)総会注1の直後に開催された第20回PIF域外国対話注2には有馬龍夫政府代表が参加し、日本とPIFとの共通の関心事項について協議した。10月、2009年5月に第5回日本・太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議(太平洋・島サミット)を北海道で開催することが決定された。政府は有識者の参加を得て、日本の今後の太平洋島嶼国に対する支援の在り方の検討を行っている。


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(注1) PIF加盟国・地域:オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、キリバス、マーシャル、ミクロネシア、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン、トンガ、ツバル、バヌアツ、クック諸島、ニウエの14か国2地域。
(注2) PIF域外国対話:PIFの前身の南太平洋フォーラム(SPF)(2000年10月から太平洋諸島フォーラム(PIF)に名称変更)が、1989年以来援助国を中心とする域外国との間で毎年実施しているものであり、日本は第1 回対話から継続してハイレベル代表団を派遣している。

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