模倣品・海賊版は、世界各国において広く流通している。これらは、技術革新等を妨げ、世界の経済成長に悪影響を及ぼすだけでなく、消費者の健康や安全までも脅かしている。日本企業も、海外市場における潜在的な利益の喪失も含め、深刻な悪影響を受けている。
このため、外務省では、内閣総理大臣を本部長とする知的財産戦略本部において2007年5月に改定された「知的財産推進計画」に沿って、様々な機会をとらえて知的財産権の保護強化及び模倣品・海賊版対策に関する施策に取り組んでいる。例えば、在外公館において知的財産担当官(注1)による支援を行うとともに、中国(注2)、韓国、米国(注3)、EU(注4)との間で個別の知的財産権保護の強化・協力に関する対話を続けている。また、経済連携協定(EPA)についても、シンガポール、マレーシア、チリ、タイ、フィリピン、インドネシアとの間で知的財産権に関する規定を含む協定に署名または締結したほか、ベトナム、インド、スイス、オーストラリアとの交渉においても、知的財産権に関する規定を盛り込む方向で交渉を行っている。また、知的財産権の国際的な保護及び協力を推進するため、日本が提唱した「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)」構想の早期実現に向けた取組を進めるとともに、G8サミット、APEC(注5)、OECD、WTO(TRIPS理事会(注6))や世界知的所有権機関(WIPO)等での議論に積極的に参画している。
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(注1) |
模倣品・海賊版被害を受けている日本企業を迅速かつ効果的に支援することを目的として、2005年3月、全在外公館において知的財産担当官を任命した。知的財産担当官の任務としては対策の助言や政府への照会・働きかけなどが期待されている。なお、この観点から、関係機関と在外公館の一層の連携を図るため、2007年6月に韓国で、また11月にはバンコクでASEAN各国とインドの知的財産担当官を対象にした知的財産担当官会議を開催した。 |
(注2) |
日中間では、10月の第6回日中経済パートナーシップ協議や、12月の第1回日中ハイレベル経済対話(閣僚級)において、中国における知的財産権執行強化の方策についても協議した。 |
(注3) |
日米間では、4月の日米首脳会談において、重要な経済問題に関する二国間及びグローバルな協力として、知的財産権の促進及び保護について協力を強化していくことを確認した。また、日米次官級経済対話及び「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」の対話等において、模倣品対策をはじめとする知的財産権保護強化のための両国間の緊密な協力関係を維持していくことを確認し、同イニシアティブについての日米両首脳への第6回報告書では上記協力関係を維持する旨記載された。 |
(注4) |
日・EU間では、2月の知的財産権に関する日・EU対話で模倣品・海賊版対策協力等について協議し、6月の日・EU定期首脳協議において今後の協力案件をまとめた「知的財産権の保護及び執行に関する日・EU行動計画」文書を作成した。 |
(注5) |
APECでは、9月のAPEC閣僚会議において、「特許取得手続きにおける協力イニシアティブ」の立ち上げ、「知的財産権の水際取締に関する革新的技術ベスト・プラクティス・ペーパー」の開発及び「知的財産権に関する能力構築ガイドライン」の作成等を歓迎し、APEC閣僚共同声明及びAPEC首脳宣言において、その旨言及された。 |
(注6) |
TRIPS理事会とは、WTO設立協定附属書1Cの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)の実施、特に加盟国による義務の遵守を監視し、同協定に関する事項の協議を行う場である。 |