目次 | 前の項目に戻る |  次の項目へ進む

 2.

NGOの活躍


【総論】


国際協力活動に携わる日本の非政府組織(NGO) (注1)は400以上あるといわれ、国際社会が自然災害や地域紛争など様々な課題に直面する中、地域社会や住民に密着したきめの細かい、迅速かつ柔軟な対応ができるNGOの重要性はますます高まっている。また、その活動範囲は、開発援助、緊急人道支援にとどまらず、人権、国際組織犯罪、環境、貿易、軍縮、国連等の分野にわたる。外務省としても、こうしたNGOの役割を重視し、NGOを「日本の顔の見える支援」を担う外交活動における重要なパートナーと位置付けて連携強化を図ってきている。



【各論】


 (1) 

開発援助分野


政府開発援助(ODA)を国民の理解と支援を得つつ実施するためには、国民の幅広い層が国際協力に参加する国民参加型援助、すなわちNGOとの連携が重要である。そうした考えの下、外務省は、ODAの政策立案や事業実施にNGOの人材やノウハウをいかすとともに、各NGOへの資金協力や活動の質や幅を深めるためのNGOの専門性や運営能力の強化に力を入れている。

日本のNGOが多く活躍する開発途上国では、大使館関係者、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)関係者とNGOとの対話促進や連携強化を目的とした「ODA大使館」制度が2002年度から開始され、これまでにアフガニスタン、カンボジア、バングラデシュ、ケニア等13か国で実施されている。

資金協力では、2002年度に日本NGO支援無償資金協力(注2)及び草の根技術協力(注3)を新設した。2007年度予算はそれぞれ28億円、18.7億円で、設立当初の20億円、10.9億円に比べて増加している。2007年の日本NGO連携無償資金実施額は、20か国44件34団体で約9億円(2007年12月末現在)となっており、学校の建設や医療協力、母子保健、被災者支援、農村開発、地雷・不発弾除去等の事業が行われている。

また、津波や地震のような大規模自然災害や地域紛争の際にNGOが迅速に緊急人道支援活動を行えるように、2000年8月にNGO、政府、経済界等が協力してジャパン・プラットフォーム(JPF)を設立した。現在26のNGOが参加しており、2005年のパキスタン地震の際に支援を行い、また、2006年はレバノン、東ティモール及びスーダンで国内避難民支援を行った。2007年も引き続きスーダンでの帰還民支援を行うとともに、イラク難民・避難民支援やペルー地震の被災者支援等を行っている。

一方、日本のNGOの多くは、主要先進国のNGOと比べ財政的・組織的基盤が十分ではないことから、専門性や組織運営能力の強化が課題である。そのため、外務省やJICA、国際開発高等教育機構(FASID)は、様々なプログラムを実施してNGOの基盤強化を支援している。外務省では2007年度にNGO研究会を、[1]保健分野におけるNGOと国際機関との連携、[2]ネットワークNGOの在り方、[3]プロテクション(援助の受益者に対する様々な権利保護)の3つのテーマで開催したほか、日本NGO連携無償効果検証プログラム、NGOを対象とする海外実務研修である長期スタディ・プログラム及びNGOの信用向上のためのNGOアカウンタビリティー能力強化セミナー、日本のNGOのための健康・安全対策ハンドブックの作成・調査も行った。また、NGO相談員(国民、NGOの相談先として政府が委嘱)を17名配置して各種照会に対応したほか、NGO専門調査員(NGOの専門性を高めるためNGOに派遣する者)11名を11団体に派遣した。

外務省は、NGOとの対話促進のため、1996年以来、NGO・外務省定期協議会を実施している。2002年度からはこれが全体会議(年1回)、ODA政策協議会と連携推進委員会の2つの小委員会(各年3回)に改められた。また、外務省は、2002年11月にNGO担当大使を設置した。同大使はNGOと外務省の意見交換・情報交換の際の双方の橋渡し役を務めている(注4)


写真・インドの子供たちへの聞取り調査を行う(特活)地球市民ACTかながわ/TPAKのスタッフ(JICA草の根技術協力)

インドの子供たちへの聞取り調査を行う(特活)地球市民ACTかながわ/TPAKのスタッフ(JICA草の根技術協力)
(写真提供:(特活)地球市民ACTかながわ/TPAK)


写真・パキスタンの学校建設地で基礎工事を確認する(特活)ジェンのスタッフ(外務省日本NGO連携無償資金協力)

パキスタンの学校建設地で基礎工事を確認する(特活)ジェンのスタッフ(外務省日本NGO連携無償資金協力)
(写真提供:(特活)ジェン)



 (2) 

人権分野


人権分野では、政府が主要各人権条約の各委員会(注5)に定期的に提出する政府報告の作成に当たり、NGOとの対話を実施している。

児童の権利条約関連では、近年、グローバル化や情報通信の発展により児童買春や児童ポルノ等、児童の性的搾取の問題が深刻化してきている。このような分野でもNGOが果たす役割は大きく、政府はNGOと協力して問題対処に当たっている。また、2月末から3月初めに開催された第51回国連婦人の地位委員会への政府代表団にはNGO関係者が顧問として参加し、政府とNGOの橋渡し役として活動した。一方、9月に政府が署名を行った障害者権利条約(仮称)に関しては、障害者 NGOとの間で意見交換を実施し、締結に向けた検討を進めている。秋の第62回国連総会では、NGOの代表が政府代表団に加わり、人権・社会分野を扱う国連総会第3委員会の議論に積極的に参加した。



 (3) 

国際組織犯罪分野


国際組織犯罪分野では、人身取引問題についてNGOと意見交換している。政府は内閣官房に関係省庁連絡会議を設置し、包括的な人身取引対策行動計画の下、諸政策を実施しており、その枠組みで、定期的にNGOとの協議の場を設け、現状把握や保護策について率直な意見交換を行っている。2007年は5月に開催した。



 (4) 

環境分野


環境分野では、「アジア協力対話」(ACD)の枠組みにおいて、2004年以降「環境教育推進対話」を毎年実施している。毎回、NGO、民間企業、地方自治体、教育関係者が出席しているほか、アジア各国の政府関係者を招聘し、環境教育についての意見交換を行っている。第1回から第3回までは、「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」につき包括的な議論を実施してきた。2007年6月に北九州で開催された第4回会合では、地球温暖化対策としての環境教育というテーマの下、アジア地域から15か国約60名が出席し、各国における地球温暖化の影響とその対策、特に環境教育が地球温暖化対策において果たす役割に焦点を当て、アジア諸国の取組について有意義な意見交換が行われた。



 (5) 

貿易分野


貿易面では、現在進められている世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉を成功に導くためには、NGOを含む民間団体等の理解と協力が不可欠である。外務省は2007年5月に交渉の現状及び今後の見通し等に関するNGO等との意見交換会を実施するなど、NGOを含む民間団体等との連携を図ってきている。



 (6) 

軍縮分野


対人地雷対策等の軍縮分野では、外務省は政府の取組等に関してNGOとの意見交換会を開催している。また、アフガニスタンやカンボジア等、地雷被害国の現場で活動する日本のNGOに対し、日本NGO連携無償資金協力を通じて、地雷対策事業活動を資金面で支援している。2007年12月には、日本の対人地雷禁止条約(オタワ条約)署名10周年を記念したシンポジウムを、「難民を助ける会」と協力して実施した。



 (7) 

国連分野


国連に関しては、3月と8月に外務省はNGOと共に「国連改革に関するパブリック・フォーラム」を共催し、国連改革や気候変動など主要課題につき、政府側と市民社会の間で建設的な意見交換を行った。また、外務省は、国連が提唱した人権・環境・労働・腐敗防止分野の原則を支持する50以上の日本企業が参加する「グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク」の活動に協力してきている。



-
(注1) 国際協力を主活動とする非政府・非営利の市民団体。
(注2) 2007年度から「日本NGO支援無償資金協力」は「日本NGO連携無償資金協力」と名称を変更(照会先:外務省民間援助連携室 電話:03-5501-8361)。
(注3) 草の根技術協力は、日本のNGO等とJICAが、開発途上国の地域住民の生活向上に直接役立つ技術移転事業を協働して実施するもの。
(注4) NGOの照会や要望などを、外務省を窓口として一元的に受け付け、遅滞なく関係部局に伝えるため、NGO担当大使を長とするNGO連絡センターが設けられている(外務省国内広報課内 NGO連絡センター 〒100-8919東京都千代田区霞が関2-2-1 電話:03-3580-3311(内線4873)、(直通)03-5501-8046)。
(注5) 主要人権条約の締結国による履行状況を監視する、専門家からなる委員会。

テキスト形式のファイルはこちら

▲このページの上へ