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地域安全保障 |
アジア太平洋地域では、政治・経済体制や文化・民族の多様性等を背景として、欧州における北大西洋条約機構(NATO)のような多国間による集団防衛的な安全保障機構は発達せず、米国を中核とした二国間の安全保障取極の積み重ねを基軸として地域の安定が維持されてきた。日本は、自国を取り巻く安定した安全保障環境を実現し、アジア太平洋地域の平和と安定を確保していくためには、この地域における米国の存在と関与を前提としつつ、二国間及び多国間の対話の枠組みを重層的に整備し、強化していくことが現実的で適切な方策であると考えている。
二国間の枠組みとして、日本は、近隣諸国等との間で、安全保障に関する対話や防衛交流を行い、相互の信頼関係を高め、安全保障分野における協力関係を進展させるよう努めている。
また、多国間の枠組みとして、日本はアジア太平洋地域の主要国が参加する全域的な政治・安全保障の枠組みであるASEAN地域フォーラム(ARF)を活用している。
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ASEAN地域フォーラム(ARF)の概要 |
ARFは、[1]信頼醸成の促進、[2]予防外交の進展、[3]紛争へのアプローチの充実という3段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指している。これまでの会合を通じて、参加国自身を当事者とする問題(朝鮮半島情勢、ミャンマー情勢等)を含めて、率直に意見交換する慣習が生まれつつある。また、参加国が地域の安全保障に関する自国の情勢認識等を作成して、ARF議長国がとりまとめる「年次安全保障概観(ASO:Annual Security Outlook)」の刊行やテロ対策等の各種会合の開催などの具体的な取組を通じ、参加国間の信頼関係の醸成に大きく貢献している。第2段階である予防外交の進展についても具体的な取組に向けて議論されており、ARFはアジア太平洋地域における政治・安全保障に関する唯一の政府間対話と協力の場として、緩やかではあるが着実に進展している。
8月に行われた第14回閣僚会合(於:マニラ)では、27番目のメンバーとしてスリランカが新たに参加した。また、議長声明において、朝鮮半島の非核化がアジア太平洋地域の平和と安定の維持のために極めて重要であることが強調された。また、国際テロの予防・抑止・撲滅、海上の安全、大量破壊兵器等の拡散問題、災害救援等に協力して取り組むことの重要性等が確認され、「異文明間の対話の促進に関するARF声明」、「国連安保理決議第1540号(注1)の各国の国内実施支援に関するARF声明」、「災害救援協力に関するARF一般ガイドライン」等が採択された。
第14回ARF閣僚会合に出席する麻生外務大臣(8月2日、フィリピン・マニラ) |
ASEAN地域フォーラム(ARF)
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ARFの将来の方向性 |
ARFは「信頼醸成」から「予防外交」の段階に緩やかに前進しているが、ARFが予防外交に本格的に取り組むためにはARFの機能強化が重要であることが各国から指摘されている。このような問題意識から、ARF議長の役割強化のため、第14回ARF閣僚会合においては「ARF議長フレンズ(注2)の付託事項」が採択された。
ARFの3段階アプローチ
(注1) | 非国家主体への大量破壊兵器等の拡散を防止することを目的としており、その内容は、すべての国連加盟国に、大量破壊兵器等の拡散を禁ずるための法的措置をとり、 厳格な輸出管理を制定することなどを求めるもの。 |
(注2) | ARF議長フレンズ:特定の案件につき、議長国を他の特定国が補佐する仕組み |