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【各論】


 1.

アフリカ各地域情勢


 (1) 

スーダン


スーダン西部のダルフール地域情勢は、7月のUNAMIDの設立決定など一定の進捗が見られたが、現地の人道・治安状況の回復など課題も山積している。一方、南北関係(注7)については、紆余曲折(注8)を経つつも南北包括和平合意(CPA)の履行が進展しており、ダルフール地域を含むスーダン全域の安定のためにも、着実なCPAの履行を支える必要がある。スーダンの不安定化は周辺地域、ひいてはアフリカ全体にまで影響を及ぼし得るとの認識の下、日本はダルフール問題の平和的解決と南北和平の進展に向けて取り組んでおり、9月にニューヨークで開催されたダルフール問題に関する閣僚級会合には小野寺外務副大臣が、10月にシルテ(リビア)で開催されたダルフール和平会合には佐藤啓太郎アフリカ紛争・難民問題担当大使がそれぞれ出席し、同問題に対し積極的に関与する姿勢を示した。


写真・ダルフール問題に関する閣僚級会合においてコナレ・アフリカ連合委員長と握手する小野寺外務副大臣

ダルフール問題に関する閣僚級会合においてコナレ・アフリカ連合委員長(右)と握手する小野寺外務副大臣(左)(9月21日、米国・ニューヨーク)


アフリカにおける主な紛争(2007年12月現在)

アフリカにおける主な紛争(2007年12月現在)


 (2) 

東部


ソマリアでは、8月、暫定連邦政府による和平会合が開催されたが、対立するイスラム法廷連合等はこれに出席せず、9月にエリトリアにて「ソマリ解放・再生会議」を開催するなど、両勢力間の隔たりは大きく、和平実現のめどは立っていない。エチオピアでは国民和解に進展(注9)が見られ、10月にはギルマ大統領が再選を果たした。エチオピア・エリトリア国境問題は、11月末の国境委員会による国境の確定に関する決定の効力を巡り両国の見解に相違があり、事態打開には至っていない。ケニアでは12月に実施された大統領選挙にてキバキ大統領が再選されたと発表されたが、その後投票結果を巡り、与野党の主張が対立し暴動が発生した。また、7月にはケニア、タンザニア及びウガンダの3か国が原加盟国であった東アフリカ共同体(EAC)に、ブルンジ及びルワンダが正式加盟した。



 (3) 

南部


政治面では、9月に、アンゴラで内戦終了後初となる2008年の国会議員選挙に向けて、選挙登録が無事実施された。また南アフリカ共和国では、12月に開催された与党アフリカ民族会議(ANC)全国大会にてジェイコブ・ズマ副総裁(前副大統領)が総裁に選出された。経済面では、10月、日本経団連が政府関係者を含む50名からなるアンゴラ・南アフリカ経済調査ミッションを派遣し、アンゴラにおける官民連携の方途につき調査するとともに、南アフリカ共和国政府の進める経済政策の実情についての調査等を行った。また、11月には甘利経済産業大臣が経済産業大臣として初めて南アフリカ共和国及びボツワナを訪問し、鉱物資源エネルギー分野を中心とした経済関係強化に努めた。アフリカ諸国からは、1月にゲブーザ・モザンビーク大統領、8月にモシシリ・レソト首相、10月にはポハンバ・ナミビア大統領が訪日した。


写真・会談に臨む福田総理大臣とポハンバ・ナミビア大統領

会談に臨む福田総理大臣(右)とポハンバ・ナミビア大統領(左)(10月16日、東京 写真提供:内閣広報室)



 (4) 

中部


8月下旬よりコンゴ民主共和国東部で武力衝突が頻発し、情勢の悪化(注10)が見られた。11月、国際社会の支援を受けて、同国領内のルワンダ反政府勢力の武装解除に向けた同国とルワンダとの合意が成立し、その実施が焦点となっている。また、チャド、中央アフリカ、スーダンの国境地帯においては、ダルフール紛争の影響が波及し、治安・人道状況が極度に悪化している。10月に国連安保理は、同地帯へのEU軍、国連警察官などの展開を決定した(注11)が、展開準備に遅延が生じている点が懸念される。



 (5) 

西部


2007年には、モーリタニア及びシエラレオネでの大統領選挙が平穏に実施されるなど、紛争の頻発した西部地域での安定に向けた歩みが見られた。その一方で、ナイジェリア大統領選挙時の混乱、コートジボワール大統領選挙の延期、ギニアでの政情不安など、引き続き不安要素は多い。二国間関係では、3月のジョンソン=サーリーフ・リベリア大統領の来日を皮切りに、4月に浜田昌良外務大臣政務官がモーリタニアを、7月~8月にかけて岩屋外務副大臣がベナンを、浜田外務大臣政務官がシエラレオネを、12月に宇野外務大臣政務官がセネガル及びブルキナファソを訪問するなど、頻繁に要人が往来し関係強化が図られた。


写真・ポルトノボ市保健センターを視察する岩屋外務副大臣

ポルトノボ市保健センターを視察する岩屋外務副大臣(8月3日、ベナン・コトヌ)


(注7) 2005年1月に成立した南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)により、20年以上にわたった南北内戦は終了し、同年7月には南北双方が参加する統一政権(現政権)が誕生した。
(注8) 10月、CPA履行の遅滞を巡る南北間の対立が一時的に顕在化したものの、12月中旬にアビエ問題を除くCPA履行促進につき政治合意が成立。履行促進に向けた新たなタイムスケジュールが示された。
(注9) 7月、有罪判決を受けていた野党指導者等に対する恩赦の付与が行われた。
(注10) コンゴ民主共和国領内に潜伏しているルワンダ反政府勢力の武装解除等を巡り、同国政府軍とルワンダ人系民兵の間で衝突が頻発している。
(注11) 国連安保理決議第1778号は、EU軍、国連中央アフリカ・チャド・ミッション(MINURCAT)、人道的保護のためのチャド警察などの「多面的プレゼンス」を1年間の予定で派遣することを決定した。

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