第3節中南米 |
1. |
政治経済情勢概観 |
(1) | 政治経済情勢 |
中南米地域で近年実施された一連の大統領選挙では、民主的な手続きを経て新政権が誕生し、地域の歴史的課題である貧困削減や貧富の格差解消の実現を政策の重要課題として取り組んでいる。
また、中南米地域は、5.6億人の人口、2.9兆米ドル(ASEAN10の約2.8倍)の域内総生産を有し、経済成長率も2007年は5.6%に達すると予想され、経済的な存在感を一層高めている。さらに、資源・エネルギー供給地としての注目度も高まっている。
地域統合については、南米南部共同市場(MERCOSUR(メルコスール))、中米統合機構(SICA)、カリブ共同体(CARICOM(カリコム))が着実に深化する一方で、南米諸国連合(UNASUR)の設立、ベネズエラによる米州ボリバル代替統合構想(ALBA)(注1)の推進や南米銀行設立等、新たな動きも見られた。
また、域外国との連携強化についても、米国との二国間の自由貿易協定(FTA)締結を進めるなど積極的な動きが見られた。
(2) | 高まる国際社会での存在感 |
ブラジル、メキシコが開発途上国のリーダーとして国連、WTOの場で役割を果たす一方で、小型武器の非合法取引への規制におけるコスタリカや、国連平和維持活動(PKO)への参加実績を誇るウルグアイのように、顕著な活躍を見せる中小国もある。さらに、日本が特に積極的に取り組んでいる国連安保理改革、人間の安全保障、核不拡散、環境・気候変動問題に対する中南米諸国の関心は高い。
中南米のGDP成長率
地域統合の動向
2. |
日本の対中南米外交 |
日本は、民主主義・市場経済が定着し、安定的発展を遂げる中南米諸国を、「共益」を語れるパートナーと位置付けている。150万人を超す在中南米日系人、約36万人の在日中南米出身者の存在や、長年にわたる人的交流、貿易・投資、ODA等を通じて培われた信頼関係をいかし、「経済関係の強化」、「地域の安定的発展への貢献」、「国際社会での協力」を3つの柱として、中南米地域との一層の関係強化を図っていく方針である。7月には麻生外務大臣が対中南米外交に関する政策スピーチを実施し、8月には、メキシコ、ブラジルを訪問した。
(注1) | チャベス・ベネズエラ大統領が、米国が積極的に推進していた米州自由貿易地域(FTAA)に対抗して提唱した、中南米・カリブ諸国の協力・連帯・補完の原則を基盤とする統合構想。 |