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 6.

地域協力・地域間協力


 (1) 

東アジア首脳会議(EAS)


2005年に始まったEASは、首脳のイニシアティブの下、地域共通の課題に対する具体的協力を進展させることで協力の機運を一層高め、将来の「東アジア共同体」を形成していく上で重要な役割を果たす枠組みの一つとして着実に発展している。  世界的なエネルギー需要の高まりや原油高に対して懸念が広まる中、1月にフィリピンのセブで開催された第2回EASでは、エネルギー安全保障を主要テーマに各国首脳が大局的に議論した。安倍総理大臣からは、[1]省エネの推進、[2]バイオマスエネルギーの推進、[3]石炭のクリーンな利用、[4]エネルギー貧困の解消からなる具体的な協力イニシアティブを表明し、各国の高い評価を受けた。また、各国の自主的な省エネ目標・行動計画の設定、バイオ燃料の利用促進等を内容とする「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」が採択された。EASには、急速な経済発展によりエネルギー消費量が急増する中国やインドも参加しており、この枠組みにおいて省エネ目標の設定などで一致し、エネルギー協力を促進したことの意味は大きい。

そのほか、安倍総理大臣は、今後5年間、EAS参加国を中心に毎年6,000人程度の青少年を日本に招聘する350億円規模の「21世紀東アジア青少年大交流計画」(JENESYS Programme)をはじめとする一連の具体的な東アジア協力を表明し、着実に実施されている。

エネルギー協力を中心に高まった東アジア協力の機運を背景に、11月にシンガポールで開催された第3回EASでは、地球規模の課題であるエネルギー、環境、気候変動及び持続可能な開発が主要なテーマとして議論された。福田総理大臣は、東アジアにおける「持続可能な社会」の実現に向けて、[1]低炭素・循環型社会の構築、[2]豊かで多種多様な自然との共生、[3]将来に向けた環境保全の知的インフラづくりの3つの柱に基づく日本の環境協力イニシアティブを表明した。また、EAS参加国首脳は、温室効果ガス削減に係る2013年以降のより実効的な国際的取決めに向けたプロセスへの積極的な参加、エネルギー集約度の顕著な削減や、森林面積増加目標、EAS環境大臣会合の開催などを内容とする「気候変動、エネルギー及び環境に関するシンガポール宣言」を採択し、気候変動・環境問題に対して東アジア諸国が一致して取り組むことを確認した。これによって、G8北海道洞爺湖サミットの主要テーマの一つである環境・気候変動問題に関する国際社会の議論に貢献する成果を得ることができた。

経済面の協力に関しても、東アジア包括的経済連携(CEPEA)構想の民間研究が進展するとともに、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)の正式設立について一致した。福田総理大臣は、EASの下でビジネス界との対話の機会を設けることを提案した。加えて今後、EAS首脳間で一致したことを着実にフォローアップするためのメカニズムを検討していくこととなった。


写真・「21世紀東アジア青少年大交流計画」(JENESYS Programme)

「21世紀東アジア青少年大交流計画」(JENESYS Programme)の下、既に中国から約1,900名、韓国から約600名の高校生等を招聘した。ASEAN諸国等からは、2007年11月から順次実施し、同年内に約1,100名を招聘した。
(大学生ボランティアとよさこいを踊るASEANからの留学生たち)


第3回EASにおける日本の環境協力イニシアティブ


- 1.低炭素・循環型社会の構築 ―温暖化・公害対策と経済的自立の両立― -  
(1) 「クールアース50」の下で、2007年1 月に表明した省エネ等の協力を推進するとともに、温室効果ガスの排出の抑制と経済成長の両立を目指す開発途上国に対しては、新たな「資金メカニズム」により、政策支援を行い、気候変動の緩和、適応、クリーンエネルギーの利用促進に向け協力。
(2) 循環型社会構築への協力
「アジア3R研究・情報ネットワーク」を構築し、政策・経験の共有を通じて各国の3Rの取組 を支援。
3R及び廃棄物の適正処理の推進に向け、アジア各国から今後5年間で500名以上の研修員を受入れ
(3) 水質汚濁、大気汚染等の公害対策のため、今後5年間で、20億米ドル規模の資金協力及び500名以上に研修を実施

- 2.豊かで多種多様な自然との共生 -  
(1) 森林の保全
日本の観測衛星等の情報を活用した東アジアの森林資源管理を支援。
世界銀行の「森林炭素パートナーシップ基金」に最大で1 千万米ドルを拠出。この基金を通じ、温室効果ガスの排出の抑制と経済成長の両立を目指すアジア地域等の開発途上国の豊かな森林の保護が図られることを期待。
(2) サンゴ礁保全のため、各国と協力して「重要サンゴ礁ネットワーク戦略」を策定。
(3) 日・ASEAN間で「環境対話」を実施し、その中で、日・ASEAN統合基金(JAIF)を優先的に活用して以下を含む協力を推進。
「ASEAN持続的環境都市賞」への支援
アジアの豊かな自然と開発を両立させるエコ・ツーリズムの促進
ASEAN域内の生物多様性保全に向けた事業への支援

- 3.将来に向けた環境保全の知的インフラづくり -  
(1) 温室効果ガス観測技術衛星を2008年度に打ち上げ、観測データを各国に提供。
(2) アジアの環境リーダーを育成するため、日本国内の大学院と協働して、東アジアにおける環境分野での大学院間のネットワークを構築。
(3) 「21世紀東アジア青少年大交流計画」(JENESYS Programme)を活用し、訪日するアジアの高校生に日本の環境対策の現場を体験する機会を設けるとともに、環境関連分野を履修する大学院生を今後4年間で500人以上招聘し、環境教育に貢献。
(4) 深刻な環境汚染の現場に、要請を受け直ちに赴き、対応策の検討を東アジア各国と共に行う環境専門家チームを形成。


 (2) 

ASEAN+3(日本・中国・韓国)


アジア通貨危機を直接の契機として誕生したASEAN+3では、10年の歴史の中で、貿易・投資、金融から環境や国境を越える犯罪まで、幅広い分野での協力が進展してきた。

1月の第10回ASEAN+3首脳会議では、女性、貧困対策、災害対策、鉱業分野の4分野を追加することが確認され、協力分野は20分野、協議メカニズムは56にまで拡大した。7月、日本は、「女性と貧困撲滅に関するASEAN+3 人間の安全保障シンポジウム」を東京において開催した。

また、2007年はASEAN+3協力の開始から10年目の節目の年であり、この機会に、これまでの協力実績を回顧するとともに今後の協力の大局的方向性を打ち出すため、11月の第11回ASEAN+3首脳会議で、「東アジア協力に関する第二共同声明」が採択された。この文書は、今後のASEAN+3協力を開放性、透明性、普遍的価値を基礎に進めることを確認した。


東アジア地域協力の進展

東アジア地域協力の進展


 (3) 

日中韓協力


地理的に近接し、歴史的に深いつながりを有し、世界経済の約6分の1を占める日中韓3か国の関係は、近年経済面や文化面をはじめとして大きく進展している。日中韓協力の一層の促進は、東アジア地域、ひいては世界の平和と繁栄に向けて大きな意義を有している。2007年には、6月に韓国・済州で日中韓外相会議が初めて独立開催されたほか、貿易・投資、金融、観光、環境、保健、科学技術等の分野で閣僚会合が開催された。また、政府間協議において、日中韓投資協定の締結や知的財産権保護をはじめとするビジネス環境整備等の分野について引き続き議論が行われた。

1月14日にフィリピン・セブで開催された第7回日中韓首脳会議では、3か国の首脳が、未来志向の日中韓三国間協力の大局的方向性について議論するとともに、北朝鮮問題をはじめとする地域・国際情勢について議論し、その成果を「共同プレス声明」として発出した。

11月20日にシンガポールで開催された第8回日中韓首脳会議では、三国間協力の一層の強化等について率直な議論が行われ、今後三国間で推進していく具体的措置として、三国間協力推進のための「行動計画」の策定、2008年の三国外相会議及び外務次官級協議の日本開催や、アフリカに関する三国政策協議の立ち上げをはじめとする13の具体的措置について確認した。また、これらの措置に加え、今後、日中韓首脳会議を、ASEAN関連首脳会議とは独立して、三国のいずれかで開催することで一致し、適当な時期に開催する方向で検討していくこととなった。


写真・第8回日中韓首脳会議での福田総理大臣、盧武鉉・韓国大統領、温家宝・中国国務院総理

第8回日中韓首脳会議での福田総理大臣(右)、盧武鉉・韓国大統領(中央)、温家宝・中国国務院総理(左)(11月20日、シンガポール 写真提供:内閣広報室)



 (4) 

アジア太平洋経済協力(APEC)


APECは、アジア太平洋地域の21か国・地域から構成されており、日本の貿易量及び直接投資の約7割を占めるAPEC域内での経済面での協力と信頼関係の強化は極めて重要である。APEC首脳・閣僚会議は、経済問題にとどまらず、安全保障問題等の国際社会の主要な関心事項につき、首脳・閣僚間で率直な意見交換を行う有意義な場となってきている。

9月にオーストラリアのシドニーで開催された首脳会議においては、気候変動問題がAPEC地域においても非常に重要な課題であることが確認され、「気候変動、エネルギー安全保障及びクリーン開発に関するシドニーAPEC首脳宣言」が採択された。また、WTOドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉の早期妥結に向けて、WTO交渉についての独立声明が採択された。さらに、前年の首脳会議の指示を受け、長期的展望としてのアジア太平洋の自由貿易圏構想を含めた、地域経済統合を促進する方法についての報告書が承認された。

さらに、APEC首脳会議に先立ち開催された閣僚会議においては、今後2010年までに貿易取引費用を更に5%削減することを目標とする「貿易円滑化行動計画(TFAP2)」が歓迎された。また、電子商取引、原産地規則、衛生・植物検疫措置(SPS)の3分野に関し、自由貿易協定(FTA)交渉の参考となる具体的措置を列挙したモデル措置が承認された。このほか、構造改革実施のための首脳の課題(LAISR)で示された5つの優先分野についての具体的な作業工程表が承認された。



 (5) 

アジア欧州会合(ASEM)


ASEMは、アジアと欧州の関係を強化することを目的として1996年に開始された。政治、経済、文化・社会等の3つの柱を中心として、首脳会合や各種閣僚会合等を通じてアジアと欧州の対話と協力を深める活動を行っている。

5月28日~29日にドイツで開催された第8回外相会合は、アジア側からインド、パキスタン、モンゴル及びASEAN事務局、欧州側からブルガリア、ルーマニアの新規参加によりASEMが拡大して(計43か国、2機関)初めての外相会合であり、国際社会全体の安定にとって重要な諸課題(アフガニスタン、朝鮮半島、中東情勢、テロ対策、気候変動問題など)につき、活発な議論が行われ、ASEMの新たな10年に向けて良好なスタートが切られた。本会合において麻生外務大臣は、テロ対策について基調発言を行ったほか、アフガニスタン、イラク、朝鮮半島、エネルギー・気候変動等について積極的に発言した。

外相会合に先立つ5月15日~16日、日本はASEM第5回テロ対策会議(於:東京)を主催し、テロ過激化への対処、テロ対処能力の向上、国連や地域テロ対策機関との連携といった課題をとりあげ、集中的に議論を行った。

そのほか、4月にデンマークにおいてASEM第3回環境大臣会合が行われ、10月には中国においてASEM中小企業担当閣僚会合がASEMの枠組みで初めて開催された。


写真・ASEM第8回外相会合(1)
写真・ASEM第8回外相会合(2)

ASEM第8回外相会合(5月28日~29日、ドイツ・ハンブルク)


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