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 5.

大洋州


 (1) 

オーストラリア


日本とオーストラリアは、基本的価値と利益を共有するアジア太平洋地域における重要な戦略的パートナーである。近年では、東アジア地域のテロ対策、大量破壊兵器等の不拡散、イラク復興支援等の取組における協力のほか、日米豪戦略対話の実施など、安全保障分野における協力関係が急速に緊密化し、日豪関係は貿易経済関係中心から政治安全保障面を含む「包括的な戦略的関係」という新たな段階に入った。

3月、安倍総理大臣とハワード首相は、安全保障分野におけるこれまでの日豪協力の実績を踏まえ、「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発出し、両国間の協力を一層強化する基盤を構築した。6月には、同共同宣言に基づき、初の日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を東京で開催し、日豪両国の外務大臣及び防衛担当大臣の間で、両国共通の戦略的課題について協力を強化することで一致した。9月、安倍総理大臣とハワード首相は、実務的な安全保障協力を促進するための具体的措置を伴う「行動計画」を承認し、これを着実に実施していくことで一致した。同月、安倍総理大臣、ハワード首相及びブッシュ・米国大統領は、日米豪3か国の首脳として初めて一堂に会し、アジア太平洋地域及び国際社会の共通の関心事項について意見交換し、共に緊密に協力していくことで一致した。

さらに、気候変動とエネルギー安全保障に関する更なる協力のための日豪共同声明を発出(9月)し、新たな気候変動枠組みに向けた協力や温室効果ガスを削減する革新的技術の開発・普及、衛星を用いた森林監視に関する協力などを確認した。

日本は、オーストラリアから鉄鉱石、石炭、天然ガス、ウラン、小麦など資源・エネルギーの多くを輸入しており、これらを安定的に供給する同国との経済関係を一層強化するため、経済連携協定(EPA)交渉を開始した。また、2月には日豪社会保障協定の署名を行い、年金の二重加入や保険料掛け捨ての問題が解消されることになった。8月には、日豪間の二重課税の回避や、進出企業に対する税の軽減などを規定する日豪租税条約の改正について基本合意した。このほかにも、福田総理大臣は10月に東京で開催された日豪経済合同委員会会議の特別スピーチにおいて、オーストラリア経済界から若手の社会人を50名、日本に招聘する計画を発表した。

内政においては、11月、総選挙が実施され、ラッド党首率いる野党労働党が、ハワード首相率いる与党保守連合を破り、11年半ぶりに労働党政権が誕生している。


写真・日豪首脳会談での安倍総理大臣とハワード・オーストラリア首相

日豪首脳会談での安倍総理大臣(右)とハワード・オーストラリア首相(左)(9月9日、オーストラリア・シドニー 写真提供:内閣広報室)


写真・日米豪首脳朝食会での安倍総理大臣、ハワード・オーストラリア首相、ブッシュ・米国大統領

日米豪首脳朝食会での安倍総理大臣(左)、ハワード・オーストラリア首相(中央)、ブッシュ・米国大統領(右) (9月8日、オーストラリア・シドニー 写真提供:内閣広報室)



 (2) 

ニュージーランド


ニュージーランドは、様々な地域的、国際的フォーラムで積極的な役割を演じており、同国との緊密な協力は国際社会の安定と繁栄にとって重要である。9月、町村孝外務大臣とピーターズ外相が会談し、二国間関係の強化のほか、気候変動問題、国連改革等アジア太平洋地域や国際社会が直面する問題について意見交換を行った。

両国外相会談、高級事務レベル経済協議を経て設置された両国の経済関係強化のための作業部会が開催され、科学技術、気候変動、投資促進、税関当局の対話、農業(例:研究協力、人材交流)などの分野での協力や、ニュージーランドの電力料金、労働査証に関する問題などを協議した。

ニュージーランドでは、経済構造を多角化し、知識産業型へ変革する方向で、バイオテクノロジー、情報通信や映画、デザインといった創造的産業の振興に力を入れており、日・ニュージーランド間の経済関係の強化が今後の課題となっている。この文脈で、両国の関係を更に強固なものとするため、日本は、ニュージーランド経済界の若手社会人50名を日本に招聘する計画を発表した。


写真・日・ニュージーランド外相会談での町村外務大臣とピーターズ・ニュージーランド外相

日・ニュージーランド外相会談での町村外務大臣(右)とピーターズ・ニュージーランド外相(左)(9月6日、オーストラリア・シドニー)



 (3) 

太平洋島嶼国


島嶼国との関係では、10月17日から19日にかけて、PIF域外国対話(注18)が行われた(於:トンガ)。日本からは有馬龍夫政府代表が出席し、「クールアース50」の提案、エネルギー供給安定や感染症対策等のためのODAを通じた各種プロジェクトの紹介を行ったほか、PIF諸国との漁業分野での協力関係への謝意表明を行った。また、この機会をとらえ、大洋州諸国の要人との二国間会談を多く実施した。

1月、北川知克環境大臣政務官が国際サンゴ礁イニシアティブ総会開催に向けた関係機関との調整・意見交換のためパラオを訪問、5月、浜田昌良外務大臣政務官が特派大使として、故マリエトア・タヌマフィリ2世前元首の国葬参列のため、サモアを訪問した。

12月、第1回アジア・太平洋水サミットに参加するため、モリ・ミクロネシア連邦大統領、イエレミア・ツバル首相ほか多くの島嶼国首脳が訪日し、モリ大統領及びイエレミア首相は、福田総理大臣と首脳会議を行った。



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(注18)  1.  PIF域外国対話は、PIFの前身の南太平洋フォーラム(SPF)(2000年10月から太平洋諸島フォーラム(PIF)に名称変更)が、1989年以来援助国を中心とする域外国との間で毎年実施しているものであり、日本は第1回対話から継続してハイレベル代表団を派遣している。なお、日本は、3年に1度、島嶼国との関係を強化し、太平洋地域の発展に共に取り組むため、1997年に第1回を、その後3年に1度計4回「太平洋・島サミット」を開催しているが、PIF域外国対話では、同サミットで構築された日・PIFの協力枠組みやPIF側の取組に沿った島嶼国の自助努力に対する日本の支援策等についてのフォローアップを行っている。
 2.  PIF加盟国・地域:オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ、クック諸島、ニウエ
 3.  PIF域外国参加国:日本、米国、英国、フランス、カナダ、中国、欧州連合(EU)、韓国、マレーシア、フィリピン、インドネシア、インド、イタリア

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