第4章 国際社会で活躍する日本人と外交の役割


(2)その他の分野

 人権分野では、主要人権6条約の実施に関連して多くのNGOが条約の普及等の活動を行っており、政府は人権条約委員会(注6)に定期的に提出する政府報告の作成に当たり、NGOとの対話を実施し、密接に連携をとっている。

 児童の権利条約関連では、近年、グローバル化や情報社会の発展により、児童買春や児童ポルノ等、児童の性的搾取の問題が深刻化しているが、こうした問題でNGOが果たす役割は大きく、政府も引き続きNGOの活動に協力してきている。

 2月から3月には、第50回国連婦人の地位委員会が国連本部(ニューヨーク)で開催された。日本政府代表団にはNGO関係者1名が顧問として参加し、会議の議論に貢献するとともに、政府とNGOの橋渡し役として活動した。

  12月に第61回国連総会本会議にて採択された「障害者権利条約」(仮称)の交渉においては、日本政府代表団に障害を持つ当事者が顧問として加わり、また 日本の障害者NGOもオブザーバーとして交渉の場に参加するとともに関連セミナーを主催するなど、国際的にも顕著な活動が高く評価された。

  国際組織犯罪分野では、人身取引問題についてNGOと意見交換している。政府は内閣官房に関係省庁連絡会議を設置し、包括的な人身取引対策行動計画を策定するなど諸政策を実施しているが、その過程で定期的にNGOと協議の場を設け、現状把握や保護策について率直な意見交換を行っており、NGOが重要な役割を果たしている。また、2月、外務省はNGOとの協力の下、人身取引の根絶に向けた国際シンポジウム(国立女性教育会館及び国際移住機関(IOM)との共催)を東京で開催した。

 環境分野では、環境教育について率直な意見や情報の交換を行う機会を提供する観点から、2004年から年1回、アジア協力対話(ACD)のプライム・ムーバー・プロジェクト(注7)として、環境教育推進対話を開催してきており、政府関係者のみならず、国際機関、NGO、研究者、民間企業等あらゆる関係者が参加してきている。6月には、日本の政府とNGOとが協力して開始された国連「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)の10年」を広くアジアにおいて推進することを目的に、国内NGOとの共催で第3回対話を仙台において開催し、アジア19か国か ら約150名が参加した。同対話では、日本が3月に策定した「ESDの10年」国内実施計画を公表するとともに、仙台広域圏地域の拠点の取組を紹介する等、日本のESDの取組をアジアに向けて発信した。

  貿易面では、現在進められている世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉を成功に導くためには、NGOを含む民間団体等の理解と協力が不可欠である。ラウンド交渉の進捗に応じて外務省主催で交渉の進捗状況に関する説明会を民間団体等を対象として開催するなど、引き続きNGOを含む民間団体との連携を図ってきている。

 対人地雷対策等の軍縮分野では、外務省は政府の取組等に関し、日本のNGOとの意見交換会を開催しているほか、アフガニスタンやカンボジア等、地雷被害国の現場で活動する日本のNGOに対し、日本NGO支援無償資金協力を通じて、地雷対策事業活動を資金面で支援してきている。

 国連改革に関しては、7月に外務省はNGOとともに「国連改革に関するパブリック・フォーラム」を共催し、国連改革の現状と今後の課題を中心的議題として、両者の間で意見交換が行われた。 外務省、NGO、国際機関に加え、今回は多くの企業関係者が参加し、分科会形式で議論を深めた。また、一般参加者を対象に国連改革に関するQ&A セッションを設ける等の試みを通じ、政府と市民社会間の連携を更に深めてきている。




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