第3章 分野別に見た外交


(5)漁  業(マグロ・捕鯨問題等)

 世界の海洋漁業資源が、その4分の3あるいはそれを超える割合で乱獲されている (注27) との懸念が広まりつつある中、日本は世界有数の漁業国、水産物の輸入国として、国際的な場においても、海洋生物資源の持続可能な利用と適切な保存管理、海洋環境保全のための協力に積極的な役割を果たしている。

 近年、各地域の漁業資源管理機関においては、違法・無報告・無規制(IUU)漁船等への対策が進んでいる。こうした機関では、日本のイニシアティブにより導入されたポジティブリスト措置 (注28) など、資源の保存管理のためのルールが定められている。そうした中、日本は、責任ある漁業国として、8月、タラ、カレイ等のストラドリング魚類資源及びマグロ、カツオ等の高度回遊性魚類資源の保存・管理のための一般原則等について定めた「国連公海漁業協定」を批准した (注29) 。また、マグロ類については、海域によっては資源量の減少が顕著になりつつある中で、日本は南半球におけるミナミマグロや大西洋におけるクロマグロの漁獲量の削減に積極的に協力している。

 捕鯨については、6月の第58回国際捕鯨委員会(IWC)年次会合で、鯨類の持続可能な利用を支持する国がわずかながら反捕鯨国を上回り、商業捕鯨モラトリアムはもはや必要ない等の内容が盛り込まれたセントキッツ宣言が採択された(同宣言には法的拘束力はない)。日本は、科学的根拠に基づき、保護すべき鯨種は適切に保護しつつ鯨類資源の持続可能な利用を図るべきとの立場であり、今後もIWC加盟国に対し、この立場への一層の理解と支持を積極的に働きかけていく。




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