第3章 分野別に見た外交 第2節
(注1)多角的貿易体制を戦後一貫して支えてきたGATT(関税及び貿易に関する一般協定。1947年に23か国・地域により調印された。日本の加盟は1955年。)を発展的に継承して1995年に発足した。
(注2)現在のWTOドーハ・ラウンド交渉は2002年1月に開始され、2004年には交渉の土台となる「7月枠組み合意」が成立した。この合意は、2004年7月にジュネーブで開催された一般理事会で採択されたもので、(1)農業と非農産品市場アクセス交渉における大枠の合意の決定、(2)通関手続きの改善等を行う貿易円滑化交渉の立ち上げ、(3)開発途上国の開発問題が交渉の中心的な課題であることを受けた開発途上国への配慮に関する多くの言及-がなされた。2005年末に開催された香港閣僚会議では、2006年4月末までに農業と非農産品市場アクセス(NAMA:Non‐Agricultural Market Access)のモダリティを確立するという合意がなされ、同年末の交渉妥結が目標として設定された。
(注3)関税削減等に関する数字の入った各国共通のルールのこと。
(注4)農業の市場アクセスを巡っては、米国、ブラジル、オーストラリアなどの輸出国側が高レベルの関税削減を求める「攻め」の立場にあり、日本、EU、インドなどは現実的な削減を求める「守り」の立場にある。一方、農業国内支持(補助金)の削減の局面では、米国に更なる削減を求める諸国が「攻め」、高レベルの削減に慎重な米国が「守り」という対立がある。また、非農産品市場アクセス(NAMA)に関しては、先進国が高レベルの削減を求める「攻め」の立場にあり、ブラジル、インドを代表とする途上国側が「守り」の立場にある。こうした三すくみの形で、ラウンド交渉は膠着した。
(注5)これまでの二国間のリクエスト・オファー交渉(一対一)からリクエストする側もされる側も複数国となり、集団対集団に発展したもの。計20分野の交渉グループが立ち上がり、日本は海上運送サービス及び建設サービスの2分野に関し調整国を務めた。
(注6)各加盟国がサービス貿易自由化のための更なる約束を行うため、提出が求められているもので、香港閣僚宣言により2006年7月31日が提出期限となっていた。2000年にサービス貿易交渉が開始されて以来、2003年3月の初期オファー、2005年5月の改訂オファーの提出と過去2回オファーの提出が行われている。2006年12月末現在で、加盟国149か国・地域のうち、初期オファーは96か国・地域が、改訂オファーは56か国・地域が提出している。
(注7)西アフリカのLDC4か国(ブルキナファソ、ベナン、マリ、チャド)によって提起された問題。この4か国にとって、本来、綿花は十分競争力のある産業であるにもかかわらず、一部先進国が自国の綿花産業に与えている補助金のために、綿花輸出が阻害され大きな打撃を受けているとして、先進国に対して補助金の段階的撤廃及び撤廃完了までの補償措置を要求している問題。
(注8)WTO、UNCTAD、ITC、UNDP、IMF、世界銀行の6国際機関による対LDC開発途上国貿易関連技術支援共同イニシアティブであり、二国間や多国間の貿易関連技術支援の効率的実施を行う。LDCの多角的貿易体制参画を通じた貧困削減、持続的経済発展の達成も目的としており、LDCの供給側の制約解消に資するものとして、LDCや国際社会の期待も高い。
(注9)開発途上国が貿易から十分な利益を得るためには、貿易自由化だけでは不十分であり、貿易関連の技術支援、生産能力の向上や流通インフラ整備などを含めた供給面での支援、貿易自由化に伴う構造調整面での支援等が必要との観点から、WTO、OECD、世界銀行などで「貿易のための援助」に関する議論が行われている。ただし、現時点において明確な定義はない。
(注10)LDC産品に対する関税を量的な制限を設けることなく原則的に無税とする措置。香港閣僚会議では、97%以上を無税無枠とすることが合意されている。
(注11)GATTの下での紛争案件数は、1948年から1994年までの間に314件(年平均6.7件)。WTOの下での紛争案件数356件のうち、2006年末までに日本が当事国(申立国または被申立国)としてかかわった案件は、27件。なお、件数については、WTOホームページに掲載されているDS番号の付されたすべての案件をそれぞれ1件として計算している。
(注12)米国商務省は、ダンピング・マージン(輸出国の国内正常価格より輸出価格が低い場合の価格差)を計算する際に、(1)まず、その産品の個々のモデルまたは取引ごとに輸出国の国内正常化価格と対米輸出価格を比較し、(2)その結果を総計して、この産品全体のダンピング・マージンを算定している。この総計をする(2)の段階において、(1)の比較で輸出国の国内正常価格より対米輸出価格が高いものについてはその価格差はマイナスとなるが、ゼロイングとは、それらをマイナスとして差し引かず、一律「ゼロ」とみなして計算する方式。これにより、ダンピング・マージンが不当に高く計算される。
(注13)パネルは、紛争案件ごとに構成され、WTO紛争解決手続における第一審に相当する役割を果たす。申立国は、パネルの法的判断に不服がある場合には、上級委員会(常設の機関で、第二審(かつ最終審)に相当)に上訴できる。
(注14)韓国政府による韓国ハイニックス・セミコンダクター社への支援措置に関し、日本のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー。半導体の一種)産業から申請を受けた日本政府が調査を行った結果、問題の支援措置がWTO協定上の補助金に該当し、同社製品の日本への輸入により日本のDRAM産業に実質的な損害が生じていると認定された。日本は、この調査結果を踏まえ、WTO協定に基づき、韓国から日本に輸入される同社製DRAMに対して27.2%の相殺関税を賦課することとした。
(注16)特定の国・地域の間で、関税などを撤廃し、モノやサービスの貿易自由化を図ることを目的とした協定を自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)と呼ぶ。FTAを基礎としながら、投資、人の移動、政府調達、競争政策、知的財産などの分野におけるルールづくり、さらには様々な分野での協力を通じて各種経済制度の調和等を図ること等を目的とした協定を経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)と呼ぶ。
(注17)2002年11月に発効。日本にとって初めてのEPA。
(注19)ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカに加え、国連、WHO、IAEA、IEA、ユネスコ、世界銀行、WTO、AU議長国(コンゴ(共))、CIS議長国(カザフスタン)が招待された。(注20)1961年に国際経済全般について協議することを目的として20か国で発足した国際機関(現在は30か国)で、「世界最大のシンクタンク」とも呼ばれており、主として先進国間の政策調整やルールづくりの場として役割を果たしている。日本は1964年に加盟。
(注21)OECDでは毎年1回閣僚理事会を開催。2006年閣僚理事会(於:パリ)には、日本から二階経済産業大臣、櫻田内閣府副大臣、塩崎外務副大臣が出席した。
(注22)民間投資が途上国の成長に不可欠のものであるとの観点から、途上国の投資環境改善のため、投資政策、競争政策、税制、コーポレート・ガバナンス等10分野にわたって、途上国政府による実施が期待される政策をまとめたガイドライン。
(注23)(1)高値かつ不安定な石油価格、(2)増大するエネルギー需要、(3)多くの国における輸入依存の増大、(4)エネルギー・チェーン全体における投資、(5)環境保護及び気候変動への対処、(6)重要なエネルギー・インフラの脆弱性、(7)政治的不安定、自然災害。
(注24)中東和平への日本の貢献については第2章第6節2.「中東和平」参照。
(注25)G8サンクトペテルブルク・サミットにおいても、「政治的な目的のためにエネルギー資源を使わない」ことが確認された。
(注26)国連海洋法条約では、沿岸国の200海里までの海底等をその大陸棚とするとともに、大陸縁辺部が200海里を超えて延びている場合には、海底の地形・地質等が一定の条件を満たせば、沿岸国は200海里を超える大陸棚を設定できるとしている。
(注27)FAO,“The State of World Fisheries and Aquaculture 2004”,p32
(注28)規制を遵守している正規船及び正規の蓄養場のリストを作成することにより、同リストに掲載されていないIUU漁船や規制を遵守しない蓄養場からの輸入を認めないもの。
(注29)正式名称は「分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存管理に関する1982年12月10日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定」。