第3章 分野別に見た外交 |
7.人 権 【総 論】 人権・民主主義とは、人一人ひとりの幸せの実現の基礎となる価値及び制度であり、人権・民主主義基盤が各国において十分に整備されることは、平和で繁栄した社会の確立、ひいては、国際社会の平和と安定に直結する。11月に行われた麻生外務大臣の「自由と繁栄の弧」に関するスピーチにおいて、日本は外交の新機軸として人権・民主主義をはじめとする普遍的価値を重視することを強調している。 国連でも、2005年9月の首脳会合「成果文書」において人権が国連の主要な3つの柱の一つとして再確認され、3月にそれまでの人権委員会を強化した人権理事会が新設されるなど、「人権の主流化」の動きが加速している。国連総会では、日本も条約交渉に積極的に参加してきた強制失踪条約(仮称)と障害者権利条約(仮称)が採択され、国連における人権の保護・促進メカニズムの強化に大きな前進が見られた。 また、女子差別撤廃委員会委員選挙(6月)、自由権規約 (注46) 委員会委員選挙(9月)では、それぞれ、齋賀富美子人権担当大使、岩沢雄司東京大学法学部教授が当選した。日本は、これらの専門家の活動を通じても、引き続き国際的な人権の保護・促進に貢献していく考えである。 民主主義分野に関しては、10月、有馬龍夫政府代表が第6回新生・復興民主主義国際会議(カタール)に出席し、日本の経験を踏まえ、民主主義が平和や繁栄に不可欠であることを強調した。また、普遍的な価値を重視する日本外交政策推進の観点から、国連民主主義基金に対し1,000万ドルの拠出を行うことを決定した。 日本は、国連をはじめとする多国間の場における人権・民主主義にかかわる取組と、人権対話や開発援助等を通じた二国間の場における取組を相互に連携させつつ、開発援助を通じた人権・民主主義基盤の整備から包括的に人権・民主主義外交の強化を図っていく考えである。 |
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