第3章 分野別に見た外交


(4)化学、生物、通常兵器

(イ)化学兵器

 化学兵器禁止条約(CWC) (注40) は、化学兵器の生産・保有・使用等を包括的に禁止し、既存の化学兵器の全廃を定めるとともに、条約の遵守を検証制度(申告と査察)により確保するものであり、大量破壊兵器の軍縮に関する条約としては画期的な条約である。最近では、米露等の化学兵器の廃棄が遅延し始めていることや普遍化(締約国数の増加)及び締約国の国内実施措置を強化することが大きな課題となっている。日本は、普遍化や国内実施措置強化に関して、主としてアジア地域諸国を対象として取り組んでおり、2006年には特にイラクの締結促進を支援するなどした。また、日本は、CWCに基づき、旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の廃棄義務を負っているが、2007年4月の廃棄期限までに廃棄を完了することは困難となったため、2006年4月、日中両国は共同で廃棄期限の5年間の延期(2012年4月まで)を執行理事会に要請し、7月の執行理事会において承認された。

(ロ)生物兵器

 生物兵器禁止条約(BWC) (注41) は、生物兵器の開発・生産・保有等を包括的に禁止する唯一の多国間の法的枠組みであるが、条約の実施を確保する手段に関する規定が十分でないため、条約をいかに強化するかが課題となっている。

 11月から開催された第6回運用検討会議(5年に1度開催)では、条約の運用状況を見直し、これまでの作業計画での議論も踏まえて、次回運用検討会議(2011年)までの年次会合の開催 (注42) や、事務局機能を有する履行支援ユニットの設置等に合意した。日本は、現行の条約強化プロセスを支持しており、今回会議に向けた準備作業としてBWC東京セミナー (注43) を開催し、また会議中も積極的な提案を行うことで議論の活性化に貢献した。

(ハ)小型武器

 近年、国際社会には過剰な小型武器が存在し、紛争を激化・長期化させるだけでなく、紛争後の国家や社会の復興の大きな障害となっている。6月には、国連小型武器行動計画履行検討会議が開催され、国連小型武器行動計画(2001年策定)の履行状況や国際社会の今後の取組について議論が行われた。

 日本は、アジア、アフリカを中心とする各地で、小型武器の回収と地域社会の開発等を組み合わせた小型武器回収プロジェクトを関係機関と協力しながら実施している。カンボジアで紛争の予防・平和構築無償資金協力事業として実施中の「カンボジアにおける平和構築と包括的小型武器対策プログラム」では、2006年10月までに2万3,000丁を超える小型武器が回収された。



▲カンボジアにおける小型武器破壊式典の模様(写真提供:日本小型武器対策支援チーム(JSAC))

(ニ)対人地雷問題

 日本は、国際社会全体での実効的な対人地雷の禁止と、被害国への地雷対策支援の強化を「車の両輪」として包括的な取組を推進している。前者については、より多くの国が対人地雷禁止条約(オタワ条約) (注44) を締結するべく、日本は、アジア太平洋地域の未締結国を中心に条約締結の働きかけを行っている。

 後者については、日本は1998年以降、地雷除去、犠牲者支援、地雷回避教育等のため、30か国以上に対して240億円を超える支援を実施している。




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