第3章 分野別に見た外交 |
(1)国際社会のテロ対策の取組の進展
2006年を通じ、国際社会はこれまでに達成された成果を基礎に、多国間及び地域的なレベルでの協力を推進し、国際テロ対策を一層強化してきた。 ロシア・サンクトペテルブルクでの主要国首脳会議(G8サミット)開催直前の7月11日にインドにおいて列車爆弾テロ事件が発生したことを受け、G8サミットの場でムンバイ及びインドの他の地域で発生した野蛮なテロ行為に対する声明を発表し、テロとの闘いに対する国際社会の結束と決意を示した。また、国連のテロ対策などの強化、重要エネルギー・インフラ施設に対するテロなどの対処に関する協力の強化、官民協力の重要性やテロリストの勧誘などに対処するための戦略策定などを内容とする「テロ対策に関するG8首脳宣言」、及びテロ対策関連で国連に焦点を当てた初めてのG8首脳文書である「国連のテロ対策プログラムの強化に関するG8首脳声明」を採択した。11月には、テロ対策のための官民協力に焦点を当てた初のG8の国際会議が開催された。 国連では5月、アナン事務総長が総会本会議において「テロリズムに対抗して団結する:グローバルなテロ対策戦略に向けた勧告」を発表した。同勧告を受けた議論を経て、9月、国連総会本会議において「国連グローバル・テロ対策戦略に関する総会決議」が採択された。 そのほか、テロ資金対策分野ではFATFが、テロ対処能力向上支援に関してはテロ対策行動グループ(CTAG) (注5) が活動を展開するなど、様々な分野でテロを予防・根絶するための多国間協力が進められている。9月には、インドネシア・ジャカルタで、国際海事機関(IMO)が中心となり、マラッカ・シンガポール海峡の安全問題に焦点を当てた国際会議が開催され、沿岸国や主要な利用国が参加するなど、海上テロ・海賊対策を含む同海峡の安全確保に関する国際協力が進展した。 地域レベルでは、7月、ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合において、日本もその採択を支持した「サイバー攻撃及びテロリストによるサイバー空間の悪用との闘いにおける協力に関するARF声明」及び「テロリズム対策に対する人間中心によるアプローチの促進に関するARF声明」が採択された。ASEMでは、9月の首脳会合で採択された議長声明の中で、テロとの闘いへのコミットメントが再確認され、包括的アプローチの必要性が強調された。また、テロ対策分野における情報交換、具体的な対策、途上国等におけるテロ対処能力向上のための支援について議論するASEMテロ対策会議が2003年から毎年開催されており、2007年の第5回ASEMテロ対策会議は日本で開催する予定である。11月のAPEC首脳会議で採択されたハノイ宣言においては、自由な貿易及び投資というAPECの中核的な目標達成のためのAPECの努力においてテロ対策が有意義であることが認識され、2007年にテロ資金に対処するための協力と能力構築活動を更に進めることが合意された (注6) 。 |
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