第2章 地域別に見た外交 |
2.中南米の潮流と2006年大統領選挙 2006年は中南米における「選挙の年」であった。1月に行われたチリ大統領選挙の決選投票を含め、ペルー、メキシコ、ブラジル、ニカラグア、ベネズエラ等12か国で大統領選挙が行われた。 これらの選挙の多くにおいて候補者に問われたのが、歴史的な課題でもある貧困の削減や所得の格差に対する姿勢だった。選挙の結果、ブラジル、チリ、メキシコ、コロンビア等においては現行路線の継続が選択されたが、ベネズエラ、ボリビア、エクアドルでは、それぞれの主張に程度の差はあれ、資源ナショナリズム (注3) を掲げ、貧困層に対する傾斜的な社会政策を重視する候補が勝利した。また、現行の路線の維持を標榜して当選した候補も、これまで以上に社会政策の充実を公約の前面に打ち出していた点が注目される。これは、中南米においては、自由開放経済の維持が、持続的な繁栄にとって現実的な選択肢として受け入れられる一方で、民主的なプロセスの下で政権を獲得、維持していくためには、根強く残る貧困や貧富の格差等の歴史的な課題に取り組む姿勢を打ち出さなくてはならないという事情を反映したものと考えられる。 |
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