第2章 地域別に見た外交


(4)APEC

 アジア太平洋経済協力(APEC)は、アジア太平洋地域の21メンバーから構成されており、日本の貿易量及び直接投資の約7割を占めるAPEC域内において経済面での協力と信頼関係を強化することは日本にとって極めて重要である。APEC首脳・閣僚会議は、経済問題にとどまらず、安全保障問題等の国際社会の主要な関心事項につき、首脳・閣僚間で率直な意見交換を行う有意義な場となっている。

 2006年はベトナムが議長を務め、各種の関連会合がベトナムで開催された。11月にベトナムのハノイで開催された首脳会議においては、WTO交渉の膠着状態を打開すべく、ドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉に関するAPEC首脳による独立声明が出された。また、長期的展望としてのアジア太平洋の自由貿易圏構想を含め、地域経済統合を促進する方法及び手段についての更なる研究を2007年に実施することとなった。このほか、ボゴール目標 (注62) の達成に向けた今後の道程を具体化するハノイ行動計画が承認された。また、北朝鮮によるミサイル発射や核実験実施発表に関しては、強い懸念が議長から表明され、国連安保理決議や六者会合共同声明を完全に実施することの重要性を強調する議長の口頭声明が出された。このことは、北朝鮮の核実験等に対し、国際社会の一致した姿勢を明確に示す上で大きな意義があった。

 さらに、11月にハノイで開催された閣僚会議においては、物品貿易等6分野に関し、自由貿易協定(FTA)交渉の参考となる具体的措置を列挙したモデル措置が承認された。また、2005年に策定した「APEC模倣品・海賊版イニシアティブ」の具体的措置として、同年に合意済みの3つのガイドラインに加え、公衆周知及び供給チェーンに関する2つのガイドラインが合意された。このほか、日本とオーストラリアが中心となり、投資に関するセミナーの開催等の具体的な作業計画を定めた。



▲APEC首脳会議に参加の各国・地域首脳(11月19日、ベトナム・ハノイ 写真提供:内閣広報室)




<< 前の項目に戻る 次の項目に進む >>