第2章 地域別に見た外交 |
4.南アジア 【総 論】 南アジア地域は高い経済成長率を維持し、インド、パキスタン、バングラデシュがBRICs (注56) やNext11 (注57) に位置付けられるなど、その存在感を一層高めつつある。域内においては経済関係緊密化の動きが活発化しており、インドとバングラデシュ、スリランカとバングラデシュなどの間で自由貿易協定に向けた交渉が、また、インドとパキスタンの間では自由貿易協定の共同研究がそれぞれ行われている。また、南アジア自由貿易協定(SAFTA)が1月に発効し、南アジア地域協力連合(SAARC)加盟国間における関税引下げが進んでいる。 域内の民主化も進展しており、特にネパールでは、民主制政治の復活に引き続き、政府と共産党毛沢東主義派(マオイスト)の間でも包括的和平合意が成立し、2007年6月半ばまでには制憲議会選挙が予定されている。ブータンでは2008年の憲法制定や議会制民主主義に向け準備が進められており、12月には国王が交代した。バングラデシュでは、2007年1月末の総選挙に向け、10月に選挙管理内閣が発足したが、与野党の対立が激化した結果、2007年1月11日非常事態宣言が出され、総選挙は延期された。 インド・パキスタン関係では、2004年から開始された両国間の「複合的対話」 (注58) プロセスを通じ、関係改善に向けた動きが促進されていたが、7月のムンバイ連続爆破テロ事件発生後、関係改善の動きの継続が危ぶまれた。しかし、9月に行われた首脳会談においてテロ協力が合意されるなど、改善への動きは継続している。 スリランカについては、政府とタミル・イーラム解放の虎(LTTE)の衝突が激化し、和平プロセスが停滞した。また、大量に発生した国内避難民の一部がインドに流れるなどの動きがあった。 SAARCについては、2005年11月の首脳会議で、アフガニスタンの加盟及び日本や中国のオブザーバー参加、2006年8月の外相会合で、米国、韓国、EUのオブザーバー参加がそれぞれ承認されるなど、取組が活性化しつつある。 日本との関係では、麻生外務大臣のインド、パキスタン(1月)及びバングラデシュ(7月)訪問、サマラウィーラ・スリランカ外相の来日(5月)、シャヒード・モルディブ外相の来日(7月)、ティンレイ・ブータン文化・内務大臣の来日(10月)、マンモハン・シン・インド首相の来日(12月)など、多くの閣僚級の要人往来が行われた。 |
|