(1)イ ン ド
コングレス党を中心とするシン政権は、左派政党の閣外協力を得つつも引き続き安定的に政権を運営している。政権発足時に掲げた基本政策に基づき農村開発や雇用対策に優先的に取り組むとともに、外資規制緩和や国営企業民営化等の経済自由化政策を継続している。10月には、約1年間空席だった外相職にムカジー国防相が就任した。経済面では、引き続きIT産業の成長がめざましく、2005年度の実質GDP成長率は9.0%を記録した。
インドは、各国との関係を強化し、国際社会における存在感を高めてきている。米国との間では、3月にブッシュ大統領がインドを訪問し、経済、エネルギー、環境等の分野における協力に合意するとともに、両国間の貿易額を3年間で2倍(400億ドル)に高める目標を設定した。また、民生用原子力協力に関する米印合意について、米国側は、関連する米国内法の改正、原子力供給国グループ(NSG)ガイドラインの調整について約束し、一方インド側は、国内22基の原子炉のうち14基を国際原子力機関(IAEA)保障措置下に置くことなどを約束した。なお、関連する米国内法は12月に改正された。中国との間では、11月に胡錦濤国家主席がインドを訪問し、中印両国は競争相手ではなくパートナーであるとの認識を確認し、経済、科学技術、人の交流等の面で関係を強化することが合意された。特に経済面では、両国間の貿易額を今後4年間で400億ドルに高める目標を設定した。なお、両国の最大の懸案事項である国境画定問題については実質的な進展は見られなかった。このほか、インドは、欧州諸国、ASEAN諸国、中東諸国等との間でも引き続き積極的な外交を推進している。
日本にとってインドは、民主主義等基本的価値を共有する重要なパートナーであり、関係強化が図られた。インドからは、財務、防衛、商工、科学技術等の各担当大臣が来日し、日本からは、麻生外務大臣、谷垣財務大臣、北側国土交通大臣がそれぞれインドを訪問した。また、12月にはシン首相が公賓として来日し、安倍総理大臣との間で、「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」に向けた共同声明を発出し、政治・安全保障、経済、科学技術、国民交流、地域的・国際的協力の各分野における具体的な取組に合意した。特に、首脳の訪問を毎年相互に実施すること、EPA交渉を速やかに開始すること、日本企業の対インド投資促進のためのインフラ整備強化等を内容とする「経済パートナーシップ・イニシアティブ」を開始すること、両国のビジネスリーダーにより構成される「ビジネスリーダーズ・フォーラム」を立ち上げること、さらに、東アジア首脳会議(EAS)、国連、SAARCにおいて連携することなどが合意された。

▲会談後、共同声明の署名式に臨む安倍総理大臣とシン・インド首相(12月15日、総理大臣官邸 写真提供:内閣広報室) |