第2章 地域別に見た外交


(3)その他の問題

(イ)KEDO

 2003年11月以降、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の軽水炉プロジェクトは停止されていたが、2005年2月の北朝鮮による核兵器保有宣言等を受け、KEDO理事会は、同プロジェクトを継続するための基礎が完全に失われたと判断し、同プロジェクトの終了に伴う諸問題につき協議した上で、2006年5月、同プロジェクトの終了を正式に決定した。 

(ロ)「脱北者」の問題

 北朝鮮から外国に逃れた元北朝鮮住民を一般に「脱北者」としているが、その背景には北朝鮮における厳しい食糧難、経済難、人権侵害等があるものと推測されている。

 「脱北者」については、政府として、6月に成立した「北朝鮮人権法」を踏まえ、関係者の安全、人道上の配慮など種々の観点を重視し、これらを総合的に勘案しながら対応してきている。 

(ハ)南北朝鮮関係

 南北間では当初、2005年に活発に展開された南北交流の流れが引き続き維持された。3月には第3回南北将官級軍事会談、4月には第18回南北閣僚級会談が相次いで開催され、また6月に開かれた北朝鮮の金剛山での離散家族特別再会行事においては、横田めぐみさんの夫とされる金英男氏とその家族(母: 崔桂月氏、姉:金英子氏等)が再会を果たした。

 しかし、7月の北朝鮮によるミサイル発射直後に行われた第19回南北閣僚級会談では、北朝鮮側が「先軍政治」(軍事最優先政治)が韓国の安定をもたらしている旨発言したことに対し韓国側が反発し、また韓国側が、ミサイル発射を受けた事態が解決されるまで北朝鮮が求めていたコメ・肥料支援を行わない旨伝達したことに対し北朝鮮が激しく非難するなど、双方の主張は平行線のまま会談は打ち切られた。また、その直後に北朝鮮側が離散家族再会事業の中断を一方的に韓国側に通告する等、南北関係は停滞し始めた。7月中旬に発生した北朝鮮の水害に対し、韓国がコメ10万トンをはじめとする緊急人道支援を実施し (注18) 、これを機に南北間の接触が見られたものの、10月の北朝鮮による核実験実施に対し韓国が安保理決議第1718号に基づく措置を発表すると、更に南北関係は難しい局面を迎えた (注19)

 盧武鉉政権は、政権発足以来、北朝鮮の核問題を解決し朝鮮半島の平和と安全を確保した上で、南北間の和解と交流を進め朝鮮半島の繁栄を目指す「平和・繁栄政策」 (注20) を標榜し、北朝鮮の核実験実施以降もこの政策を維持する旨明らかにしており、今後の南北関係の展開が注目される。

(ニ)北朝鮮内政・経済

 北朝鮮は、金正日国防委員長が主に朝鮮労働党を通じて全体を統治しており、「先軍政治」と呼ばれる軍事優先政策を実施している。

 北朝鮮は、1998年以来、思想、政治、軍事、経済の強大国である「強盛大国」の建設を標榜し、近年は経済復興に努力していた。

 北朝鮮は、社会主義圏崩壊以降の厳しい経済難から、1990年代中盤以降、部分的な経済改革に着手した (注21) 。しかし、エネルギーを含め、全般的な資材・資金不足の中で、そうした措置が生産活動の活性化につながっているのか、貧富の差の拡大をもたらしていないのかなどは不透明であり、引き続き注視していく必要がある。

 また、近年中国との経済関係が急速に拡大している。2005年の北朝鮮の全貿易額に占める中国の割合は、39%となったほか (注22) 、同年の北朝鮮による対中貿易額は、総額で約15億8,000万ドルに上った (注23) 。また、2005年の北朝鮮への食糧支援のうち、その49%は中国からのものであるなど、北朝鮮経済に占める中国の存在感は依然として大きい。

 なお、北朝鮮の核実験に対する安保理決議第1718号に基づき各国が実施している制裁措置が、北朝鮮経済に実際にいかなる影響をもたらすのか、今後注目を要する。




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