第3章 分野別に見た外交


3.大型事業

(1)2005年日本国際博覧会(愛・地球博)の開催

 「自然の叡智」をテーマとして、21世紀最初の国際博覧会である2005年日本国際博覧会(愛・地球博)が3月25日から9月25日まで、愛知県で開催された (注9) 。日本で開催された国際博覧会としては最多の121か国、4つの国際機関が公式参加し、185日間の期間中、当初目標とした1,500万人をはるかに上回る2,200万人以上が来訪した。

 日本は、「自然の叡智」という普遍的なテーマに基づき、 古からの知恵と最先端技術を活用して、地球温暖化等の現在人類が直面するグローバルな課題に対応するためのモデルとなるような展示を行うことを提唱、シベリアで冷凍状態のまま発掘された「ユカギル・マンモス」を含む興味ある展示を自ら行い、この理念を一貫して訴えた。このような「愛・地球博」の成功は、活力を失いかけていた国際博覧会運動に新風を吹き込むものとして、博覧会国際事務局(BIE)関係者をはじめ、世界各国で高く評価された。

 また、「愛・地球博」では、愛知県内の市町村が参加国のホストシティー・ホストタウンとして交流や来賓のもてなしを行う「一市町村一国フレンドシップ事業」が実施された。開幕前から閉幕後に至るまで、地元住民が参加国関係者と草の根レベルで交流したことは、今までの博覧会にはない試みとして内外の高い評価を受けた。ボランティア活動やNGO主催行事等を通じて、多くの市民が直接参加した市民参加型の博覧会であったことも「愛・地球博」の特徴の一つであった。

▲「愛・地球博」の会場で、来場者を魅了するタイの伝統舞踊 (写真提供:中日新聞)

 期間中は、公式参加国・国際機関のナショナルデー・スペシャルデーが連日開催され、日本政府の招きによる「博覧会賓客」として各国の王族、元首、閣僚等が多数会場を訪れた。そのほか、多くの外国要人が経済界の代表等と共に来日し、計100名を上回る閣僚級以上の海外要人が来場した。博覧会賓客の各国要人は、会場内で行われた式典及び公式午餐会に出席したほか、会場のパビリオンを視察、さらには「フレンドシップ事業」のホスト市町村を訪問し、住民との直接交流を楽しんだ。また、多くの要人は訪日の機会に天皇皇后両陛下をはじめとする皇族方や小泉総理大臣、閣僚、国会議員、経済界要人と会談し、相互理解の進展が図られた。

 多数の国内要人も会場を訪問したが、中でも、天皇皇后両陛下、「愛・地球博」名誉総裁の皇太子殿下をはじめ多くの皇族方が手分けされ、すべての外国パビリオンを訪問されたことは、各パビリオン関係者に大きな励ましとなった。

 以上のように、「愛・地球博」の開催を契機として、各参加国との交流が大いに促進され、友好関係が更に深化した。また、「愛・地球博」を契機に行われた大規模な海外報道関係者招待の効果もあって、多くの海外報道が行われ、地球規模問題の解決に貢献しようとする日本の姿勢を広く発信することができた。

 COLUMN

~モリゾーとキッコロ愛・地球博を振り返る~

キッコロ(以下「キ」):おじいちゃん、去年の万博には世界中からたくさんのお客さんが来て楽しかったね。

モリゾー(以下「モ」):そうじゃな。あんなに多くの人が来るとは思ってもみんかったが、静かな森に戻った今となっては、夢のようなひとときじゃったのう。

キ:本当だね。でもあんなににぎわっていたパビリオンはどこへ行ったの?

モ:パビリオンの建物に使われた木材等は、小学校の校舎や倉庫などとして他の場所で再利用されているんじゃよ。

キ:へぇー! そんなところで役に立っているんだ。

モ:モノを大事にする『もったいない』という言葉が、世界中に広まると良いのう。それに、パビリオンを建てる時に邪魔になった木も、切り倒すのではなく他の場所に移されて大切に育てられているんじゃぞ。

キ:そういえば、外国の人たちともたくさんお話できたね。

モ:本当にそうじゃ。特に、愛知県じゃ、それぞれの市や町で、パートナーになる国を決め、その国の人たちを歓迎したり、交流する行事をたくさん行ったそうじゃ。

キ:どんなことをしたの?

モ:それぞれの国のナショナルデーのイベントに参加したり、その国の料理や踊りを習ったり、ホームステイで交流をしたようじゃ。絵の交流やインターネットを通じた子供同士の交流もあるようじゃぞ。それに、アジアやアフリカの国々へ、中古の消防車を贈ったりして、とても感謝されているそうじゃ。

キ:博覧会の会場は、夢のように消えてしまったけど、みんなの心の中に楽しい思い出がたくさん残っているし、お友達の輪が世界中に広がったんだね。

モ:この森の思い出も大切にしていきたいのう。

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▲(C)Japan Association for the 2005 World Exposition




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