第3章 分野別に見た外交 |
1.海外に向けた情報発信 (1)海外広報 日本の国益に資する海外広報を行うに当たっては、個別具体的な政策についての情報発信のみならず、これらについての諸外国における理解を助ける日本の実情についての的確な知識を提供し、また日本に対する好ましい感情や良好なイメージを形成することが重要である。このため外務省では、パブリック・ディプロマシー (注1) の考えを導入して、諸外国の国民に対して日本のイメージ、実情、諸政策に関する情報を直接提供するための総合的な情報発信力の強化に努めている。具体的には、各地域の対日関心の程度、関心の対象等を把握すべく対日世論・報道を調査・分析し、これを踏まえて広報する内容や効果的な媒体を検討した上で地域別、国別に広報戦略を立てるとともに、文化交流事業との連携によりその広報効果を高める措置を講じている。 在外公館では、講演会、シンポジウム等の広報事業を実施しているが、その中では日本の有識者を海外に派遣し講演を行う講師派遣事業、学校や教育機関での青少年層を対象とする日本紹介事業に重点を置いている。また、諸外国において良好な対日世論を喚起するよう、外国のテレビ局関係者を日本に招待して日本に関連する番組の取材や放映を支援したり、世論の形成に大きな影響力を持つ有識者(オピニオン・リーダー)や報道関係者を招待し、日本の政策や実情の紹介に役立てたりしている。これに加え、諸外国と日本のジャーナリストをパネリストとして迎え、相互理解を深めるための公開シンポジウム形式の会議を開催している。 外務省は、効果的な広報を実施するために、主要な外交問題に関するパンフレット等の印刷物資料や、日本を多様な切り口で紹介する「ジャパン・ビデオ・トピックス」といった映像資料等、様々な媒体で広報資料を作成してきている。インターネットも海外広報の主要な媒体となってきており、7月に発足させたIT広報室に日本語及び英語の外務省ホームページの運用や在外公館ホームページの支援等を一元化し、その強化を図った (注2) 。 戦後60周年に当たっては、外務省ホームページに特別コーナーを設け、平和国家としての日本の歩みや歴史認識等について積極的に広報した。特に、歴史問題についてよく寄せられる質問を題材に「歴史問題Q&A」を作成し、戦後の歴史認識等を巡る基本的な事実関係や日本の基本的立場をまとめ、国内外に向けて広報した (注3) 。 重点的に取り組んだ中東に対する広報では、イラクからイラク・メディア・ネットワーク(IMN)テレビチームを招聘し、様々な面から日本をとらえた番組の制作・放送につながった。11月には、アルジェリア、エジプト、カタール、サウジアラビア、日本から5名のパネリストを迎えて、「日本・アラブ・イスラム・ジャーナリスト会議」を開催し、日本とアラブ・イスラム諸国の相互イメージのゆがみを克服するためのメディアの役割について活発に議論された。また、現地の世論形成に影響力のあるオピニオン・リーダーとして、イラクよりサドルIMN総裁、イランよりバーホナル国会第一副議長、アフガニスタンよりハーリド・カンダハール県知事ほかの有識者を日本に招待した。また、中国における対日理解の増進を図るため、上海在住の作家の余秋雨氏をはじめ、北京テレビ局、大連テレビ局の取材チームを日本に招待した。 外国の報道関係者への情報提供や働きかけについては、日本駐在の特派員や本社幹部に対して随時行っているほか、総理大臣や外務大臣をはじめとする日本政府要人の外国訪問や外国要人の日本訪問等の機会をとらえて、要人自身が海外報道機関のインタビューに応じたり、新聞等へ寄稿するなど、メディアを通じて日本の考え方を広報している。また、日本に関する誤解等に基づく海外報道に対しては、反論投稿をはじめ必要な措置をとっている。 |
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