第3章 分野別に見た外交


(2)諸外国における日本についての論調

 2005年は、諸外国において、日本の歴史認識や周辺国外交、戦後日本の歩みに関する報道が多くなされた。中でも、4月に発生した中国における大規模な対日抗議活動に際しては、「世界の模範的な国家となっている」戦後の日本に対して「反日感情を煽ることは日中間の経済関係の悪化につながる」(3月31日付、アジアン・ウォールストリート・ジャーナル紙)、「このような街頭での暴力行為が発生した以上、中国の傷ついた感情に安易に理解を示すことは誤りであろう」(4月19日付、ドイツのミュンヒナー・メルクーア紙)といった中国における抗議活動の行き過ぎを批判する論調、及び、「日本は、米国の指導の下、過去と完全に決別したということを思い起こす必要がある」(4月26日付、フランスのル・モンド紙)、「フィリピンも日本軍により多くの国民を失ったが、旧敵国との友好関係を育て、維持していく上での障害としたことはない。日本が敗戦後、国策として戦争から背を向け、アジアと世界のよき力となることを国の目標としたからである」(4月21日付、フィリピンのマニラ・タイムズ紙)といった日本の戦後の歩みを評価する趣旨の論調が多く掲載された。

 同時期に注目を集めた日本の国連安保理常任理事国入りを目指す動きについては、ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙をはじめとする欧米メディアやG4諸国等のメディアの論調はおおむね好意的であったが、中国やパキスタン等のコンセンサス・グループ諸国のメディアは概して批判的であった。

 終戦記念日の8月15日に発表された小泉総理大臣談話に関しては、一部のメディアに批判的な論調もあったが、「だれも帝国軍時代の日本と、今日の成功した民主主義の日本を混同することはできない」(8月20日付、米国のロサンゼルス・タイムズ紙)として、「(談話で示されたおわびは)必要であり十分とされるべきである」(同紙)といった高い評価が米国のメディアを中心に多くあった。

 8月の衆議院解散と9月の総選挙、10月の第3次小泉内閣改造といった日本の政治情勢は外国メディアの高い関心を集め、多くの記事が掲載された。このような日本政治に対する関心の高まりと軌を一にして、日本経済の復調が注目を集め、中でも、英国のエコノミスト誌が「日はまた昇る」と題する日本特集を組み、大きな反響を呼んだ。

 G8グレンイーグルズ・サミットにおいて小泉総理大臣が表明した対アフリカ援助額の倍増はアフリカのメディアでとりあげられ、イラクへの自衛隊派遣期間の延長決定は海外主要紙で広く報じられるなど日本の国際貢献に注目が集まったほか、清子内親王殿下の御結婚に沸いた皇室関係、日本のポップ・カルチャーに対する人気の高まりについても報じられるなど、政治・経済・文化と多岐にわたって日本のニュースが伝えられた。




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