第3章 分野別に見た外交


第5節 海外広報と文化外交

【総  論】

 海外広報と文化交流は、相手国国民に対して日本の外交政策や諸事情、文化・思想の魅力を広く発信することにより、日本に対する理解と親近感を高め、外交交渉を円滑に行うための環境を整備することを目的としている。特に近年、グローバル化の拡大・深化と、民主化や人権の伸長の中で、多くの国において、政治家や一部の知識階級に限らず、広範な一般市民層がますます外交に影響力を有するようになっている。このため、政府としては日本の外交努力やその背景にある考え方を、相手国の政策決定層のみならず相手国国民に広く説明し、理解を得る必要性が増している。

 また、諸外国国民の対日イメージを向上させ、親近感を獲得することには、海外における邦人の安全性の向上だけでなく、日本を訪れる外国人観光客の増加や、日本製品の販売促進といった経済的な効果も期待できる。

 このような観点から、政府は、外国人・海外メディア向けの広報活動や、人物交流、文化事業、知的交流、開発途上国に対する文化協力等の文化交流事業を実施している。2005年には大型事業として、「愛・地球博」を開催し、また「日韓友情年」「日・EU市民交流年」「日露修好150周年」として、これらの国や地域との間で集中的な交流事業が行われた。国際文化交流の担い手として、地方自治体や企業、学校に加え、一般市民や個々の芸術家やスポーツマン、非営利組織(NPO)やNGOの果たす役割は拡大しており、政府はこれら民間の主体と協力しつつ事業を実施している。




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