第3章 分野別に見た外交


6.科学技術分野の国際協力

【総  論】

 国際社会は、持続的発展、地球環境問題、資源エネルギー問題、安全・安心な社会の実現、防災等の様々な諸課題の解決のために、科学技術を駆使した国際協力を重視している。日本は、このような観点から科学技術の一層の発展と応用を目指し、各国との二国間協力を進めるとともに、一国では実施できない大規模な国際科学プロジェクトを促進するため、多国間の国際協力を積極的に進めている。

【各  論】

 科学技術の二国間協力推進のため、日本は、各国と科学技術協力協定を締結しており、協定に基づく定期的な政府間会合等を通じて、科学技術政策及び諸課題に関する意見交換や、具体的な共同研究案件についての協議を行っている。2005年には、イタリア、米国、中国、カナダ、インドとの間でこうした会合を行った。また、EU、スイスとの間では、協定締結交渉を進めており、協力促進を図っている。

 大規模な国際科学プロジェクトの推進例としては、資源エネルギー、宇宙、地球観測、不拡散の分野における日本の積極的な取組が挙げられる。 

 資源エネルギーの分野では、核融合エネルギーが人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待されているが、日本はその実現可能性を実証するための国際共同プロジェクトであるITER(国際熱核融合実験炉)を推進している。2005年6月に、ITER建設地を南仏カダラッシュとすることが参加国、機関間で合意された。現在、日本はITER共同実施協定の交渉妥結、ITER計画の早期開始を目指して、積極的に政府間協議に臨んでいる。

 宇宙分野では、日本は、宇宙空間という特殊環境の中で様々な実験を行う研究所を建設する国際宇宙ステーション(ISS)計画に各国と共同で参加している。ISS計画の中で、日本初の有人実験施設「きぼう」が打ち上げられる予定である。また、日本では、ISSへの物資輸送手段の一つとして、宇宙ステーション補給機(HTV:H―II Transfer Vehicle)の開発に取り組んでいる。

 地球観測の分野では、全地球規模での観測の必要性が高まる中、日本は各国と協力し、アルゴ計画(高度海洋監視システム) (注27) 、統合国際深海掘削計画(IODP) (注28) 等を中心に推進している。また、2005年5月に正式に発足した地球観測グループ(GEO)では、全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画を実施するため、12か国からなる執行委員会の一員として計画実施に積極的に取り組んでいる。

 不拡散分野では、ソ連の崩壊に伴う大量破壊兵器関連技術の拡散を防止するために1994年に設立された国際科学技術センター(ISTC)を、日本は米国、ロシア、EU、カナダと共同で運営し、旧ソ連諸国で大量破壊兵器の研究開発に従事していた研究者・技術者の民生転換を支援している。日本は、ISTCのプロジェクトに対し、これまで約6,000万ドル(2005年現在)の支援を行っている。

 

▼統合国際深海掘削計画(IODP)

 2003年10月から始動し、日本、米国を中心に欧州、中国の計15か国が参加する多国間国際協力プロジェクト。日本の地球深部探査船「ちきゅう」と米国の掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削し、地球環境変動の解明、地球内部構造の解明、地殻内生命の探求等について研究を実施。

 「ちきゅう」は、海底下7,000mの掘削を可能とする科学掘削船であり、2005年7月に完成し、試験運用を経て、平成2007年9月からIODPの枠組みにおいて、国際運用を開始する予定。




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