第3章 分野別に見た外交 |
(4)化学、生物、通常兵器 (イ)化学兵器 化学兵器禁止条約(CWC) (注42) は、化学兵器の開発・生産・保有等を包括的に禁止し、既存の化学兵器の全廃を定めるとともに、条約の遵守を実効的な検証制度(申告と査察)により確保する大量破壊兵器の軍縮に関する条約としては画期的な条約である (注43) 。最近では、普遍化(締約国数の増加)及び締約国の国内実施措置の強化が大きな課題となっており、11月の締約国会議では、2003年に承認された「CWC普遍化に関するアクション・プラン」が2年間延長され、また、「CWC国内実施措置アクション・プラン」を更に具体化することが決定された。日本は、主としてアジア地域諸国を対象としたセミナー等でこうした取組に貢献しており、2005年には特にイラクの締結促進とカンボジアの国内実施措置強化等を支援した。 (ロ)生物兵器 生物兵器禁止条約(BWC) (注44) は、生物兵器を包括的に禁止する唯一の多国間の法的枠組みであるが、条約の実施を確保する手段に関する規定が十分でないため、条約をいかに強化するかが課題となっている (注45) 。 12月の締約国会合では、科学者の行動規範について締約国間の共通理解と効果的措置を確認し、2006年の運用検討会議で各国がとった措置について情報提供することを促す報告書が全会一致で採択された。日本は現行の条約強化プロセスを支持しており、7月の専門家会合に専門家等を派遣して日本の知見や経験を紹介して議論の活性化に貢献するとともに、最終報告書の採択に向けて各国との調整に努めるなど実質的な貢献を行った。 (ハ)小型武器 近年、国際社会には、過剰な小型武器が存在し、紛争の激化・長期化、紛争終了後における治安の悪化、紛争の再発等を助長する原因の一つとなっているだけでなく、国家や社会の復興の大きな障害となっている。6月には国連小型武器行動計画(2001年策定)のフォローアップ事項として挙げられていた小型武器のトレーシング(追跡)に関する国際文書を策定するための交渉が妥結し、国連総会で採択された。2006年6月には、行動計画の実施状況を検討する履行検討会議が開催されることとなっている。 日本は、小型武器の回収と開発を組み合わせた「小型武器回収プロジェクト」を関係機関と協力して実施してきている。カンボジアでは紛争の予防・平和構築無償資金協力事業として同国政府及び地方政府と協力し、小型武器回収の対価としての開発、小型武器破壊、小型武器の管理・登録支援、啓蒙活動等を柱とした「カンボジアにおける平和構築と包括的小型武器対策プログラム」を実施しており(2002年度4.5億円、2004年度4.7億円を拠出)、2006年1月までに1万3,010丁を超える小型武器が回収された。 (ニ)対人地雷問題 日本は、国際社会全体での実効的な対人地雷の禁止の実現、被害国に対する地雷対策支援の強化を「車の両輪」として、包括的な取組を推進してきている。前者については、より多くの国が対人地雷禁止条約(オタワ条約) (注46) を締結することが重要であることを踏まえ、日本は、アジア太平洋地域の未締結国を中心に条約締結の働きかけを行っている。 また、後者については、日本は1998年以降、地雷除去、犠牲者支援、地雷回避教育等のため、30か国以上に対して200億円を超える支援を実施しており、最近では2005年1月に南北包括和平合意が成立したスーダンに対して、同国南部における地雷対策支援を実施している。具体的には、緊急人道支援を促進するための地雷除去、難民・国内避難民の帰還に向けた地雷回避教育等のための約10億円の支援のほか、UNMISの活動に必要な地雷探知装置60台を供与した。 |
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