第3章 分野別に見た外交 第1節

(注1)日米安保体制を円滑で効果的に運用するため、日米防衛協力の基本的な枠組みや方向性などについて規定したもの。1997年に策定された。ただし、条約や協定と異なり法的な拘束力を持つものではない。

(注2)武器輸出三原則等との関係では、2004年12月、「弾道ミサイル防衛シス テムに関する案件については、日米安全保障体制の効果的な運用に寄与し、日本の安全保障に資するとの観点から、共同で開発・生産を行うこととなった場合に は、厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則等によらないこと」とする内閣官房長官談話を発表している。

(注3)米軍施設・区域の集中による沖縄県民の負担を軽減するため、在沖縄米軍施設・区域を整理・統合・縮小し、また、米軍の運用を調整する方策を日米両国政府がとりまとめた報告。1996年12月2日、日米安全保障協議委員会にて承認。

(注4)日米地位協定上、日米双方の裁判権を行使する権利が競合する事件に関し、以 下の場合に、米国側からの要請に基づき、当該事件について米軍当局が速やかに捜査を行うことができるようにするため、当該事件について捜査権限を有する米 軍司令部の代表者が日本側当局による被疑者の取調べに同席することが認められることとなった。①日本側当局が、1995年合同委員会合意(刑事裁判権手続 きに関するもの)に基づく被疑者の起訴前の拘禁の移転を日本が要請する可能性があると認める場合、②1995年合同委員会合意に基づき、日本に対し被疑者 の起訴前の拘禁の移転が行われた場合。

(注5)米軍航空機が墜落または目的地以外に着陸を余儀なくされた場合、米軍は日本当局に通報するとともに、現場保全や救助など必要な措置を行うなどとするもの。

(注6)正式名称は、海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約。

(注7)正式名称は、核物質の防護に関する条約。

(注8)安保理決議1624は、国連憲章第7章下の決議ではないものの、加盟国に対してテロの扇動を禁止するよう促すことを含め、テロ対策を一層強化することを内容としたもの。

(注9)安保理決議1535(2004年3月26日採択)は、テロ対策委員会 (CTC)に対し安保理決議1373の履行状況を監視するとのマンデートを達成するために更なる手段を付与するもので、国連事務総長に直結した事務局長 (Executive Director)によって率いられるCTC事務局(CTED)を新たに設置することを内容としたもの。

(注10)1989年のG8アルシュ・サミットにおいて、国際的な資金洗浄(マ ネー・ロンダリング)対策の推進を目的に招集された国際的な枠組みで、日本のほか、経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心に31か国・地域及び2国際 機関が参加。現在では、テロ資金対策についても指導的役割を果たしている。

(注11)2003年6月のG8エビアン・サミットにおいて採択された「テロと闘う ための国際的な政治的意思及び能力の向上G8行動計画」により創設が決定され、その主たる目的は、キャパシティ・ビルディング支援に関する要請の分析や需 要の優先付け、及びこれらの被援助国におけるCTAGメンバーによる調整会合の開催。2005年12月までに計8回開催されている。

(注12)テロ対策タスクフォース(CTTF : Counter‐Terrorism Task Force)は、2003年に設置され、(1)テロ対策に係る首脳宣言等の実施状況の確認、(2)APEC内で実施されているテロ対策関連技術協力等の調整、(3)APECの関連会合間のテロ対策等に関する取組の調整、を主な目的としている。

(注13)2005年7月の第12回ARF閣僚会合において、「テロリズム及び他の国境を越える犯罪に対する闘いにおける協力強化に当たっての情報の共有及びインテリジェンスの交換並びに身元証明書の安全性確保に関するARF声明」が採択された。

(注14)テロ防止関連条約は、(1)航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約(航空機内の犯罪防止条約(東京条約))、(2)航空機の不法な奪取の防止に関する条約(航空機不法奪取防止条約(ヘーグ条約))、(3)民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(民間航空不法行為防止条約(モントリオール条約))、(4)国際的に保護される者(外交官を含む)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約(国家代表等犯罪防止処罰条約)、(5)人質をとる行為に関する国際条約(人質行為防止条約)、(6)核物質の防護に関する条約(核物質防護条約)、(7)1971年9月23日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約を補足する、国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書(空港不法行為防止議定書)、(8)海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(海洋航行不法行為防止条約)、(9)大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書(大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書)、(10)可塑性爆薬の探知のための識別措置に関する条約(プラスチック爆薬探知条約)、(11)テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約(爆弾テロ防止条約)、(12)テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約(テロ資金供与防止条約)、及び(13)核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロリズム防止条約)。日本は発効済みの(1)~(12)すべての条約を締結しており、(13)についても2005年9月に署名した。

(注15)7月には前年に引き続き、マレーシア・クアラルンプールの東南アジア地域テロ対策センター(SEARCCT)において、東南アジア諸国等を対象に「生物テロの事前対処及び危機管理セミナー」を開催した。

(注16)現在、非常任理事国は1期2年で再選不可。モデルBは現行の非常任理事国を1か国増やすとともに、新しいタイプの非常任理事国(再選可能な4年任期)を8か国増やすことを提案。

(注17)AU決議案の主要点 : 常任理事国を6か国(うちアフリカ枠は2)、非常任理事国を5か国増やす。新常任理事国にも最初から拒否権付与。 コンセンサス・グループ決議案の主要点:非常任理事国のみを10か国増やす。選出の具体的扱いは各地域グループにゆだねられている。

(注18)国連憲章上、第53条、第77条、第107条に「敵国(enemy‐state)」または「敵(enemy)」という文言が用いられており、一般にこれらの規定は「旧敵国条項」と称されている。

(注19)小泉総理大臣が2002年5月1日に表明した「平和の定着及び国づくり」のための国際平和協力の強化に向けて必要な検討を行うため、福田康夫内閣官房長官の下に有識者により構成された私的懇談会(座長は明石康元国連事務次長)。

(注20)2004年4月に発表された行動計画は主に次の4点からなる。(1)人材の確保(データベースの連携)、(2)人材の養成(現場活動の大学単位への認定、国際平和協力分野の研修強化、外国との連携、人材育成のための若手の送り込み推進、インターン受入れ推進)、(3)人材の活用(日本人政府職員の戦略的な派遣、現場経験者の社会復帰のための国内環境整備)、(4)フォローアップ(連絡会議の設置、有識者との意見交換・実施状況の公表)。

(注21)2005年には外務省において国際平和協力調査員制度が創設された。

(注22)United Nations Peacekeeping Operations : UNPKOまたは単にPKOという。

(注23)現在、アフガニスタン及びイラクにおいて、復興支援に携わる文民とそれを 警護する軍人が同一のユニットとして非都市部における復興支援活動に取り組む地方復興チーム(PRT : Provincial Reconstruction Team)が米軍等の主導で展開中であり、平和構築における軍事部門と文民部門の協力の新しい在り方として注目されている。

(注24)平和の創造・定着・維持を目的として実施される活動を包括的にとらえる概念。G8グレンイーグルズ・サミットではG8行動計画「世界的な平和支援活動能力の拡大」が採択された。

(注25)NPT第8条第3項の規定により、5年に1回、NPTの運用状況について 検討する締約国会議。1995年の運用検討・延長会議では、NPTの無期限延長が決定され、2000年の運用検討会議では、核兵器国による全面的核廃絶に 係る「明確な約束」をはじめ、核軍縮に向けた現実的措置を含む「最終文書」が採択された。

(注26)日本は、締約国がNPT運用検討会議において、NPTを強化するためにとられるべき更なる措置について共通の理解に達するよう、努力を倍加させるべきと考え、2005年運用検討会議の合意文書に含まれるべき21の措置を提案した(結局合意文書は発出されず)。

(注27)IAEA及びエルバラダイ同事務局長は2005年のノーベル平和賞を受賞 した。ノーベル賞委員会は、同賞授与理由として、IAEA及び同事務局長による「原子力が軍事目的に利用されることを防止し、平和目的の原子力利用が可能 な限り安全な方法により実施されることを確保するための努力」を挙げると同時に、「軍縮のための努力が膠着(こうちゃく)状態にある中、また、核兵器が国 家やテロリストに拡散する危険が存在し、かつ原子力がますます重要な役割を担っている状況下、IAEAの業務は計り知れないほどの重要性を有する」と評価 している。

(注28)「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」決議の採択結果は次のとおり。 国連総会第一委員会(10月26日)では賛成166(英国・フランス・ロシアを含む)、反対2(米国・インド)、棄権7。国連総会(12月8日)では賛成 168(英国・フランスを含む)、反対2(米国・インド)、棄権7。

(注29)本事業は2002年6月のG8カナナスキス・サミットにおいて、大量破壊兵器及びその関連物質の拡散防止を主な目的として、首脳レベルで合意された「G8グローバル・パートナーシップ」の一環として実施されているもの。

(注30)パキスタンでは 2004年2月に「核開発の父」と呼ばれるカーン博士を含む科学者が、核関連技術の国外流出にかかわっていたことが明らかになった。これらは国際社会の平 和と安定、核不拡散体制を損なうものであるとともに、流出先の一つと見られている北朝鮮への流出は、日本の安全保障上の重大な懸念であるとの認識の下、日 本はパキスタンに対し、累次の機会に遺憾の意を伝えるとともに、本件に関して日本に情報を提供し、再発防止策等を講ずるよう強く求めてきている。

(注31)IAEAが各国と個別に締結した保障措置協定に基づき、核物質等が軍事目 的に利用されていないことを確保することを目的として、「査察」等の手段により検認活動を行うもの。NPT締約国たる非核兵器国は、NPT第3条に基づ き、IAEAとの間で保障措置協定を締結し、国内のすべての核物質について保障措置を受け入れる(包括的保障措置)ことが求められている。

(注32)IAEAとの包括的保障措置協定に追加してIAEAとの間で締結する議定書。この締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲や「補完的アクセス」による検認対象場所が拡大されるなど、IAEAの権限が強化される。2005年12月現在、71か国が締結。

(注33)従来の保障措置協定(包括的保障措置協定)に基づく保障措置と追加議定書 に基づく保障措置との合理的かつ有機的な統合を図る概念。具体的には、追加議定書の実施を通じ、「未申告の原子力活動及び核物質の不存在」の結論が IAEAより得られた国を対象に、従来型の保障措置に基づく通常査察を減少させることなどにより保障措置を効率化するもの。この「結論」が出された国はこ れまで21か国であり、そのうち日本、オーストラリア、ハンガリー、インドネシア等について統合保障措置が適用されている(2005年12月現在)。

(注34)核兵器開発に使用され得る資機材・技術の輸出管理を通じて核兵器の拡散を 阻止することを目的とする国際輸出管理レジーム。原子力関連品目(専用品)・技術の規制指針であるロンドン・ガイドライン・パート1と、原子力汎用品・技 術の規制指針であるロンドン・ガイドライン・パート2が存在する。2005年12月現在、45か国が参加。

(注35)生物・化学兵器の開発・製造に使用し得る関連汎用品及び技術の輸出管理を通じて、生物・化学兵器の拡散を防止することを目的とする国際輸出管理レジーム。2005年12月現在、39か国が参加。

(注36)大量破壊兵器の運搬手段となるミサイル及びその開発に寄与し得る関連汎用品・技術の輸出を規制することを目的とする国際輸出管理レジーム。2005年12月現在、34か国が参加。

(注37)西側諸国による共産圏諸国に対する戦略物質の輸出規制を目的とする対共産 圏輸出統制委員会(COCOM : Coordinating Committee for Multilateral Strategic Export Controls)が発展解消し、その後継として設立された、(1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の過度な蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与し、(2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリストグループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止すること―を目的とする国際輸出管理レジーム。2005年12月現在、40か国が参加。

(注38)弾道ミサイル不拡散のための初めての国際的ルールであり、弾道ミサイルの拡散を防止・抑制する上で尊重されるべき原則とそのために必要な措置を示す政治的文書(法的拘束力を伴う国際約束ではない)。主な内容は、(1)大量破壊兵器を運搬可能な弾道ミサイルの拡散防止・抑制、(2)開発・実験・配備の抑制、(3)大量破壊兵器開発懸念国の弾道ミサイル計画について貢献・支持・支援しないこと、(4)信頼醸成措置の実施―などである。2005年12月現在、123か国が参加。

(注39)大量破壊兵器等関連物資の拡散を阻止するために、国際法・各国国内法の枠内で参加国が共同してとり得る措置を検討・実践する取組。2005年12月現在、60か国以上が、活動の基本原則を定めた「阻止原則宣言」を支持し、実質的にPSIの活動に参加・協力している。

(注40)ASEAN10か国、日本、中国、韓国、米国、オーストラリアの局長級の不拡散政策担当者が一堂に会し、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題について議論を行うもの。

(注41)現行の核不拡散体制においては、同体制を隠れみのとして、核兵器の原料と なる核物質を生産し得る機微な濃縮・再処理技術を保有することは違法ではなく、不拡散体制からの離脱を決定すれば短期間のうちに核兵器用の核物質を生産す ることができるため、核不拡散体制の「抜け穴」を防ぐ必要があるとの問題意識から、エルバラダイIAEA事務局長が、2003年10月、新たなアプローチ として機微な濃縮・再処理技術・施設を多国間の管理に置くこと等を提唱した。

(注42)1997年4月発効。2005年12月末現在の締約国数は175か国。

(注43)化学兵器禁止機関(OPCW)が、締約国によるCWC遵守を検証するために査察団を派遣するなどの活動を行っている。

(注44)1975年3月発効。2005年12月末現在の締約国数は155か国。生物兵器の開発、生産、貯蔵、取得及び保有を包括的に禁止するとともに、保有する生物兵器の廃棄義務を規定する。

(注45)2001年に検証措置を導入する試みが中断し、2002年の運用検討会議 再開会合において、締約国は条約の強化に関する5分野(国内実施、バイオセキュリティー、危機対処、感染症サーベイランス、科学者の行動規範)について協 議し、締約国間の共通理解と実効的措置を促進していくことが決定され、条約の強化に関する協議が継続されている。

(注46)対人地雷の使用、生産等を禁止し貯蔵地雷の廃棄、埋設地雷の除去を義務付ける条約で、1999年3月に発効した。2006年1月現在の締約国数は、日本を含め148か国。