第3章 分野別に見た外交


(1)国際社会の取組の進展

 2005年を通じ、国際社会はこれまでに達成された成果を基礎に、多国間及び地域的なレベルでの協力を推進し、国際テロ対策を一層強化してきた。

 G8では7月7日、英国・グレンイーグルズでの主要国首脳会議(G8サミット)開催期間中、ロンドンで地下鉄等爆弾テロ事件が発生したことを受け、「G8及びブラジル、中国、インド、メキシコ並びに南アフリカの首脳並びに参加した国際機関の長による声明」を同日発表し、テロとの闘いに対する国際社会の結束と決意を示した。また、テロリストの活動阻止、新たな世代のテロリスト出現の予防、テロ攻撃からの共同体の防護、テロ攻撃による被害の最小化、テロの脅威と個人の権利、国際的な能力の構築、国際的なパートナーシップの強化等を内容とする「G8テロ対策声明」を採択した。

 国連では4月、1997年から交渉が続けられてきた放射性物質や核爆発装置等を使用したテロを予防するための核テロリズム防止条約が採択され、テロ防止の法的枠組みの整備が進展した。さらに、9月には、国連安保理首脳会合でテロの扇動行為の禁止等を促した安保理決議1624が採択された(注8)。また、安保理決議1535によって設置が決まったテロ対策委員会事務局(CTED:Counter‐Terrorism Committee Executive Directorate)の活動体制が整い、米国同時多発テロ直後に採択された安保理決議1373の履行のための体制が一層強化された(注9)

 そのほか、テロ資金対策分野では金融活動作業部会(FATF)(注10)が、テロ対処能力向上支援に関してはテロ対策行動グループ(CTAG)(注11)が活動を展開するなど、様々な分野でテロを予防・根絶するための多国間協力が進められている。9月にはインドネシア・ジャカルタで、国際海事機関(IMO)が中心となり、マラッカ・シンガポール海峡の安全問題に焦点を当てた国際会議が初めて開催され、沿岸国や主要な利用国が参加するなど、海上テロ対策を含む同海峡の安全確保に関する国際協力が進展した。

 地域レベルでは、APECのテロ対策タスクフォース(CTTF)における検討を経て、11月のAPEC首脳宣言(釜山宣言)で、テロ対策に関する具体的な取組を今後も進めていくことが確認された(注12)。また、ASEAN地域フォーラム(ARF)でも、アジア太平洋地域におけるテロ防止のための協力及び諸条約の締結促進に向けた進展が見られた(注13)




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