第3章 分野別に見た外交


(4)在日米軍の駐留に関する諸問題

 日米安保体制の円滑で効果的な運用のためには、在日米軍の活動が施設・区域周辺の住民に与える負担を軽減し、米軍の駐留に関する住民の理解と支持を得ることが重要である。

 特に、在日米軍施設・区域の約75%が存在する沖縄県の県民の負担を軽減することが重要であることについては、日米首脳会談、外相会談など累次の機会に確認されている。政府は、1996年12月にとりまとめた沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告(注3)の着実な実施に取り組んできたが、さらに在日米軍の兵力態勢の再編を通じて、普天間飛行場の早期移設・返還をはじめ、引き続き沖縄の負担軽減に努めていく考えである。

 施設・区域周辺の住民の負担を軽減するために政府が取り組んでいる日米地位協定の運用改善についても、国民の目に見える形で一つひとつ成果を上げていくことが重要であるとの考えから、具体的な取組を進めてきている。日米地位協定の下での刑事裁判手続きについて、2003年6月以降行われてきた日米交渉の結論として、2004年4月、日米間の捜査協力の強化等に関する日米合同委員会合意を作成し、一定の場合には米軍の代表者が日本側当局による被疑者の取調べに同席することが認められることになった(注4)。2006年1月に横須賀で発生した米軍人による日本人女性殺害事件では、被疑者の身柄が極めて迅速に日本側に引き渡されたが、この事案で2004年4月の合同委員会合意が初めて適用された。また、2004年8月に沖縄県宜野湾市で発生した米軍ヘリ墜落事故を受け、日米間で協議した結果、4月、日米合同委員会で「日本国内における合衆国軍隊の使用する施設・区域外での合衆国軍用航空機事故に関するガイドライン」(注5)が承認された。在日米軍施設・区域に関係する環境問題については、2003年8月、2004年4月、2005年7月の時点で、使用済みとなっていたポリ塩化ビフェニル(PCB)含有物質すべてが米国に向けて搬出された。

 SACO案件以外の在日米軍施設・区域についても、整理・返還に向けた取組は着実に行われている。2003年2月以降、日米間で協議してきた神奈川県内の在日米軍施設・区域の整理等に関し、2004年9月、横浜市内の6施設・区域の返還に向けた具体的な道筋について、「池子住宅地区及び海軍補助施設」(横浜市域)における住宅等の建設とあわせ、両国間で一致し、2005年10月、小柴貯油施設の陸上部分全域・制限水域の一部の返還予定につき日米合同委員会で合意された。




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